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予防接種Q and A

〈予防接種 7〉 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)

Dr.みやけ

皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)ワクチン」について解説しています。

※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。

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Q1:おたふくかぜについて教えてください。

Dr.みやけ

A1:おたふくかぜは、流行性耳下腺炎あるいはムンプスとも呼ばれる、ムンプスウイルスによる急性ウイルス性の全身性感染症です。

感染様式は飛沫感染ですが、患者との直接接触や患者の唾液による間接的な接触感染も成立します。唾液中へのウイルスの排泄は耳下腺腫脹を示す6日前頃からその後9日ほどです。不顕性感染では症状がなくともウイルスが一定期間排出されますので、不顕性感染者からも感染します。

2~3週間の潜伏期(平均18日前後)の後、耳下腺の腫脹と圧痛を主症状として急激に発症します。ウイルスが全身の各臓器や組織を侵して、神経系組織や内分泌系の腺組織に炎症がおよびやすいのが特徴になっています。
耳下腺の腫脹は発症後1~3日でピークとなり、その後3~7日かけて消退します。発熱は1~6日ほど続きます。思春期以降の成人が感染すると、ときに精巣炎や卵巣炎を起こし、男性では局所に疼痛と腫脹をきたします。また、腺組織では唾液腺のほか膵臓に炎症を起こすことがあります。

合併症としては、精巣炎、卵巣炎、膵炎、腎炎、髄膜炎、髄膜脳炎および難聴などがあります。
髄膜炎は合併症として珍しくなく、無症状でも髄液中の細胞数に増加が見られるとの報告があります。おたふくかぜの経過中の発熱、頭痛・嘔吐は髄膜炎を疑う症状として要注意です。
難聴はおたふくかぜの後遺症としての聴力障害で、0.5~0.01%の頻度で起こり、聴力の回復は困難と言われています。その多くは片側性ですが、時に両側難聴となる場合もあります。

Q2:おたふくかぜワクチンについて教えてください。

Dr.みやけ

A2:おたふくかぜワクチンは1歳以上で接種することができます。接種量は0.5mLを1回皮下に接種します。

おたふくかぜワクチンの副反応

重大な副反応として、アナフィラキシー様症状を起こしたという報告がまれにあります。また、ワクチンに由来すると疑われる無菌性髄膜炎の報告は、0.03~0.06%の頻度で発生するとの報告があります。その他、急性血小板減少性紫斑病(100万人接種当り1人程度)、まれに難聴、精巣炎の報告があります。

発熱、耳下腺腫脹などを認めることがありますが、軽微であり一過性に軽快します。接種局所の発赤、腫脹を認めることもありますが、これも一過性で数日で軽快します。
接種2~3週後に発熱・頭痛、嘔吐などが見られた時はワクチンによる髄膜炎発症の可能性があることについて、接種前の詳しい説明と症状が出現した時の十分な経過観察に加えて、対応方法について説明が必要です。

先進国を中心として多くの国がMMRワクチンの2回接種によりムンプスの患者発生数は激減しています。わが国においても、定期接種化に向けた検討が行われています。

Q3:おたふくかぜワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生頻度はどれくらいでしょうか?

Dr.みやけ

A3:発生頻度としては、MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎の頻度が1200人に1人(0.08%)程度といわれています。

また、平成19(2007)年には、日本外来小児科学会が中心となり、単体のおたふくかぜワクチン接種後の調査が行われましたが、その報告によると、ワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生率は0.03~0.06%とされました。
また、その報告の中で、顕性感染のムンプス発症後に発生した無菌性髄膜炎の頻度も同時に調査しており、その場合1.24%に無菌性髄膜炎が合併したと報告しています。神経症状への関心の程度や髄液検査を行う頻度にも影響されるので、正確な頻度を出すことは困難です。症状は比較的軽く、後遺症は残りません。

MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎発症率の0.08%、おたふくかぜワクチン接種後の0.03~0.06%は決して低い率とはいえませんが、自然感染により発症する髄膜炎の発生率と比較すれば、ワクチンにより予防した方が髄膜炎の頻度は低いと考えられます。実施にあたってはこの点に関する十分な理解が必要です。

Q4:卵アレルギーのある子どもへの接種は気をつける必要がありますか?

