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よく見られる大人の病気・症状

睡眠の障害(不眠症)

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睡眠とは

私たちの生活が満ち足りた変化に富んだものになるにつれて、睡眠はややもすると生活に無駄なものと軽視されるようになってきました。睡眠の時間を削っても仕事をしたり、趣味の時間に費やしたりと、いつの間にか健康な生活の基本的な要素というよりも厄介者扱いをされるようになってきました。私たち誰もが睡眠をとりますが、睡眠が必要な真の目的はまだ分かっていません。一方、経験的に健康な日常生活を送るためには、睡眠が不可欠であることも明らかです。

私たちの中には、ショートスリーパーと呼ばれる一日の睡眠時間が5時間以下でも何ら日常生活に支障の出ない幸運な人たちもいます。しかしふつうは平均8時間前後の睡眠時間が必要と考えられています。必要な睡眠時間とは、日中のいかなる生活状態、たとえばテレビを見ているときも、本を読んでいるときも、また会議室で長時間座っていても、眠気をあまり感じないための時間を指します。

夜になると眠くなり、朝になると目覚めるという一見当たり前のリズムはどうして繰り返されるのでしょうか?第一は睡眠が満たされれば日中に快適な気分で過ごすことができるという身体の自然な要求−これを恒常性(ホメオスターシス)の維持−と考えることができます。第二は体内時計または日周期リズムと関係があります。私たちの体内時計は脳の一部でコントロールされていますが、このコントロールは光と関係があります。すなわち暗くなると眠くなり、明るくなると目覚めます。日周期リズムは決まった時刻に変化するためにある決まった時刻に眠くなります。日周期リズムが狂ってくると体調も変化してきます。その良い例が時差ぼけでしょう。

ほとんどの人は人生の約1/3を睡眠に費やしています。起きているときには脳は活発に働き、睡眠中は休んでいると考えられがちですが、実際には睡眠中も脳の一部は活発に働いています。睡眠という行為は脳の奥深くに位置している大脳基底核や視床、視床下部といわれる部分の活動によって起こります。これに対して脳の外側に位置する部分は大脳皮質といわれ、手足などの運動機能や知覚、視覚、または記憶・知能など高等な機能に関係しています。睡眠中は大脳皮質の働きは休んでいますが、睡眠に関係している脳の奥深い部分はさまざまに活動をしています。こうした脳の活動の様子は脳波などによって記録することができます。

ノンレム睡眠とレム睡眠

私たちの正常な睡眠は2つの部分から成り立っています。一つはノンレム睡眠(非迅速眼球運動睡眠:睡眠中にゆっくりとした眼球の動きを示す睡眠)であり、もう一つはレム睡眠(迅速眼球運動睡眠:睡眠中に活発な眼球の動きを示す睡眠)です。

睡眠に入っていくにつれて眼球はゆっくりとした動きを示すようになります。これがノンレム睡眠です。初めはうたた寝程度の深さの眠りもだんだん深くなっていき、脳波も睡眠に特徴的なパターンを示すようになります。ノンレム睡眠はうたた寝やうとうとする程度からだんだん深くなり、最後は熟睡状態となっていきます。このとき無理矢理起こされたとしたら、この睡眠中のことについてはあまり記憶には残っていないことでしょう。夢を見るということは、もう一つの睡眠状態であるレム睡眠中に起こります。ほとんどの夢はレム睡眠中に見ているのです。レム睡眠中は眼球運動は活発で、寝ているにもかかわらず脳波は起きているときと似たパターンを示します。

レム睡眠では、寝ていても脳は起きているのと同様に活動しているといえます。しかし手足の筋肉は動かすことはできません。したがって走って逃げている夢を見たとしても、レム睡眠中は手足は麻痺状態なので、手足をばたばたと動かすことはありません。夢を見ている最中かあまり時間がたっていないときに目覚めると、夢をある程度覚えていますが、そのまま眠り続けると忘れてしまいます。

