町医者の診療メモ頭痛 > 頭痛と肩こり 

町医者の診療メモ Dr.みやけの20年の経験で培われた一種の「診察のコツ」をまとめます。

頭痛と肩こり

頭痛と肩こり

もともと日本人には肩こりが多いと言われていますが、頭痛時に肩こりを伴う方も多く、頭痛と肩こりの関係は深いと考えられています。いわゆる「頭痛持ち」の頭痛はおもに片頭痛と緊張型頭痛、群発頭痛の3つですが、実際には片頭痛と緊張型頭痛の両方の特徴を持つ頭痛も多く存在します(図1、2

肩こりが強くなると、背部や胸部の筋肉も緊張してこりが強くなります。
(図1)頭痛には種類があります

15歳以上の日本人4,029人を対象とした 頭痛の疫学調査
(図2)

いずれの頭痛も多くの場合、首や肩のこりを伴います。片頭痛に肩こりが伴うことはあまり知られていないので意外かもしれません。実際には片頭痛患者のほとんどが、頭痛前や頭痛時に首や肩のこりを感じていると言われています。

片頭痛と肩こり

  緊張型頭痛 片頭痛 群発頭痛
どんな痛み?➡ ギューッと締めつけられるような痛み、ずっしりと重い痛み ズッキンズッキンと脈打つような痛み 目の奥がえぐられるような痛み
どこが痛む?➡ 頭の両側、または頭全体 頭の片側 片側の目の奥
動くと痛い?➡ いいえ はい じっとしていられない
頭痛以外にどんな症状?➡ 肩や首のコリ、吐き気 光や音が気になる、吐き気、実際に吐いてしまう 涙、目の充血、鼻水・鼻づまり
頭痛の前ぶれは?➡ ギザギザした光が見えたり、視野の一部が見えにくくなる
頭痛のきっかけは?➡ 目の疲れ、長時間の同一姿勢、パソコン、精神的ストレス 人混み、月経、寝すぎ、寝不足、ホッとした時(忙しさから解放) アルコール
どのくらいの頻度で起こる?➡ 1ヵ月に15日未満またはほとんど毎日 週2回から月1回程度 1~2ヵ月間集中してほぼ毎日
  緊張型頭痛と片頭痛両方の特徴を持つ頭痛が起こることがあります。  

(表1緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の特徴

片頭痛は頭の片側に起こることが多く、ズキンズキンと脈打つような激しい痛みが比較的急に起こります。体を動かすと頭痛がひどくなったり、音や光、臭いが気になり、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
女性に多く、家族に頭痛持ちの人がいると起こりやすくなります。睡眠不足や寝過ぎでも起こることがあります。緊張型頭痛とは反対に、ストレスから解放されてホッと気が緩み、筋肉の緊張がとけたときに起こります。前兆として、視野が欠けたり、光がチカチカするような現象が現れることがあります。

片頭痛の特徴
(図3)片頭痛の特徴

片頭痛はときどき起こるもので、いったん頭痛が始まるとふだん通り家事や仕事ができないなど、日常生活に影響がある頭痛です。頭の血管の拡張と炎症が起こる頭痛で、1回の発作においても段階によって症状の変化がみられます。
大きく分けると、「予兆(前ぶれ)」、「前兆」、「頭痛」、「後症状」となります。頭痛の前に視界にチカチカした光が見えるなどの「前兆」は一部の人にしかみられませんが、「予兆」はたいていの人に現れます。片頭痛の予兆としては、肩こりや生あくび、空腹感などが代表的ですが、中でも一番多いのが肩こりです。

片頭痛が起こる前に肩こりがひどくなってきて、首から後頭部に向かって肩こりがグーっと上がってくるように感じることがあります。これを「肩こりからくる頭痛」と表現される患者さんがいらっしゃいます。

首や肩の痛み(こり)は、片頭痛のいずれの過程にも起こる
(図4)

片頭痛患者さんのうち頭痛前や頭痛時に肩や首のこりを感じている人
(図5)

緊張型頭痛と肩こり

緊張型頭痛も女性に多く、一般には頭の両側からジワッと締め付けられるような重い感じの痛みです。頭痛の他に肩や首のこり、吐き気などを伴うこともあります。緊張型頭痛はコンピューター作業のように長時間不自然な姿勢を続けたり、悪い噛み合わせを続けたりというような身体的ストレスがかかった場合や仕事関係のトラブルや対人関係、不安などの精神的ストレスによって頭の両側、または頭全体の筋肉が緊張して起こると考えられています。また睡眠不足でも起こりやすくなります。

緊張型頭痛は日常生活に影響を及ぼすほどではありません。がまんしながら仕事や家事をこなすことができるような頭痛です。長時間同じ姿勢で仕事をしたときや睡眠不足が続いたときなどに、筋肉が緊張して起こります。また首がきゃしゃな女性、なで肩の女性では、頭を支える力が弱いために首の筋肉に負担がかかり、緊張型頭痛が起こりやすくなります。

