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偽痛風(ぎつうふう)

Dr.みやけ

とくにかぜなどのきっかけもなく、急にあちこちの関節の痛みを起こす高齢者をよく経験します。

血液検査でも関節リウマチや痛風の反応は異常がなく、診断に苦しむことがあります。このような病気の中に偽痛風があります。なじみの薄い病名ですが、比較的よく見られる多発性の関節痛を起こす病気です。

偽痛風とは

痛風とよく似た疾患に偽痛風というものがあります。軟骨石灰化症とも呼ばれ、偽痛風は関節液中にピロリン酸カルシウム結晶という結晶が沈殿することによって起こります。痛風では血中の尿酸が増加し(高尿酸血症)関節液内に尿酸ナトリウム結晶が生じる病気です。

ピロリン酸カルシウムの結晶ができる原因として軟骨変性が重要です。軟骨内の結晶は関節破壊により関節腔内へ脱落します。関節腔内では白血球、単球などがこの結晶をきれいに掃除しようとします。
そのときに細胞からはさまざまな化学物質が放出されて炎症はますます強くなります。痛風発作でも同様に白血球などが尿酸の結晶を掃除しようとして炎症が起こります。

偽痛風の症状

偽痛風と痛風
図1偽痛風と痛風

偽痛風の発症年令は、痛風に比し高齢者(60~80才)での発症が多いといわれます。痛みの起こりやすい部位は膝関節が最も多く、ついで手、足、股、肘関節などです。

女性にやや多いようですが男性のほうがやや多いとの意見もあります。痛風が男性に圧倒的に多くみられ、痛みの部位も足首や足の親指のつけ根に起こりやすいのと対照的です。(図1)

偽痛風の発作は数日またはそれ以上持続し、1~数箇所の関節炎が特徴です。痛風発作のように突然出現して自然に軽快しますが、痛風より痛みは軽度です。このような発作の多くは膝関節におこります。膝関節以外では、手首関節、足首関節など比較的大きな関節によく起こります。

急性発作時には関節腫脹、局所発熱、痛みがあり、関節の動きが悪くなります。腕や足の関節に慢性の痛みやこわばりが長びくこともあり、関節リウマチと混同されることもあります。

偽痛風の診断と治療

膝関節痛など多発性関節炎があり、X線で軟骨石灰化症の存在と関節腔内に針を刺し関節液を吸引してその結晶を調べることにより、正確な診断が行なわれます。偽痛風では、血液中の尿酸値は基準範囲内ですが、痛風でも発作時は尿酸値は正常のことが多くあります。

治療法はほとんどが対症療法で完治につながるような決定的な治療法はありません。炎症をコントロールすることで痛みを抑える為にステロイド剤や非ステロイド系抗炎症剤などが用いられます。

治療により急性発作を止めて、次の発作を予防することが可能ですが、関節へのダメージを防ぐことはできません。発作のないときには通常の変形性関節症のような病像をとりますが、多くの患者さんでは膝の変形と慢性的な運動痛、動作の開始時の痛みで特徴とされる変形性関節症に移行します。

多発性関節炎を起こす他の病気

多発性関節炎は偽痛風の他にも、慢性関節リウマチ、リウマチ性筋痛症、膠原病、乾癬性関節炎、サルコイド関節炎、悪性腫瘍に伴う関節炎、再発性多発軟骨炎、感染症に伴う関節炎、変形性関節症 などいろいろな病気で起こり診断困難なことも多くあります。
長期間の経過観察により診断が明らかになる場合が多いのですが、それでも診断ができないケースもあります。

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