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予防接種Q and A

〈予防接種 5〉 麻しん風しん混合ワクチン

Dr.みやけ

皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「麻しん風しん混合ワクチン」について解説しています。

Q and A (クリックしてください。回答へ進みます)
〇〇〇
  1. 1.卵アレルギーの子どもに、麻しん風しん混合ワクチンを接種してもよいでしょうか?
  2. 2.ガンマグロブリン製剤投与後、どのくらい間隔をあけて麻しん風しん混合ワクチン(MR)を接種したらよいでしょうか?
  3. 3.麻しん風しん混合ワクチン(MR)を生後12ヶ月以前に接種してもよいでしょうか?
  4. 4.麻しん風しん混合ワクチン(MR)の予防接種に関する米国の状況を教えて下さい。
  5. 5.最近の麻疹の流行状況を教えて下さい。
  6. 6.最近の風疹の流行状況を教えてください。
  7. 7.麻疹に対する免疫がない者が麻疹患者と接したときの予防接種は、どうすればよいでしょうか?
  8. 8.本人ではなく、家族または近所で風疹の流行が見られた場合に、ワクチン接種を始めてもよいでしょうか?
  9. 9.予防接種をしたにもかかわらず、麻疹にかかったと聞きましたが、どうしてでしょうか?
  10. 10.風しんワクチンの接種を受けても抗体のできない場合があると聞きますが、どのくらいの割合でしょうか?
  11. 11.家族に妊娠5ヶ月以内の妊婦がいる場合、子どもに麻しん風しん混合ワクチン(MR)もしくは風しんワクチンを接種してもよいでしょうか?
  12. 12.授乳期に風しんワクチン(もしくは麻しん風しん混合ワクチン(MR))を接種すると、乳汁中に風しんワクチンウィルスが排せつされると聞きましたが、乳児に影響はないでしょうか?また、次の妊娠に備えてなるべく早く風しんの予防接種を受けたいのですが、分娩後どれくらい経過したら接種が可能でしょうか?
  13. 13.妊娠出産年齢層の女性に風しんワクチン(麻しん風しん混合ワクチン(MR)もしくは麻しんワクチン)を接種する場合、とくに注意することはあるでしょうか?
  14. 14.おたふくかぜ、麻疹などに感染している場合、風疹の予防接種は1ヶ月間は受けるべきではないと考えてよいですか?この場合、「治癒後1ヶ月」ですか、「発病後1ヶ月」ですか?
  15. 15.風しんワクチン(もしくは麻しん風しん混合ワクチン(MR))は、成人女性では抗体のない場合に接種するといわれましたが、抗体陽性者に接種してはいけないのでしょうか?
  16. 16.麻疹、風疹の免疫をもっているかどうかの確認にはどのような方法がありますか?
  17. 17.麻しん風しん混合ワクチン(MR)の副反応について教えて下さい。

※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。

・・・

Q1:卵アレルギーの子どもに、麻しん風しん混合ワクチンを接種してもよいでしょうか?

Dr.みやけ

A1:卵アレルギーがあっても、全身症状あるいはアナフィラキシー反応を起こしたことがなければ、通常とくに問題なく接種が可能です。

麻しん風しん混合ワクチン(MR)はきわめて微量ですがニワトリ胚細胞細分を含んでいます。しかし高度に精製され、卵成分はほとんど含まれていないので、卵アレルギーを理由に麻しん風しん混合ワクチン(MR)が接種できないということはありません。

ただし、ワクチンに含まれる他の成分によるアレルギー反応を起こすことがあり、卵に限らずアレルギー症状が強い場合には専門医に相談してください。

Q2:ガンマグロブリン製剤投与後、どのくらい間隔をあけて麻しん風しん混合ワクチン(MR)を接種したらよいでしょうか?

Dr.みやけ

A2:輸血またはガンマグロブリン製剤の投与を受けた人は、3ヶ月以上接種を延期してください。

血液またはガンマグロブリンに含まれる麻疹あるいは風疹に対する抗体のため、ワクチンの効果が減弱する可能性があるためです。また川崎病の治療でガンマグロブリン製剤の大量療法を受けた人も同様の考え方で、6ヶ月以上(麻疹感染の危険性が低い場合は11ヶ月以上)延期してください。

Q3:麻しん風しん混合ワクチン(MR)を生後12ヶ月以前に接種してもよいでしょうか?

