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心房細動について

7.ワーファリンによる血栓塞栓症の予防

ワーファリンの効果

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(イラスト1)

非弁膜症性心房細動(NVAF)のワーファリンによる血栓塞栓症の効果を検討した欧米の研究によると、ワーファリンを投与していない場合の血栓塞栓症の発症率は年平均4.5%であったのに対して、ワーファリンを投与した場合には年平均1.4%と約70%が予防できました。ワーファリンを投与すると皮膚の内出血のような小出血の頻度は多くみられましたが、脳出血や入院、輸血、手術を要するような大出血の頻度には差はみられませんでした。

日本循環器学会のガイドライン(イラスト1)によるワーファリン投与におけるPT-INR(*1)の目標値は、70歳未満では2.0〜3.0、70歳以上では1.6〜2.6を目標としています。

(*1)PT-INRについて・・PT(プロトロンビン時間)は出血傾向の予備検査として、また肝疾患の診断や抗凝固療法のコントロールに用いられます。ワーファリンを内服すると血液が固まり(凝固)にくくなります。この凝固のしにくさを国際的に統一された基準で表現する検査がPT-INRで、正常を1と規定します。正常に比べて何倍凝固しにくくなっているかを表現する検査法がPT-INRです。

一方、NVAFにおける抗血小板薬アスピリン(*2)の効果ですが、欧米の研究では血栓塞栓症の発症は約20%少なくなったと報告されています。日本の研究ではアスピリンの予防効果は確認できませんでした。日本のガイドラインではアスピリンではなく、塩酸チクロピジン(商品名:パナルジン)200mgが推奨されていますが、現在どの程度の有効性があるかは確認されていません。

(*2)抗血小板薬と抗凝固薬について・・私たちは傷などで出血しても自然に止血します。止血には大きく分けると、(1)血小板による止血と(2)血液中の凝固因子と呼ばれるタンパク質による止血の二つの機序が関与しています。

出血するとまず血小板が活性化されて血小板血栓を作ります(イラスト2)。血小板はちょうどおにぎりを作るときの米粒にたとえることができます。止血の第一段階として重要なステップは、米粒(血小板)を固めておにぎりを作ることです(血小板血栓)。しかししばらくするとおにぎりは乾燥して米粒がばらばらとほぐれてしまいます。血小板血栓は強固なものではないのです。(イラスト3、4)

止血の第二段階は、おにぎりにのりを巻いておにぎりが崩れないように強固なものにするステップです。のりに相当するものが血液中の凝固因子と呼ばれるタンパク質です。血小板血栓を網のように包み込んで血栓を強固なものに作り上げます。(イラスト5)

脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化が原因の血栓では血小板血栓が主役を演じることが分かっているために、血栓予防薬としてアスピリンやパナルジン、プレタール、プラビックス、ペルサンチンなどの抗血小板薬を選択します。しかし、心房細動や心臓由来の血栓塞栓症は、凝固因子が活性化されて血栓が形成されることが分かっているため予防薬として抗凝固薬であるワーファリンを使用します。

外来でのワーファリン治療と注意点

ふつう2〜3錠(mg)/日で投与を開始し、1〜2週後にPT-INRを測定します。目標値に達していなければ、半錠(0.5mg)ずつ増量し、1〜2週後に再検査を行います。

ワーファリン投与開始前には、ワーファリン療法の利益と不利益について十分に説明することが大切です。ワーファリンを内服しても、ふつう程度の切り傷による出血の時に止血に困ることはありませんが、打ち身などによる内出血がひどくなることがしばしばあります。打ち身や手をはさんだりしないようにする注意がたいせつですが、うっかり打撲したときには冷やしながらふだんよりも長く十分に圧迫しておく必要があります。

高齢者では、PT-INR1.5程度の比較的少量でも、加齢により血管が弱くなっているために皮下出血がくり返してみられることがあります。70歳以上では、PT-INR2.2を超えると重篤な出血性合併症がみられ始め、2.6を超えると急激に増加します。高齢者では夏季に食欲不振になりやすく、同一の量でも効果が増強することがあるので注意を要します。

ワーファリンを突然休薬するとリバウンド現象として一時的に凝固系が亢進し、血栓塞栓症のリスクが高まることが示唆されています。

わが国では抜歯前にワーファリン休薬を指示する医師が少なくありません。欧米の研究ではPT-INR2.0〜4.0であれば重篤な出血性合併症を伴わずに抜歯できることが示されています。日本人の研究結果はまだそろっていませんが、歯科医師との相談の上、ワーファリンを継続しながら抜歯を行うことが勧められます。しかし、抜歯を行う歯科医師の立場から考えると、ワーファリン投与下での抜歯には慎重にならざるを得ないのも事実です。日本ではほとんどの場合、ワーファリンを中止して抜歯を行っているのが現実です。

内視鏡検査の時には、内視鏡による切除を行う場合にはワーファリンや抗血小板薬を2週間休薬することが望ましいとされています。

 

ワーファリン治療の注意点

自覚症状を伴う心房細動の発作がないとの理由からワーファリンを中止した例に、脳梗塞発症が多かったことが報告されています。また自覚症状のある発作性心房細動でも、しばしば自覚症状を伴わない心房細動が起こっていることが知られており、心房細動発作が薬物治療によってあるいは自然経過で消失したとしても、安易に抗血栓療法を中止するべきではありません。

 

ワーファリンと食事

ワーファリンの効果はビタミンKによって弱められます。納豆、クロレラはワーファリンの効果を弱めるので食べないでください。緑色野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど)にはビタミンKが多く含まれますが、一度にたくさん食べるのではなければワーファリンの効果にはそれほど影響はありません。

 

ワーファリンと他の薬の相互作用

すべての薬がワーファリンと相互作用を有するか検証されているわけではありません。ワーファリン内服中に、新たに他の薬を併用したり、中止する場合にはPT-INRの変動に注意する必要があります。

ワーファリンの作用を増強する薬としては、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、精神神経用剤、不整脈用剤、利尿剤、高脂血症用剤、消化性潰瘍剤、ホルモン剤、痛風治療剤、酵素製剤、糖尿病用剤、抗生物質など多種多様です。

一方、作用を弱める薬として代表的な物はビタミンK含有剤として、骨粗鬆症の治療薬グラケーがあります。グラケーを飲んでいるときは主治医にそのことを告げてください。

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  4. 慢性心房細動と一過性心房細動
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