アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が4大疾患と言われています。
一方、せん妄やうつ病などを認知症と間違わないことが大切です。正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、パーキンソン病、甲状腺機能低下症との区別は脳CT・MRIや血液検査、神経学的な所見などで行います。
認知症と関係の深い脳の働き
- 前頭葉(ぜんとうよう):思考や善悪の判断、意志などに関係
- 側頭葉(そくとうよう):海馬(かいば)は側頭葉の奥に位置し、主に記憶に関係
- 頭頂葉(とうちょうよう):言語による表現、行動、空間認知などに関係。後帯状回(こうたいじょうかい)は空間認知(どこにいるか)や記憶などに関係し、楔前部(せつぜんぶ)は記憶などに関係
- 後頭葉(こうとうよう):視覚や視野に関係
認知症の診断:CTやMRI、脳血流SPECTなどによる画像診断
認知症を早期に診断する場合、問診や家族からの話、神経心理検査などから得られる臨床所見だけでは診断に苦慮することは多いと考えられます。より正確な診断のためにCTやMRI、脳血流を知るSPECTなどが行われます。
CTやMRIは脳の特定部分の萎縮(脳の縮み)の程度を主に観察します。また梗塞や出血、水頭症などの変化も分かります。しかし脳の萎縮がはっきりしない場合もあります。その場合、脳血流を観察するSPECT(スペクト)の所見を加えることで、より正確な診断に至ることができます。
脳の各部位の異常と認知症の関係
脳の異常所見としては、①CTやMRIによる萎縮、②SPECTによる脳血流低下の2つに分けることができます。おおまかに脳の異常所見のみられる部位と認知症の種類について、次のように考えることができます。
前頭葉 | :前頭側頭型認知症 |
側頭葉の海馬 | :アルツハイマー型認知症 |
頭頂葉の後帯状回、楔前部 | :アルツハイマー型認知症 |
後頭葉 | :レビー小体型認知症 (後頭葉は視覚に関係していて、レビー小体型認知症の幻視に関係しています) |
*脳血管型認知症は脳梗塞や動脈硬化により起こる血流障害、脳出血が原因で起こるもので、前頭葉・頭頂葉・側頭葉など脳のどの部位の障害でも起こる可能性があります。
認知症の種類
1アルツハイマー型認知症
日本で一番多い認知症です。「物忘れ」で始まり、ゆっくり進行します。レビー小体型認知症が「沈んだうつ状態」であるのに対して、アルツハイマー型認知症ではどちらかと言えば「あっけらかん」とした印象です。
原因はまだはっきりと分かっていませんが、脳の神経細胞と神経細胞の間に老人斑(アミロイドβ)がたまって、脳が縮んで(萎縮)起こります。
アルツハイマー型認知症のおもな症状
新しいことを覚えられなくなり、時には出来事自体を忘れてしまいます(記憶障害)。場所や時間の判断がつかなくなるのも特徴です(見当識障害)。
これらの症状が原因となり、徘徊したり、怒りっぽくなったり、物をとられる妄想が出ることがありありますが、個人差があります(周辺症状)。症状は、「物忘れ」から始まって、ゆっくりと進行していきます。
アルツハイマー型認知症のポイント
- MRIで海馬の萎縮を認めることやSPECTで頭頂葉の血流低下を認めること
- 海馬萎縮のみられない例も存在するため注意が必要。この場合、SPECT解析で頭頂葉皮質や後帯状回、楔前部の血流低下がないか調べることが有用
- 高齢者では、前頭葉の血流低下が目立つ例でも脳血管性認知症や前頭側頭型認知症と決めつけないこと。経過や臨床症状とあわせて考えることが大切
- うつ病による症状を、アルツハイマー型認知症と間違えて診断しないこと
2脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などが原因、起きた場所により症状が異なります。
脳の血管がつまる「脳梗塞」や、血管が破れる「脳出血」などの脳血管障害が起こると、その周辺の脳の働きが低下します。障害が起きた場所が記憶に関係する部分だと、認知症の症状が出ます。
脳血管性認知症のおもな症状
脳血管障害を起こした場所や回数、障害の程度によって、症状が異なります。認知症の症状以外に、尿失禁、言語障害、手足のまひなどが起こることもあります。
軽い脳梗塞をくり返すことが多く、その場合は症状は階段状に進行します。アルツハイマー型認知症を伴う場合もあります。
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