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血液検査で分かること

血液検査発熱時の血液検査

Dr.みやけ

発熱時に行われる基本的な検査について解説していきます。

風邪などの一般的な原因で生じた発熱は3,4日で下がってくるのが普通です。
しかしなかには発熱が長期間持続することもあります。このような場合には風邪がこじれた可能性や、風邪以外の原因で発熱を生じている可能性も考慮され、血液検査、尿検査、胸部レントゲンなどが必要になってきます。ここでは発熱の際に行われる検査の流れについて述べていきます。
発熱時の行われる基本的な検査はつぎのようなものです。

1)尿検査

尿検査はもっともふつうに行われる検査です。
尿検査は試験紙で行われる一般検査と顕微鏡で行われる尿沈さの検査に分けられます。一般検査では蛋白、糖、、ビリルビン、ウロビリノーゲン、ケトン体、潜血、白血球、亜硝酸塩などを検出することができます。

尿蛋白(にょうたんぱく)

尿蛋白はいろいろな腎臓病(急性腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群など)や尿路感染症(腎盂炎など)で陽性になりますが、高熱が持続したり、過労などでも陽性となります。
また膠原病などの全身疾患の腎病変として陽性になることもあり、さまざまの病気に発見に役立つことがあります。学童では病気と関係なく尿蛋白陽性となることがあります。良性蛋白尿では日中の検査では陽性となりますが、早朝起床時の検査では陰性となることから判断できます。

尿ビリルビン・ウロビリノーゲン

尿ビリルビンやウロビリノーゲンは肝臓病(急性肝炎など)や胆道疾患(胆石の発作、急性胆嚢炎など)、膵臓病などで陽性となります。
ウロビリノーゲンは正常でも認められますが、これらの疾患の他、発熱時や運動後にも増加してくることがあります。急性肝炎では、発症初期は発熱と風邪症状のことが多く、診断を誤ることがあります。しばらくして黄だんが出るようになりますが、早期から尿ビリルビンやウロビリノーゲンは陽性となり、肝炎を疑う手がかりになります。

尿ケトン

尿ケトンは糖尿病の悪化時に検出されますが、食事が取れないときやおう吐、下痢のときにも陽性となります。
発熱のため食事が取れなくなったりやおう吐・下痢による脱水症では陽性となりやすくなります。

尿潜血・白血球・亜硝酸塩

尿潜血、白血球、亜硝酸塩は膀胱炎や急性腎盂炎などで陽性となったり、増加してきます。中年以降の女性ではふつうの健康なときにも潜血や白血球が陽性となることがあります。

しかし排尿時痛や排尿時の不快感とともに潜血反応が認められれば、急性膀胱炎と診断されます。膀胱炎は発熱を伴うことはありませんが、急性腎盂炎はふるえと高熱を生じてきます。
とくに20歳から40歳代の女性で風邪症状がなく、高熱を生じてきたときには急性腎盂炎を疑う必要があります。腎盂炎では尿中に白血球が増加してきます。亜硝酸塩は尿中に細菌が増加してくると陽性となります。試験紙で潜血は敏感に検出できますが、白血球の検出には必ずしも敏感ではありません。
膀胱炎や腎盂炎が疑われるときには、尿を遠心後に顕微鏡で観察して赤血球や白血球の増加の程度をみることが大切です(尿沈さといいます)。

家庭での医学-大人-膀胱炎と腎盂炎 もご覧ください。

2)末梢血液検査

発熱時に重要なのは白血球数と白血球分類に関する検査です。
発熱時に白血球数の増加が認められれば、まず第一に細菌感染症が疑われます。風邪ははじめはウィルス感染で起こることが多く、ウィルス感染症ではふつうは白血球数は増加しません。しかし風邪がこじれるにつれて細菌感染症を併発してくると白血球数が増加してきます。
また外傷などでも細菌感染を起こして、化膿してくると白血球数の増加が起こってきます。発熱・腹痛とともに白血球数が増加すれば、急性虫垂炎や急性胆嚢炎、急性膵炎、腸閉塞など重症な病気も考慮しながら慎重に診断を進める必要があります。
一般には白血球数の増加が著しいほど炎症が強いことを意味し、病気としては重症であることを意味します。

白血病などの血液疾患、膠原病などでも発熱とともに白血球数が増加してきますが、これらの病気では次に述べる白血球分類が大切です。 (表1、2)

白血球の異常
表1白血球の異常
白血球の種類
表2白血球の種類


白血球はひとつの種類ではなくて、いくつかの種類に分類されます。
発熱時にはふつうは好中球といわれる種類の白血球が増加してきますが、その他の白血球が増加することがあります。このような場合には診断に直結する重要な所見となります。
またふつうでは存在しない異常な白血球が出現してくることがあります。白血病では発育過程の未熟な白血球が出現してくることで比較的速やかに診断することができます。
また、異型リンパ球というリンパ球が出現してくることもありますが、この場合にはEVウィルス感染症と診断されます。

*EBウィルス感染症は、高熱とともに頚部リンパ節のはれ、扁桃炎、肝機能障害を伴う病気で、若い人にしばしばみられます。詳しくは 家庭の医学-大人-扁桃炎 をご覧ください。

3)CRP、血沈

炎症があるかどうかを知るもっとも一般的な検査はCRPと血沈で、炎症や組織の破壊があると上昇してきます。
このなかでCRPは変動幅が大きく、病変が起きるとほぼ一日以内に数倍にも増加します。増加は血沈よりも早く起こり、回復も血沈よりも速やかに減少、陰性化します。CRP検査は病気に対する特異性はありませんが、CRPが陽性・増加を示す場合には、身体のどこかに炎症性あるいは組織破壊性の病変があると考えられ、経過を追って測定し原因疾患の発見に努めなければなりません。
血沈は赤血球沈降速度といわれ、凝固を阻止した静脈血の中を、赤血球が沈降していく速度をmmで表したものです。炎症や組織の破壊、血清蛋白質異常などがあると増加していきます。血沈は最近は行われる頻度はやや少なくなってきましたが、現在でも意義深い検査です。

これらの検査は、(1)潜在的な病気の存在を調べるため、(2)病気の活動性や経過の判定のため、(3)病気の予後判定のため などに重要です。
たとえば、微熱と倦怠感で受診される方がますが、これらの検査で異常がみられないときは心配ないものと判断され、経過をみるように指示します。しかしこれらの検査で異常を認めにくい病気もあります(マイコプラズマ感染症など)。
検査結果だけに頼るのではなく、患者の訴えや症状など総合的に判断しながら診察を進めていく必要があります。

4)胸部レントゲン検査

胸部レントゲンは発熱時にはいろいろな情報を与えてくれるため、重要な検査です。
せきが多く、発熱が続くときには肺炎を疑っていく必要があります。聴診器だけで早期に肺炎の診断をすることは困難と思われます。
風邪による発熱が4日以上持続し、せきが多いときには肺炎を疑いながら念のために胸部レントゲンを撮影しておくことは、たいへん役に立つと思われます(私見)。

5)発熱時の主な鑑別診断

2つの表(表3、4)は本院でしばしばみられた発熱と病気の関係について表したものです。

発熱が続くとき(感染症)
表3発熱が続くとき(感染症)
発熱が続くとき(感染症以外)
表4発熱が続くとき(感染症以外)

この中で慢性疲労症候群とAIDSは本院で経験したことはありませんが、疾患として大切であると考えられ追加しました。

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