睡眠時間の約75%はノンレム睡眠で、残りの約25%がレム睡眠であるといわれています。ノンレム睡眠からレム睡眠が順次起こるのではなく、これらの睡眠が寝ている間に周期的に繰り返しています。睡眠が始まるとノンレム睡眠に入りますが、80〜100分くらいたつと短いレム睡眠に入ります。睡眠が早朝に近づくにつれて、ノンレム睡眠は短く浅くなり、レム睡眠が長くなっていきます。しばしばレム睡眠から目覚めることになり、夢をみていると目覚めてからも記憶に残りやすくなります。  

睡眠リズムは夜間だけでなく、昼間にもあります。これは私たちの体内時計または日周期リズムに関係があり、昼食後眠気を感じて昼寝をとるのもこのリズムによっています。

年齢と睡眠

多くの人が年をとるにつれ、寝つきが悪い、夜何回も目覚める、朝早くに目覚めてから寝つかれない といった訴えを多く聞くようになります。加齢とともに身体の多くの部分で変化を示してきます。どこまでが正常な老化現象でどこからが異常な変化か が問題になります。

年齢とともに睡眠の質にも少しずつ正常な変化が起きてきます。高齢者ではふつうでも睡眠時間が約8割に減少してきます。そしてノンレム睡眠の浅い眠りが増加し、深い眠りの時間が減少します。このような深い睡眠の減少は実際には20歳過ぎから始まってきます。

加齢により生体時計や日周期リズムにも変化がみられるようになります。日周期リズムが早いほうにずれる結果、高齢者では夜早くに眠気が起こって床につき、7,8時間後の午前3時か4時頃に目覚める というリズムができやすくなります。リズムの変化のために夜間に目覚める回数が増え、反対に昼寝が増えてきます。高齢者が無理をして午後10時や11時まで起きていても、午前3,4時に目覚めてしまいます。つまり高齢者では睡眠時間が4,5時間で十分だという誤解を生じることになります。

このように日周期リズムの変化が睡眠リズムの変化に大きな影響を与えることが分かって頂けると思います。加齢による日周期リズムの変化の一部は老化による自然な現象といえますが、別の原因としては高齢者のライフスタイルの変化にあると考えられます。

日周期リズムは光にあたることにより強い刺激を受け、好ましい方向に修正を受けます。加齢とともに戸外で過ごす時間が減少し、室内で過ごす時間が多くなります。日周期リズムの修正のためには、一日約2時間の明るい光が必要であると指摘されています。あまり光に当たらないのは睡眠に対してはマイナスに働きます。 

また高齢者でよくみられる病気、たとえば前立腺肥大症などによる夜間頻尿、心臓・血管の病気、糖尿病、骨の変化による痛み、肺の病気、耳鳴り・いびき、さらには医師によって処方される各種の薬 などがさまざまな程度に睡眠に影響を与えます。また年をとると周囲の騒音に対しても敏感になります。

年をとるにつれ、夜間の目覚めが多くなり不眠の訴えが増加してきます。今までに述べてきたようにこれはさまざまな病的な原因で起こってくるもので、健康な人では年をとっても不眠の訴えは起こりにくいと考えられます。
 

閉経と睡眠

閉経期を迎えると卵巣からの女性ホルモンが減少する結果、脳からの命令ホルモンも調節が乱れてきます。こうなると自律神経障害を起こすようなり、症状としてはほてり・のぼせ・発汗などのほか、血圧の変化、いらいら などが起きやすくなります。このような変化は夜間の睡眠障害を起こしやすくなります。女性ホルモンの補充療法を受けていると睡眠障害も少なくなります。

更年期障害について詳しくは、本HPの 家庭での医学−更年期障害(クリックするとリンクします)をご覧ください。

痴呆症と睡眠

痴呆症では睡眠障害が起こりやすく、その結果夜間の徘徊(うろつき回ること)や興奮状態を起こすことになり、介護者のたいへんな負担となります。そのため施設に入所を余儀なくされる場合も多くなります。痴呆の患者では深い睡眠がみられず、睡眠時間が減少し、夜間に目覚め昼間に眠る というふうに昼夜逆転が起こりやすくなります。