Dr.みやけ

A4:ウイルスを培養するためにニワトリの胎児細胞を使っていますが、卵そのものは使用しておりませんので、卵アレルギーのある子どもにも接種が可能です。

ただし、卵に限らず強いアレルギー症状を有する子どもには、問診を含む予診を十分に行い、接種医師が可否を判断します。

Q5:おたふくかぜワクチンによる難聴の発生頻度はどのくらいでしょうか?

Dr.みやけ

A5:おたふくかぜに自然に罹患した方のうち0.5~0.01%の頻度で合併症として片側ないし両側の耳に難聴(ムンプス難聴)を発症するといわれています。

多くは耳下腺腫脹の消失後1カ月以内に発症し、ムンプスウイルスの直接侵襲によるものと考えられています。ムンプス難聴の多くは高度の難聴として障害を残すことが多いといわれています。それに対しておたふくかぜワクチンによる難聴はきわめてまれです。

Q6:おたふくかぜワクチンは何歳くらいで接種するのが良いでしょうか?

Dr.みやけ

A6:感染症発生動向調査によると、流行性耳下腺炎の報告年齢は4~5歳が最も多く次いで、2~3歳、6~7歳の順で、7歳以下で全報告数の80%以上を占めています。

保育所や幼稚園、小学校など集団生活で感染する機会が増えると考えられています。おたふくかぜワクチンは1歳以降で接種可能ですので、1歳になり麻しん風しん(MR)混合ワクチンを接種したあとで、遅くとも集団生活を開始する前までには接種することが望まれます。

Q7:おたふくかぜの免疫を持っているかどうかの確認にはどのような方法がありますか?

Dr.みやけ

A7:免疫の有無を調べるには、血中の抗体価を調べる方法が一般的です。

ムンプスウイルスに対する抗体を測定する方法として赤血球凝集抑制法(HI法)、中和法(NT法)、酵素抗体法(EIA法)があり、これらの方法でムンプスウイルスに対する抗体の有無を測定することができます。
ただし、ムンプスのHI法は感度が低いという問題がありますので、この目的で測定する場合には、NT法かEIA法で検査を行う必要があります。

また検査費用は若干高くなりますが、感度が高いことと、大量の検体測定に向いていることから、最近はEIA法でのムンプスIgG測定が広く用いられています。
ただし、不確かな罹患の記憶や前回の接種から長期間経過している場合などで、免疫の有無の検査の後にワクチン接種を希望される場合もありますが、接種不適当者でなければ、抗体検査をせずにワクチンを接種するという方法も可能です。

Q8:おたふくかぜワクチンの予防効果について教えてください。

Dr.みやけ

A8:おたふくかぜワクチンによる抗体陽転率は約90%です。

WHOはおたふくかぜワクチンの予防効果は1回接種では十分でないとして、2回接種を奨励しています。

Q9:成人してからのおたふくかぜによる精巣炎、卵巣炎について教えてください。

Dr.みやけ

A9:思春期以降の人が初めてムンプスウイルスに感染すると、睾丸炎(20-40%)や卵巣炎(5%)の合併頻度が高くなると言われています。

睾丸炎を合併すると、様々な程度の睾丸萎縮を伴い、精子数は減少しますが、不妊症の原因となるのはまれです。またおたふくかぜワクチンによる副反応での睾丸炎、卵巣炎の報告はほとんどありません。

思春期以降の人がワクチンを接種する場合は、妊娠していないかどうかの確認と接種後2カ月の避妊の必要があります。

《参考文献》
2011
(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)

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