Dr.みやけ

A3:生後4~6ヶ月で母体からの移行抗体はほぼ消失し、6ヶ月を過ぎると罹患の可能性がでてきます。したがって、麻疹流行地では生後6ヶ月から麻しんワクチン(MR)を接種している国も少数ですがあります。

わが国でも1歳未満の乳児への麻しんワクチン接種は、任意接種として可能です。麻疹流行時の6~11ヶ月齢児への予防接種は、個人予防・集団予防の視点から緊急接種としての必要性が検討されるべきですが、この年齢における現行ワクチンの効果および安全性は十分検討されていません。

周囲に麻疹の流行があり、緊急避難的に0歳で任意の麻しんワクチン接種を受けた場合、0歳での接種は、1歳以上の接種に比べて、母体由来の抗体の残存などから免疫の獲得が十分でないことがあるため、1歳になったら忘れずに、第1期の麻しん風しん混合ワクチン(MR)の接種を受けるようにしてください。

また第2期は、同じように小学校入学前1年間の間に麻しん風しん混合ワクチン(MR)の接種を受けて下さい。このことから、0歳で緊急避難的に接種を受けた場合は、少なくとも3回の接種を受けることになります。

風疹については、生後12ヶ月以前に緊急的に接種が必要となる場合は少なく、通常麻疹流行時の緊急避難的な対応としての接種には麻しん風しん混合ワクチン(MR)ではなく、麻しんワクチンを用います。

Q4:麻しん風しん混合ワクチン(MR)の予防接種に関する米国の状況を教えて下さい。

Dr.みやけ

A4:米国における予防接種諮問委員会(ACIP)は、麻疹の予防接種についての勧告を発表しています。

一般に初回接種は生後12~15ヶ月、追加接種4~6歳(幼稚園入園時あるいは小学校入学時)、流行地域では初回接種を生後12ヶ月としています。

米国のほとんどの州では学校法により、規定の予防接種が完了していないと入学できないか、あるいはその理由書を提出することになります。
また成人での罹患防止のため、短大や大学の学生、医療関係者は、入学時や雇用時に、生後1年以降に2回の接種を受けた記録(接種澄み証明書または母子健康手帳など)、あるいは麻疹罹患歴の提出を求めるとしています。
米国への転勤、移住、留学にあたっては、これらの点に十分留意しておく必要があります(米国に限らず、多くの海外の国では同様のことが求められます)。

Q5:最近の麻疹の流行状況を教えて下さい。

Dr.みやけ

A5:平成18年(2006年)末から平成19年(2007年)始めにかけて、埼玉県、東京都で麻疹患者数が増加傾向を示しました。

その後、千葉県、神奈川県などの関東南部地域に拡大し、5月の連休以降、全国に拡大しました。平成19年の流行の中心は、10~20代のワクチン未接種かつ麻疹未罹患者およびワクチン1回接種後のprimary vaccine failure(PVF) およびsecondary vaccine failure(SVF)を中心とした年長児から若年成人中心に変化し、多くの学校(とくに高校、大学)が麻疹による休校となりました。

(PVF、SVFについて詳しくはQ&A9をご覧下さい。)

その後、患者数は減少傾向にありましたが、麻疹は平成20年1月1日からすべての医師に届け出が義務づけられました。これにより、平成20年は、11,012例の患者発生が認められました。
とくに神奈川県では3,500例以上の流行となり、北海道、千葉県、東京都でも患者数が多く1,000例以上となり、次いで福岡県では600例以上、埼玉県、大阪府では300例以上、静岡県では200例以上、秋田県、愛知県、京都府、兵庫県、岡山県、広島県では100例以上となり、患者数0例の都道府県はありませんでした。
とくに多かったのは、中学生・高校生の年齢層で、10代が全体の43.1%、20代が22.2%、0~1歳児は11.2%、2~4歳児は4.0%、5~9歳児は8.4%、30歳代は8.3%でした。

予防接種歴をみると44.6%が予防接種歴無し、26.6%が1回接種歴有り、接種歴不明は27.6%でした。2回接種歴有りの者は全体の1.2%と少なく、2回目の接種から発症までの2週間以内の者も多いことから、間に合わずに発症したと考えられました。
平成21年前年からの対策が劫を奏し、再び0~1歳児を中心とする報告となり、人口100万対5.80例となりました。平成22年の患者報告数はさらに減少し、人口100万対3.6例となりましたが、排除が近い状態とされる人口100万対1.0未満は未だ達成されていません。