このようなことから緊張型頭痛は首や肩のこりを伴うことが最も大きな特徴として認識されており、「肩こり」と「緊張型頭痛」とを結びつけて考えられがちです。しかし、首や肩のこりは片頭痛に伴って現れることがあるので、それぞれの頭痛を見分ける際の決め手にはなりません。

片頭痛や緊張型頭痛の痛み方はいろいろ

片頭痛の痛み方はいろいろ
(図6)片頭痛の痛み方はいろいろ

ズキンズキンは片頭痛、グーっと重苦しいのは緊張型頭痛と言われています。しかし片頭痛は痛み方そのものも、発作の過程や時期、年齢などいろいろな要素によって変化します。片頭痛の起こり始めはズキンズキンと拍動性(脈にあわせて痛むこと)の痛みであっても、ピークを過ぎると痛みがグーっとした痛みに変わって来ることがあります。
また女性の場合、女性ホルモンの年齢的な変動によっても痛みは変化します。更年期ではやはりズキンズキンからグーっとした痛みに変わるようです。

一方、緊張型頭痛の痛みを人によってはズキンズキンと表現することがあります。片頭痛だから片側が痛むと思われがちですが、両側が痛むことも少なくありません。

このように「肩こり」だけでなく、「拍動性」、「片側が痛む」といった症状で片頭痛と緊張型頭痛を見分けるのはとてもむつかしいと言えます。

片頭痛と緊張型頭痛を見分ける方法

では、どのように片頭痛と緊張型頭痛を見分けたらよいのでしょうか?

片頭痛を見分けるのにとくに重要なのは、片頭痛ではふだん通りに仕事や家事ができないなど日常生活に影響があることです。さらに動くとガンガン響いて辛い、吐き気がする、吐いてしまう、光・音・においに過敏になるなどの特徴があれば、片頭痛と診断できます。動くとガンガン響いて辛いという症状は片頭痛であれば比較的早い段階からみられるので、自分で判断する際にも有効です。

一方、緊張型頭痛の場合は動いてひどくなることはあまりありません。

片頭痛と緊張型頭痛の区別がむつかしいケースも!? 

変容性頭痛とは?

片頭痛?緊張型頭痛?
(図7)片頭痛?緊張型頭痛?

国際頭痛分類には記載されていませんが、変容性頭痛という日常臨床ではたいへん便利な考え方があります。若い頃の片頭痛発作の頻度は少ないものの頭痛の程度は強いが、年齢を重ねるとともに発作頻度が増す一方で、頭痛の程度は軽症化して片頭痛の特徴が減少するというパターンを取るもので、このタイプの頭痛は日常臨床ではたいへん多いと考えられています。
過去にはっきりとした片頭痛があれば、現在の頭痛には片頭痛の特徴が全くなくても変容性片頭痛と診断できることになっています。変容性頭痛の診断は頭痛発作を点としてとらえた診断ではなくて、過去の頭痛発作を含んだ線としての診断です。

こうなると頭痛を診断する場合において慢性緊張型頭痛と変容性頭痛の鑑別は困難になりますが、若い頃の記憶がはっきりあれば区別が可能となります。くり返して起こる緊張型頭痛から移行した慢性緊張型頭痛と片頭痛の特徴を失って慢性緊張型頭痛に類似している変容性頭痛とでは、治療方針はふつう同一にならないと考えられます。

町医者の診療メモ:目次へ

※このサイトは、地域医療に携わる町医者としての健康に関する情報の発信をおもな目的としています。

※写真の利用についてのお問い合わせは こちら をご覧ください。

町医者の診療メモ

町医者の診療メモ:はじめに

(よく見られる症状と診察のポイント)発熱

■(よく見られる症状と診察のポイント)頭痛

  1. 頭痛
  2. 頭痛診断の流れ
  3. 片頭痛とは
    1. 片頭痛とは
    2. 片頭痛はどのように診断するか
    3. 片頭痛の発生機序
    4. 片頭痛の薬物治療
    5. 片頭痛に潜む頸肩腕症候群
  4. 頭痛と肩こり
  5. 「肩こり関連症候群」とは?〈1〉
  6. 「肩こり関連症候群」とは?〈2〉
  7. 緊張型頭痛および肩こり関連症候群による頭痛の治療
  8. 小児や思春期の頭痛

内科から見た肩こり

めまい:脳からみためまいを中心に

関節痛・筋肉痛と内科の病気

血液検査からみた診断へのアプローチ

急な胸の痛み(胸痛発作)

いろいろある鎮痛薬

胸部レントゲン写真から考える肺疾患


 上に戻る