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Ⅴ、若い女性と不整脈

Dr.みやけ

ふだんは意識しない心臓の鼓動が気になり始めたら、どんな原因であっても不整脈と呼びます。

不整脈にはいろいろありますが、そのほとんどはあまり心配ないものです。
若い女性で不整脈を感じる原因としては、

  • 1高度の貧血
  • 2管迷走神経反射、言いかえると起立時の低血圧や脳貧血
  • 3バセドウ病
  • 4ストレスや疲れ、睡眠不足が続く時など緊張状態
  • 5パニック障害
  • 6肩こりが強いときに感じる圧迫感・息切れ・動悸
  • 7遺伝的な素因で起こるブルガダ症候群、早期再分極症候群(J波症候群)、QT延長症候群

などが主なものです。起立時に起こる一時的な低血圧でも動悸を感じます。

一方、不整脈と自覚症状との間には次のような関係があります。

不整脈と自覚症状
図1不整脈と自覚症状

脈がとぶ(期外収縮とブロック)

感じ方:

脈をとると時々脈がとびます。ドキンと感じたり、時にはドーンと強く響くことがあります。そんな時は倒れないかと不安感が強くなります。

心電図:上室性期外収縮
(心電図:上室性期外収縮)

心電図:心室性期外収縮
(心電図:心室性期外収縮)

脈がとぶ原因疾患:

期外収縮(上室性と心室性)とブロック(洞房ブロック、ブロックされた上室性期外収縮など)

脈がとぶ原因となる状態:

この不整脈は、2で起こることがありますが、それよりも特に原因なく、思いがけず起こることが多いようです。昼間よりも、静かにしている夜間に起こることが多い傾向にあります。

脈が速くなる(頻脈性不整脈)

感じ方:

ドッドッドと脈が早く大きく打つ(洞性頻脈)、脈をとろうとしても不規則で、しかも強弱があり、脈を感じにくい(心房細動)、脈が極めて速く苦しくてたまらない、すぐに病院に行くか救急車を呼ばずおれない(発作性上室性頻拍症)

脈が速くなる原因疾患:

洞性頻脈、心房細動、発作性上室性頻拍症

心電図:洞性頻脈
(心電図:洞性頻脈)

脈が速くなる原因となる状態:

洞性頻脈は7を除く1から6の場合にしばしば起こります。洞性頻脈はドッドッドと脈が120/分くらいに早く大きくうつため、身体に響く感じがします。走った後や緊張したときに心臓の鼓動が強くなる、それが洞性頻脈ですが心電図では正常と診断されます。医師からも心配ないと説明を受けることがほとんどです。

心電図:心房細動
(心電図:心房細動)

心房細動は中高年に多い不整脈で、大人の50~70人に一人はあると言われる頻度の多い不整脈です、ふつう心臓は秒針のように規則正しくうちますが、心房細動ではバラバラにうつようになります。常に心房細動のこともあれば、発作的に起こることもあります。心房細動は心臓にできた血栓が脳に飛んで、脳塞栓を起こすことがあります。予防のために抗凝固薬が必要な場合も少なくありません。若い人では心房細動はまれですが、3バセドウ病では起こることがあります。

心電図:発作性上室性頻拍症
(心電図:発作性上室性頻拍症)

発作性上室性頻拍症は若い人でもとくに誘因なく起こることがあります。3バセドウ病でも起こりやすくなりますが、ふつうは心臓の刺激伝導系の異常で起こるため、一度起こると繰り返し起こすことがあります。WPW症候群という心臓の刺激伝導系の異常があると発作性上室性頻拍症や心房細動が起こりやすくなります。発作性上室性頻拍症が起こるとがまんすることは困難で、すぐに病院に行くか救急車を呼ぶことになります。

以上からも分かるように、一般の若い人が感じる動悸のほとんどが洞性頻脈であることが分かります。ついで期外収縮と洞房ブロック、ブロックされた上室性期外収縮の順です。

脈が遅くなる(徐脈性不整脈)、心室性頻拍、心室細動

感じ方:

脈が遅くなる徐脈性不整脈、心室頻拍、心室細動では心臓からの血液循環が悪くなるため、脳の血流障害が原因で起こるめまいや失神発作が起こりやすくなります。また脈の遅い状態が長期間続くと心不全状態になります。心不全では動悸や息切れが起こり、浮腫(むくみ)が起こります。

イラスト:心不全
(イラスト:心不全)

徐脈性不整脈の中で、洞不全症候群の一部や高度ブロックでは心臓の中を通る電気の流れがストップするため、心拍数が極端に少なくなります。その結果、脳の血流が傷害されることになり、フーとするめまい感や失神発作を起こすようになります。

心室頻拍や心室細動は頻脈性不整脈に含まれますが、心臓が震えるように細かく動くだけなので、血液を全身に送り出すという心臓の動きを起こすことができなくなります。その結果、心臓はほとんど止まったような状態になり意識消失を起こします。死に直結する極めて危険な不整脈です。

脈が遅くなる原因疾患:

洞不全症候群や高度房室ブロックなどの徐脈性不整脈、心室頻拍、心室細動

(心電図:心室頻拍と心室細動)
(心電図:心室頻拍と心室細動)

脈が遅くなる原因となる状態:

7ブルガダ症候群、早期再分極症候群(J波症候群)、QT延長症候群などの心電図異常は心室頻拍や心室細動を起こすことがあり、突然死の原因となることが知られています。

若い人でこのような致死的な不整脈が起こるのは、生まれた時からの体質、遺伝的素因が背景にある場合がほとんどです。少しでも早く発見するために小学校から心電図検査・内科健診が行われます。しかし、このような健診を行っていても異常や素因が分かるのはごく限られた場合のみです。

もっとも重要なのは、40歳くらいまでに突然に亡くなられた近親者がいるかどうか、また日常生活でとくに原因がなくフーとしためまいや失神発作、動悸の発作などを起こしたことがあるかどうか?これらに注意することのように思います。

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