睡眠の障害

それではどのような場合に異常な睡眠と言えるのでしょうか?ふつう睡眠の障害は2種類に区別できます。第一は夜に睡眠をとることが困難なこと、第二は昼間に強い眠気を生じ起きていることが困難なこと の2つです。不眠症とは前者を指しています。不眠症には寝つくまでに時間がかかる場合と、いったん寝てしまっても眠りが浅くたびたび目覚めてしまう場合があります。

一時的な不眠症は、結婚や試験、仕事でのストレス・多忙、あるいは内科的な病気や精神的な病気に見舞われたり、時差ぼけ などの場合に起こりやすくなりますが、原因も自分で分かることが多く、自然に良くなったり一時的に薬を飲むことで良くなってきます。

長い間続く不眠症は、いくつかの不眠となりやすい素因、不眠のきっかけとなる要素、不眠を持続させる原因などが絡み合って起こりやすくなります。たとえば几帳面で心配性の人は、ちょっとした仕事のストレスなどで不眠症になるかもしれません。

不眠症の原因としてアメリカ全国睡眠団体では、不眠症の原因として次のようなものをあげています。

  1. 行動上の問題や悪い睡眠習慣
  2. 日周期リズムの乱れ
  3. 内科的な病気、あるいは精神的な病気、現在内服している薬の影響 など

1.の行動上の問題とは、なにかの原因でたまたま眠れなくなったときに、次の日もまた眠れないのではないかと心配になり、必死で眠ろうと努力するのですがなかなか眠れない、そして同じことを繰り返すうちに「床についても眠れないのではないか?」という一種の条件反射に陥ってしまう ことを指します。次第に夜になると眠ることに不安をおぼえ、疲れ果ててしまいます。悪い睡眠習慣とは、夜遅くまで起きていて就眠時間が不規則になったり、日中に昼寝をとりすぎたり、アルコールやカフェインを飲み過ぎたり を指します。

2.の日周期リズムの乱れは、代表的なものは時差ぼけですが、今までに述べてきたように高齢者にみられる不眠症でも原因となります。

3.の中では、不眠症のもっとも大きな原因は、うつ病をはじめとする精神疾患(4〜5割を占めると考えられます)であることを忘れてはなりません。

さて睡眠の障害の中には睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、睡眠相遅延症候群なども含まれます。夜間の睡眠障害とともに昼間に強い眠気が起こってきて、日常生活に支障を来すようになります。

よりよく睡眠をとるために

不眠症の克服は必ずしも簡単ではありませんが、ここで不眠症の予防のための適切な睡眠習慣をあげてみましょう。

  1. 床についている時間を短くする(眠いと思ったら床につく、15分くらいたっても寝付けないときには、一度床を離れて眠くなるまで待ってみる、床についてから本を読んだりしない)。
  2. 毎日同じ時間に起きる。
  3. ベッドに入ってからは時計を見ない(眠れなくても目をつむっておく)。
  4. カフェイン、アルコール、タバコをとらない(アルコールは一時的に睡眠を誘っても、その後には目がさえて眠れなくなります、カフェインは数時間体内に残るので昼食後からは避けましょう)。
  5. 日中、体をよく動かす(ただし睡眠直前の運動は避けるように)。
  6. 軽い夜食を食べる(コップ一杯の温かいミルク、バナナなど)。
  7. 睡眠の環境を整える(寝室を静かに、明るすぎないように)。
  8. 寝る前にくよくよ考えない。

最後に

睡眠に関してたいへん優れた訳本が出版されています。やや内容が専門的であると思われたために、本稿ではその訳本から簡単に紹介させていただきました。この訳本には睡眠について詳しく書かれていますので、興味をお持ちの方はぜひ一読されるようにお勧めします。

参考文献:ソニア・アンコリーイスラエル著、大畑雅洋監訳、「ぐっすり眠りたいあなたへ、睡眠障害の治療と分析」、はる書房、1999.

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