平成23年8月現在の麻疹累積報告数は372例であり、同時期で比べると平成22年の326例より患者数が増加しており、平成21年以降みられなかった麻疹の地域流行が発生しました。
平成23年は麻疹に感受性を持つ日本人が海外で麻疹を発症するといった輸出麻疹例は、国内における取り組みにより少なくなってきているものの、ヨーロッパやアジアなど麻疹が流行している地域に仕事や観光などで渡航したり、あるいはこれらの地域から日本を訪れる人々の輸入麻疹例(遺伝子型がD4型:ヨーロッパで主に流行、D9型:アジアで主に流行)が多くみられており、日本も麻疹輸出国から麻疹輸入国に転じたと考えられます。

平成20年は世界で年間16.4万人が麻疹により死亡したと推計されています。わが国では、平成20年1人、平成21年2人が死亡しましたが、平成22年は麻疹による死亡は報告されませんでした。麻疹の流行や死亡者数を減らすためには、ワクチンの接種率を95%以上に維持する必要があるといわれています。

Q6:最近の風疹の流行状況を教えてください。

Dr.みやけ

A6:平成20年から平成22年の各年ごとの報告数は年々減少していました。

しかし平成23年の第1~29週の累積報告数は増加し、平成22年の年間報告数の約3倍近くとなりました。男性は女性の3倍を超える報告数で、平均年齢は男性32歳、女性24歳であり、子を持つ機会の多い年代の成人を中心に発生していることが平成23年の流行の特徴です。
とくに男性では9割近くが20歳以上の症例で、職場や学校などでの成人男性を中心とした集団発生の反映と考えられています。また職場などにとどまらず、地域での流行が懸念されており、風疹感受性者は早めのワクチン接種が望まれます。
職場で感染したと思われる男性から、その妻子に感染したと思われる症例の報告もあります。

このような患者報告数の増加に伴い注意が必要なのは先天性風疹症候群の発生であり、明らかな地域流行が認められなかった平成21年においても先天性風疹症候群の報告が2例あったことからも、風疹の流行がなくならない限り、先天性風疹症候群の発生もなくならないと考えられます。

風疹および先天性風疹症候群の予防のため、定期接種の対象者とともに、とくに将来妊娠を望む女性とその夫や同伴家族などは積極的にMRワクチンを接種することが勧められます。

Q7:麻疹に対する免疫がない者が麻疹患者と接したときの予防接種は、どうすればよいでしょうか?

Dr.みやけ

A7:今まで麻疹にかかったことのない人(予防接種も受けたことがない人)が麻疹にかかっている患者と遊んだり、兄弟のうち一人が麻疹にかかっている時は、ふつうは感染してしまいます。

麻疹にかかっている患者と接触した時期がはっきりしている場合には、72時間以内にワクチンを接種すると、自然感染を防ぐことが可能なこともあると言われています。しかし家族が麻疹と診断された場合は、診断されたときにすでに感染して72時間以上過ぎていることが多いので、ワクチン接種は間に合わないことが少なくありません。

このような場合には、6日以内であればガンマグロブリンの筋注で発症を防いだり、軽症化させることができる場合があります(健康保険適応あり)。しかしガンマグロブリンによる予防効果は一時的なものです。
ガンマグロブリンの筋注後、3ヶ月以上経過した後にワクチンを接種することが必要です。またガンマグロブリンを使用するときはヒト血液製剤であること、接種に際しては体重1kgあたり0.33cc程度の量を筋肉内に注射する必要があるため量が多くなり、またかなりの疼痛を伴うことを知っておくべきです。
ガンマグロブリンの静注用製剤を使用する場合がありますが、この方法は健康保険が適応されません。

Q8:本人ではなく、家族または近所で風疹の流行が見られた場合に、ワクチン接種を始めてもよいでしょうか?

Dr.みやけ

A8:家族などに発病者がいる場合、本人が接種不適当者でなければ、接種しても差し支えはありませんが、当日の本人の健康状態を十分に把握した上で実施して下さい。

ただし、本人がすでに風疹ウィルスに感染して潜伏期間内であれば、ワクチンの効果が現れる前に発病してしまうことがあります。流行がみられる前にワクチン接種を済ませておくことが望まれますが、流行のある年には接種不適当者に当たらない感受性者(風疹の免疫がない人)はなるべく早くワクチンを受けることが勧められます。

Q9:予防接種をしたにもかかわらず、麻疹にかかったと聞きましたが、どうしてでしょうか?

