みやけ内科・循環器科TOP家庭の医学(こども)おう吐

おう吐

 子どもは大人に比べてはるかにもどしやすいと言えます。胃腸の具合が少しでも悪いときや、異物やいたんだものを食べたときにもどすのは、異物を体から除去して体を守るために必要な行為とも考えられます。一方、子どもは体調の変化をうまく表現できず、おう吐が体の変化を示す重要なサインのこともあります。原因となっている病気を見逃さないように注意すべきです。また、自家中毒といわれるようにはっきりと原因が分からず、習慣的に繰り返しおう吐することもあります。

 新生児期や乳児期のおう吐は生まれつきの重大な原因でおう吐することもあり、専門の小児科医を受診されることが多いと思われます。しかし子どもが1歳を超えるようになると、おう吐のために一般の診療所を受診される機会が多くなってきます。おう吐はさまざまの原因で起こりますが、一つ一つの原因の詳しい解説は別に譲りたいと思います。これらの原因の中でもっとも多いのは、かぜが原因のウィルス性胃腸炎でしょう。四季を通して流行の時期がみられ、あっという間に広がって多数の子どもが受診されます。とくに冬は激しいおう吐と下痢のかぜが流行しやすく、冬季下痢症、嘔吐下痢症、ロタウィルス感染症などと診断されることがあります。

 おう吐の子どもをみたときに注意すべきは、以下の3つではないかと思います。
 
1)おう吐による脱水症
2)腸重積
3)髄膜炎

1)おう吐による脱水症

 子どもでは食中毒による激しい下痢症などを除くと、おう吐の方が下痢よりもはるかに脱水症を引き起こしやすい感があります。おう吐した後に、顔色が真っ青になって手足も冷たくなって怖い思いをすることがありますが、しばらくすると回復するために2、3回のおう吐では心配はありません。これはおう吐の後、自律神経反射が起こり一時的な血流障害が起こるためでしばらくするとよくなります。まだおう吐がなくても、診察室でお母さんが熱も高くないのに顔色が悪くごろごろしている と話されたときには気分が悪いのではないかと疑う必要があります。

 脱水症の診断は比較的容易です。頻回にもどすようになると子どもの顔色は青ざめて悪くなり、元気もなくなってきます。さらにおう吐が起こると、ぐったりとして動こうとしなくなります。こうなるまでに水分補給を心がけ、脱水症がある程度進むと点滴で水分を補給することが重要になります。まれに親が脱水症を放置しておいたために、子どもの目が落ち込んで顔色も土色になって動かなくなることがあります。こうなる前に何とかしておくことが大切です。

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 子どもが何回もおう吐する時の水分の摂取方法です。おう吐した直後は水分を取るのは控えて、少し時間がたって落ち着いてから水分を飲ませるようにしましょう。のどが乾いたため、水分を一気にたくさん飲むと胃がびっくりしてまたもどしてしまいます。一口二口づつゆっくり時間をかけながら、十分に飲ませましょう。途中でもどしてしまったら、また同じことを繰り返すようにします。おう吐を軽くする座薬を使用することも一つの方法ですが、おう吐は半日から一日たつと治まるのがふつうです。少しずつ水分を取りながらおう吐が止まるのを待ちましょう。比較的元気が良いと、もどした後もお腹が減って食事を欲しがります。しかしこのような時に食事を食べるとすぐにもどしてしまいます。しばらく様子をみて、食事をあげるのは水分を飲んでももどさなくなってからにしましょう。薬を飲ませるのも、水分が飲めないうちは無理です。

2)腸重積

 子どもがおう吐するときは流行などにより、かぜの胃腸炎(ウィルス性胃腸炎)と診断されることが多いと思われますが、ウィルス性胃腸炎の流行の時期でも常に腸重積を頭に入れておく必要があります。腸重積の主な症状は、腹痛、おう吐、粘血便 とされます。突然不機嫌となり、おう吐、腹痛を生じて顔色も悪くなり、ぐったりしてきます。親がおかしいと思って連れて来られるわけですから、診療所では腸重積を的確に診断すべきですがなかなか診断が難しいことがあります。おう吐や腹痛の時には医師としても簡単に「心配いらない」と判断するのは常に注意しておく必要があります。親が「おかしい」と思ったら腸重積もあり得ることを説明し、診察を受ける必要があることを話しておくことが大切と思われます。

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 腸重積を起こして少し時間がたってくると、お腹をよくみるとおへそのやや右上あたりが少しふくらんでいるのが分かることがあります。また、おへその右上あたりをおさえると痛がったり、泣き出したりすることがあります。注意するとこの部位に柔らかい抵抗(しこり)を感じることができます。腹部全体に注意を払わなければなりませんが、経験からはおへその右やや上が症状の出やすい場所と思われます。自宅でもこの部位に注意を払っていただければと思います。腸重積は早期であれば手術せずに整復できますが、診断が遅れると手術が必要になります。

 ウィルス性胃腸炎の流行時期には腸重積も起こりやすくなります。症状から腸重積が疑われたものの、診察に来られた時には自然に治っていたことがありました。様子をみましょう と帰宅させた夜中に腸重積を再発した子どもがありました。腸重積の診断はつくづく難しいと思われました。

3)髄膜炎

 髄膜炎は夏かぜのじきや流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の合併症などとしてよくみられます。髄膜炎の主な症状は、1)頭痛、2)おう吐、3)発熱 です。発熱は一般には高熱ですが、軽い熱のことも多くあります。したがって頭痛とおう吐をみたら、常に髄膜炎ではないか 疑う必要があります。

 髄膜炎の診断に重要なのは項部硬直といわれるものです。これは髄膜炎のときに起こってくる髄膜刺激症状といわれる症状の一つです。項部硬直が起こると首筋が堅くなるためで、前屈みの姿勢をとっても首が前に曲がりにくく、背中に痛みを起こしてきます。ふつうは子どもを寝かせて医師の手を後頭部にあてて持ち上げることにより、首筋の堅さを調べます。しかしこの方法では軽い項部硬直を見逃す恐れがあります。

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 経験からは、子どもを診察台に足をのばして座らせて自分で首を前に曲げさせると項部硬直を調べやすいといえます。項部硬直があるとがんばって首を前屈させても、曲げることが制限されており背中に痛みが走ります。簡単にはいすの座ったままで首を曲げるようにさせて調べることもできます。要は、自分の力だけで首を前屈させてみることです。

 しかし軽い項部硬直と思える所見は、髄膜炎がなくてもおう吐や脱水症があると似た所見が出ることがあります。このようなときには水分補給の後、一晩様子をみると軽快してきます。反対に髄膜炎でも項部硬直がはっきりしないことがあります。髄膜炎の症状が高熱が持続するだけで、おう吐や頭痛が軽い場合もあります。ほかに原因がみられない子どもの高熱で、いかにも重篤感が漂っているときにはいろいろな病気の他、髄膜炎も考慮すべきです。

 ウィルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)の疑いのある時は、入院して治療を受ける必要がありますが、体力のある小学校の高学年の子どもでは、自宅で様子をみることもあります。反対に細菌性髄膜炎は重症化するため、入院して抗生物質の点滴が必要です。ウィルス性髄膜炎でもヘルペスウィルスなどでは脳炎を併発し重症化します。一般には脳炎では、高熱、意識障害、けいれんなどが主な症状となり、髄膜炎とは異なります。

ご注意)
 おう吐を症状とする病気は他にも、脳腫瘍や急性虫垂炎などいろいろありますが、ここではおう吐の原因として頻度の多い腸重積と髄膜炎と説明にとどめさせていただきました。

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