食べものを食べて満腹になることはだれでも経験することですが、おなかがはる(腹部膨満感)というのは、満腹感と異なり、少ししか食べてないのにおなかがはって食べられない、あるいは空腹感を感じることがなく、おなかがはった感じが続くという状態です。
おなかがはる(腹部膨満感)とは(イラスト1)
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食べものを食べて満腹になることはだれでも経験することですが、おなかがはる(腹部膨満感)というのは、満腹感と異なり、少ししか食べてないのにおなかがはって食べられない、あるいは空腹感を感じることがなく、おなかがはった感じが続くという状態です。
原因は消化器機能の変調や、心理的な要因で、実際におなかの周り(腹囲)を測っても大きくなっているわけではありません。腹部膨満感を訴えるほとんどのケースは検査しても異常がなく、胃の運動機能の低下が原因と考えられています。
おなかが鳴る(腹鳴)とは(イラスト2)
(イラスト2)
おなかの中で音がするのは、のみ込んだ空気と、消化液と食べ物の混ざった液体とが、腸の運動によって撹拌(かくはん)されるためです。つまり、腸にたくさんの空気があって、しかも腸が活発に動いているときに起こるのです。
水の入ったボトルを例にあげると、水がいっぱいに入ったボトルは振っても音がしませんが、水と空気が半々に入ったボトルは振ると音がします。このこととおなかが鳴ることとは同じ原理なのです。
消化管はどんな運動をしているのか?
1)食事をしたときの消化管運動
(イラスト3)
食事をすると消化器は規則的な収縮運動をします。食べ物が入ってくると胃の上半分(胃底部、胃体部の上部)は弛緩して、入ってきた食べ物を貯える働きをします。それに続き、胃体部中程から幽門に向かって、1分間に3回の割合でぜんどう収縮運動が起こります。(イラスト3)
この収縮は幽門に近づくにしたがって強くなり、胃液と混ざり合った食べ物をこねまわし、どろどろにします。そして直径2~3cmの大きさの幽門を通れるほどに小さくなると、十二指腸に送り出されます。このぜんどう運動は胃の中がからっぽになるまで(ふつうの量の食事の場合、2~3時間くらい)続きます。
2)空腹時の消化管運動
空腹時に胃や十二指腸、小腸は強い収縮運動期と休止期とを繰り返しています。強い収縮運動は胃から始まり、十二指腸、小腸へと伝わります。この収縮運動が10~30分間続いたあとに、収縮をしない休止期に入ります。この繰り返しが90~120分間隔で次の食事がくるまで続きます。この運動は消化管の掃除とも考えられています。腹鳴はこうした空腹期運動の時に、おなかにたまっていた空気と腸の内容物が撹拌されて起こります。
腹部膨満感がある人の中には、夜間には空腹期の強い収縮運動が起こっていても、日中は起こらない人がいます。いつも胃の中に食べ物が残っているために起こらない場合もありますが、疲労やストレスによって自律神経が正常に働かないことが原因である場合もあります。
腹部膨満感と腹鳴の原因
1)消化管運動の低下
腹部膨満感は消化管運動機能の低下と関連の深い症状の1つです。胃の症状があるのに、内視鏡やその他の検査で異常がないものを機能性胃腸症といい、胃の運動機能低下が高頻度にみられます。
2)呑気症(どんきしょう)
食事をするときに空気をいっしょにのみ込んでしまい、胃や腸に空気がたまっておなかが鳴ったり、あるいははったりすることを「呑気症」といい、腹鳴を訴える人に多くみられます。
原因として多いのは早食いや汁物などをすすることです。その他には炭酸飲料の炭酸ガス、そしてガムをよくかむといったことがあげられます。また不安や心配事があると無意識のうちに空気をのみ込んでいることもあります。
腹部膨満感の対策と治療
1)呑気症を避けるには
空気をのみ込む食べ方、早食い、すする食べ方をしないようにしましょう。また不安や心配事があると無意識のうちに空気をのみ込んでいつ場合があるので、不安、心配事への対処も大切です。
2)腹部膨満感の薬物療法
消化管運動を活発にする消化管運動機能賦活薬を使います。また呑気症の原因にもなる不安感への対処として抗不安薬の使用もあげられます。上手に使うと改善が期待できます。
3)疲労や不安などストレスは上手に解消しましょう
疲労や不安、イライラといったストレスは、消化管の運動機能を低下させるといった直接的な影響だけでなく、食生活をかえりみる余裕を奪い、規則的な食事が取れなくなることにもつながります。また、精神的な不安も腹部膨満感の原因となることがあります。さらに腹部膨満感といった症状自体がストレスになって、ますます症状が悪化するといった悪循環が引き起こされることも考えられます。
まず、ストレスに対処するため、生活を見直してみましょう。規則正しく、バランスのとれた食事をし、十分に睡眠をとることが大切です。またストレスをためないよう、上手に気分転換をはかるようにしましょう。たとえば、安らぎが得られ、満足のできる趣味をもつことも良いかもしれません。
腹鳴の対策
腹鳴は空腹時の消化管の収縮運動によって起こるもので、心配することではありませんが、おなかが鳴るのはいやだという人は、食事の時に空気をのみ込まないように気をつけましょう。また炭酸飲料やガムは予想以上に空気をのみ込みますので避けましょう。そして不安や心配事の解決をはかることも大切です。
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