Dr.みやけ

A9:麻しんワクチンあるいは麻しん風しん混合ワクチン(MR)の接種による抗体陽性率は95%以上で、接種を受けた人のほとんどが抗体を獲得しますが、数%は抗体ができません(primary vaccine failure:PVF)。

以前には麻疹をはじめとするウィルス感染症は一度かかると二度とかからない終生免疫が獲得されると考えられ、生ワクチンの接種の場合も同様に免疫は終生続くと考えられていました。
しかし近年、発症を防御できるレベルの抗体が持続されるのは、ワクチン接種後恒久的に野生株の麻疹ウィルスと接触しているためという考え方に変わってきています。

近年では麻疹の流行が減少して野生株ウィルスに接触する機会が少なくなってきました。そのためワクチン接種により獲得した免疫が低下して麻疹にかかってしまう例(secondary vaccine failure:SVF)が報告されるようになりました。
しかしこの場合は、典型的な麻疹の症状より軽症の、いわゆる修飾麻疹の病態をとる場合が多く、診断には検査室診断(麻疹特異的IgG抗体の検出、および急性期の麻疹特異的IgM抗体の著明高値、麻疹ウィルスの分離、麻疹ウィルス遺伝子の検出など)が必要となる場合が多くあります。

自然麻疹が減少すればsecondary vaccine failure(SVF)の発生増加が懸念されます。
このため、平成20年4月1日から5年間の時限措置で、中学1年生相当する年齢の者(13歳になる年度)と高校3年生に相当する年齢の者(18歳になる年度)に麻しん風しん混合ワクチン(MR)の接種が定期予防接種として実施されることになりました(第3・4期)。
1回もワクチンを受けたことがない人はもちろんのこと、乳幼児期に受けたことがある人も、この時期にもう一度受けることになりました。

しかし、初年度(2008)の接種率は第3期が85%、第4期が77%で、目標の95%以上は達成できませんでした。このままの接種率が続くと、また数年後にこれらの年代で麻疹の流行が発生することが心配されます。

Q10:風しんワクチンの接種を受けても抗体のできない場合があると聞きますが、どのくらいの割合でしょうか?

Dr.みやけ

A10:今まで多くの研究が行われており、その結果を総合すると約5%以下と考えられています。

しかしこれらの人でも、2回目の接種を受けることで抗体ができる場合がほとんどです。平成22年度感染症流行調査によると、風しんワクチン接種歴が1回ある人で抗体陰性であった人の割合は4.0%、接種歴が2回以上ある人で抗体陰性であった人の割合は1.2%でした。

Q11:家族に妊娠5ヶ月以内の妊婦がいる場合、子どもに麻しん風しん混合ワクチン(MR)もしくは風しんワクチンを接種してもよいでしょうか?

Dr.みやけ

A11:風しんワクチン接種後3週間以内に、咽頭から一過性にワクチンウィルスの検出が認められますが、このウィルスによる周囲への感染は起こらないので、接種しても差し支えはありません。

むしろ、接種を受けていない子どもが自然感染を受け、そこから妊婦が感染を受ける方がリスクは高いと考えられます。

Q12:授乳期に風しんワクチン(もしくは麻しん風しん混合ワクチン(MR))を接種すると、乳汁中に風しんワクチンウィルスが排せつされると聞きましたが、乳児に影響はないでしょうか?また、次の妊娠に備えてなるべく早く風しんの予防接種を受けたいのですが、分娩後どれくらい経過したら接種が可能でしょうか?

Dr.みやけ

A12:米国予防接種諮問委員会(ACIP)の報告によると、風しんワクチンウィルスは乳汁中に排せつされ、母乳で保育される乳児に一時的に抗体産生が認められると報告されています。

しかし乳児は無症状であり、抗体価も低く、かつ一時的であって、このような形で乳児に風疹の免疫を与えるには至らなかったとされています。分娩後、早い時期にワクチン接種を受けても、そのために授乳中の乳児に明らかな風疹の症状が現れることはありません。

また、妊娠中の検査で風疹HI抗体価が1:16以下であった場合は、出産直後にワクチン接種を行うことが、現在厚生労働科学研究班(岡部 信彦ら)により実施され、安全に接種できたことが報告されています。

Q13:妊娠出産年齢層の女性に風しんワクチン(麻しん風しん混合ワクチン(MR)もしくは麻しんワクチン)を接種する場合、とくに注意することはあるでしょうか?

