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過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)

Dr.みやけ

ストレスで腸の変調を生じ、腹痛や下痢・便秘などの便通の異常を起こす過敏性腸症候群が若い人の間に多くなっています。

過敏性腸症候群は人口の10-20%にのぼり、女性に多くみられます。
その原因は消化器心身症と考えられ、過敏性腸症候群を「イライラ腸症候群」と言いかえることもできます。しかし腹痛や便通異常が強いと不登校や欠勤、遅刻などの誘因にもなり、こうなると生活上の支障も大きくなります。

過敏性腸症候群とは

欧米では日本より過敏性腸症候群が多くみられてきました。
最近の調査では日本人も程度に差はみられても女性の28%、男性の10%に過敏性腸症候群の訴えがあり、増加傾向にあることが分かってきました。とくに20代の女性では40%に達し、小中学生の10-20%が慢性の腹痛を訴えるといわれています。

過敏性腸症候群の診断基準は国際的に確立しています(ローマ分類)。

腹痛や腹部不快感があり、排便により軽快するか、排便回数や便の堅さの変化(下痢や便秘)を伴っている、このような症状が一年に最低3ヶ月以上くり返して起こる。

腹痛、腹部に不快感があり、かつ有症状期の最低20%以上に、次の排便異常が2項目以上ある。

  1. 排便回数の異常、
  2. 便性状の異常(便秘あるいは下痢)、
  3. 便の排出の異常(排便困難感、便意促迫あるいは残便感)、
  4. 粘液便の排出、
  5. 腹部膨満感

典型的には、突然便意とともに腹痛が起こり、便所にかけ込み粘液便、水様便を排出して治まるというようなパターンをくり返す「下痢型」、便秘となってころころとしたウサギの糞のような便を少量排出するだけで残便感や膨満感がとれない「便秘型」、この両方が交互に現れる「下痢・便秘交代型」に分けることができます。

過敏性腸症候群では
図1過敏性腸症候群では

過敏性腸症候群の原因

腸の運動は自律神経の一つ、副交感神経の働きによって調節されています。副交感神経が過剰に緊張すると、腸の運動がや分泌活動が活発になり腹痛や下痢が起こってきます。

生活が豊かになるにつれて、外で遊んだり力仕事をする機会が少なくなってきました。そして当然のことながら職場や学校、家庭内でのストレスが増えるにつれ、過敏性腸症候群は増加してきました。過敏性腸症候群は現代を代表するストレス病の一つと考えることができます。

過敏性腸症候群の治療

便秘に下剤、下痢に下痢止めといった単純な対症療法ではなかなか治りにくいのが特徴です。
悩みが深刻な反面、人に相談しにくく一人で悩んでいる場合も少なくありませんが、欠席や欠勤、不登校の原因となれば問題は深刻です。薬物治療をいろいろ試みても効果が出ないこともあり、治療に困ることがしばしばあります。

過敏性腸症候群は軽症が70%、中等症が25%、重症が5%を占めています。
治療の第一段階は暴飲暴食を避けて、一日三回の規則的な食事、十分な睡眠、軽い運動などの生活習慣の改善をしながら、薬物治療を4-8週間続ける、改善しなければ精密検査を受けながら、抗うつ薬や抗不安薬を併用する(第二段階)、さらに専門的な心理療法を試みる(第三段階)となります。
一般的には第二段階までの薬物療法が中心になります。

薬物治療としては、第一段階の治療の中心となるのが高分子重合体のポリカルボフィルカルシウム(商品名コロネル)です。胃でカルシウムを放出し、小腸や大腸で吸い取り紙のように水分を吸収してふくらみ、便の性状と大腸の働きを改善します。

この薬は食物繊維のような役割を果たし、便秘と下痢の両方に効果があり、便通感も良くなります。
腸で吸収されないために副作用も多くありません。他には消化管運動改善薬といわれる薬剤や抗不安薬、抗うつ薬が使用されますが、これらの薬剤の組み合わせが有効なことがあります。

過敏性腸症候群と思われた若者で腸腫瘍が原因であった例、若い年齢層にみられる潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患などが原因で腹痛や下痢がくり返すことがあり、過敏性腸症候群の診断にはカメラなどによる腸の検査が重要な意味を持っています。

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