Dr.みやけ

A13:妊娠していない時期(生理期間中またはその直後がよい)にワクチン接種を行い、その後2ヶ月間避妊するように注意する必要があります。

誤って妊娠3ヶ月以内に風しんワクチンを接種したときのワクチンウィルスによる先天性風疹症候群の出生は報告としてはありませんが、理論上のリスクを回避する意味で、妊婦は麻しん風しん混合ワクチン(MR)、麻しんワクチン、風しんワクチンの接種の不適当者であることに変わりはありません。

ただし万が一、妊娠していることに気づかず、これらのいずれかのワクチンを受けてしまった場合でも、そのリスクの低さから妊娠を中断する必要はありません。

Q14:おたふくかぜ、麻疹などに感染している場合、風疹の予防接種は1ヶ月間は受けるべきではないと考えてよいですか?この場合、「治癒後1ヶ月」ですか、「発病後1ヶ月」ですか?

Dr.みやけ

A14:現在、予防接種を受ける人がおたふくかぜ、麻疹などのウィルスに感染し、潜伏期間中であることが明らかな場合には、風しんワクチンの接種は避けて下さい。

麻疹に関しては治癒後4週間程度、その他(風疹、水痘およびおたふくかぜなど)については治癒後2~4週間程度、その他のウィルス性疾患(突発性発疹、手足口病、伝染性紅斑など)については、治癒後1~2週間の間隔をあければ、生ワクチン・不活化ワクチンともに接種できるとされていますが、接種医師がかかった疾患の重症度により、個別に適切な接種時期を決定することが必要です。

感染症の種類やその症状によっても、発病後治癒までの期間は異なりますが、「発病後○○日または週」ではなく、「治癒後○○日または週」と考える方がよいと思います。「発病後4週間」では、免疫機能の回復が十分といえない場合があり、この免疫機能の回復や体力の回復を十分に見定めるため、「治癒後4週間」とされています。
とくに経過が長引いたり、慢性化している場合には注意が必要で、接種するかどうかの最終判断は、問診および診察によって接種医師が慎重に決定するべきものです。

Q15:風しんワクチン(もしくは麻しん風しん混合ワクチン(MR))は、成人女性では抗体のない場合に接種するといわれましたが、抗体陽性者に接種してはいけないのでしょうか?

Dr.みやけ

A15:抗体陽性の女性に風しんワクチン(麻しん風しん混合ワクチン(MR))を接種してもとくに問題はありません。

抗体価が低い場合には、抗体価を高めることになります(ブースター効果)。

Q16:麻疹、風疹の免疫をもっているかどうかの確認にはどのような方法がありますか?

Dr.みやけ

A16:麻疹や風疹の流行が問題になった結果、一般の学生や医療関係の学校に進もうとする学生などが抗体検査、とくに麻疹抗体価の検査のために医療機関を訪れる機会が目立ってきました。

免疫の有無を調べるためには、血液中の抗体価を調べる方法が一般的です。一般の医療機関で受けることができます。測定方法には多くがありますが、補体結合反応(CF法)は感度が低いため、この目的に使用することはできないので注意が必要です。

麻疹の場合、感度の高い酵素免疫法(EIA法)で測定する場合が最も多いと思われますが、陰性あるいは(±)プラスマイナスの場合、麻疹に対する免疫は十分とはいえず、ワクチンが強く勧められます。
一方、EIA法で陽性の場合、どの程度のEIA価があれば、発症を予防できるかの基準がまだ明確に示されておらず、現在検討が進められています。

EIA価16.0未満(デンカ生研製キットを使用した場合)の場合は、免疫を強化する目的でワクチンを受けておくことを勧めています(院内感染対策としてのワクチンガイドライン:http://www.kankyokansen.org/modules/publication/index.php?content_id=4)。

なお、このガイドラインの記載は、EIA価16.0以上になるまでワクチンを受け続けるという意味ではなく、1回のみのワクチン接種あるいは罹患した人で、EIA価16.0未満の低い人については再度予防接種を受けて、免疫を強固にしておくという意味です。

また、予防接種を受けた場合は、接種記録を保管しておくことが重要であり、その後の抗体検査を求めることではありませんので、誤解がないように判断してください。

感度の高いゼラチン粒子凝集法(PA法)で測定した場合、陰性(<1:16)に加えて、陽性であっても1:16、32、64といった低い抗体価の場合は、麻疹の発症を完全に防ぐことが難しいと考えられます。
このことからPA法であれば陰性(<1:16)および二桁の抗体価の場合はワクチンを受けておくことが強く勧められます。
また、中和抗体価との比較検討の結果から、1:128であっても中和抗体陰性の場合がまれながら認められるため、医療関係者を対象とした上記ガイドラインでは、1:128以下はワクチンを受けることを勧めています。

中和法(NT法)は免疫の有無を調べるためには、理論的に最も有効な方法ですが、多数の検体を一度に迅速に測定することができません。
ただし、この方法で測定して陰性(1:4未満)であった場合、ワクチン接種が勧められます。医療関係者を対象とした上記ガイドラインでは、中和法で1:4の場合は、免疫を強化する目的でワクチンを受けておくことを勧めています。

麻疹の場合、赤血球凝集抑制法(HI法)は感度が高くないため、免疫の有無を調べる目的使用すると多くの陰性者が発生します。ただし、医療関係者など、感染を受けるリスクが高いと考えられる人の場合、この方法で陰性であれば、ワクチンを受けておくことも一つの方法です。

風疹は、赤血球凝集抑制法(HI法)の感度が免疫酵素法(EIA法)と同等に高く、検査にかかる費用もHI法のほうが安価であるため、わが国の臨床現場はこの方法での測定が多く利用されています。HI抗体価1:16以下の場合にワクチン接種が勧められます。EIA価8.0未満の場合は、免疫を強化する目的でワクチンを受けておくことが勧められます。

麻疹と同様に、EIA価8.0以上になるまでワクチンを受け続けるという意味ではなく、1回のみのワクチン接種あるいは罹患した人で、EIA価8.0未満の低い抗体価の人については、再度予防を受けて、免疫を強固にしておくという意味です。また、予防接種を受けた場合は、接種記録を保管しておくことが重要であり、その後の抗体検査を求めるものではありませんので、誤解がないように判断してください。

ワクチン接種の基準となるウィルス抗体価についてはこちらもご覧下さい(http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/123.html)。

Q17:麻しん風しん混合ワクチン(MR)の副反応について教えて下さい。

Dr.みやけ

A17:副反応の主なものは発熱と発疹です。第2期以降ではその割合は減少します。

その他として、じんま疹は第1期の発生率が他の期より高い傾向がみられ、関節痛は第2期以降の発生率が第1期に比較して高い傾向がみられました。

1回目の接種後にみられる発熱や発疹といった症状は接種後13日以内(とくに7~10日)に多くみられます。接種直後から数日中に過敏症状と考えられる発熱、発疹、かゆみなどがみられることがありますが、これらの症状は1~3日で軽快します。2回目の接種では発熱や発疹の頻度は低く、接種翌日の局所反応が最多です。

これまでの麻しんワクチン、風しんワクチンの副反応のデータから、アナフィラキシー様症状、血小板減少性紫斑病、脳炎およびけいれん等の副反応がまれに生じる可能性があります。

また、年長者では顔面蒼白、徐脈、血圧低下、失神などの血管迷走神経反射の注意が必要です。接種後30以内に起こりやすいため、接種後すぐに帰宅するのではなく、30分程度は接種医のもとにすぐに戻って来られる場所で座って待機し、体調の変化がないことを確認してから帰宅することが大切です。

麻しんワクチンは発熱のしやすいワクチンです。ワクチン中で弱毒化された麻疹ウィルスが体内で増殖する時期(接種後5~14日)を中心として、約5.4%に37.5度以上38.5度未満、約8%に38.5度以上の発熱、約5.9%に麻疹様の発疹がみられます。ただし、発熱の持続期間はふつう1~2日で、発疹は少数の紅斑や丘疹や自然麻疹に近い場合もあります。

《参考文献》
2011
(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)

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  2. かぜの治療
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  2. 百日咳・ジフテリア・破傷風(DPT)
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  7. おたふくかぜ(流行性耳下腺炎・ムンプス)
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  9. インフルエンザ
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