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学校生活で心突然死を予防するために

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学校生活で生徒が突然意識を失って倒れたとき、即座にどのような対応を行うかどうかは、生徒の生死を左右するだけでなく、後々の責任問題にまで発展しかねないたいへん重要なことです。

心肺蘇生法や自動体外式除細動器(AED)の使い方にふだんから慣れておくことは言うまでもなく重要なことです。しかし、知識や技術として習熟していることと、いざ実際にそういう場面に遭遇したときに適切に対応することとは別問題です。そういう場面に慣れていないと、実際にはあわててしまって適切な対応ができるか疑問に感じることがあります。その理由は、生徒が意識を失って倒れたとき、心肺蘇生やAEDが必要かどうか判断するには、医学的な経験が必要とされるからです。除細動するかどうかAED自身が判断できますが、器械を操作するのは他でもないその場に居合わせた人間です。

新聞に報道された心突然死の実例を挙げて、問題点と対応策を考えてみましょう。

「女子児童死亡、心肺蘇生法行わなかった学校」という見出しで報道された実例です。

■○○新聞(抜粋)

市立小学校の女子児童(当時11歳)が駅伝の校内記録会中に倒れ、死亡した事故で、医師や救急職員らによる検証委員会は、学校側の呼吸や脈拍の確認が不十分で「心肺蘇生実施の機会を逃したのは極めて残念」とする報告書を発表した。ただ、心肺蘇生法が行われなかったことと死亡との因果関係については「死因を特定できず、わからない」とした。市教育委員会は不適切な対応を認めて謝罪した。

女子児童は校庭内で1キロを走り終えた直後に倒れ、翌日に病院で死亡した。学校側は、呼吸も脈拍もあると判断し、自動体外式除細動器(AED)を含む心肺蘇生法を行わなかった。

検証委は、救急隊の到着時に女子児童が既に心肺停止状態だったことを重視。心肺停止時に起きる「あえぎ呼吸」を教職員が正常の呼吸と誤認した可能性があるとした。現場にいた9人の教職員らの間で「けいれんがあった」などの情報が共有されず、呼吸や脈拍を継続的に観察しなかったことを問題点として挙げた。

今後、各学校の危機管理対応マニュアルを見直し、実践的な訓練を行うことや、全教職員が蘇生法の技能向上に努めることなどを市教委に提言している。

■××新聞(抜粋)

(時間経過が詳しく記載されています)

15時59分 校庭で、1000メートルの駅伝の記録会がスタート
16時04分 女子児童がゴール直後に倒れる。教職員らがけいれんと呼吸を確認。担架に乗せて保健室へ
16時08分 保健室に到着。呼び掛けに反応しないため救急要請。養護教諭が呼吸を確認。脈拍もあるとの判断からAEDを使用せず
16時15分 救急隊が到着。女児は心肺停止状態で心肺蘇生法を開始
16時28分 救急車が現場を出発、病院へ

 
事故をめぐっては、女児が倒れた直後、「呼吸がある」として教諭らが校内に設置されている自動体外式除細動器(AED)を使用しなかったことが問題視されている。検証委は、学校側の対応について「正常な呼吸の有無の確認と脈拍の確認に問題があった可能性が推測される」としながらも、「人は死亡する前に通常とは異なる、あえぐような呼吸をすることがあり、医療従事者でない教職員が正常な呼吸の有無を短時間で判断することは難しい」と指摘。その上で全教職員がAEDの使用など心肺蘇生法の技術向上に努めるべきだとした。

市教委は検証委の報告を受け、水泳中や長距離走後など、事故の状況別に対応した危機管理マニュアルを作成するほか、学校の安全や健康対策について年数回検証を行う検討会議を設置する方針。

【参考】

(救急蘇生法の指針2010より)

Q22:心肺蘇生における「反応」とは何か?

心肺蘇生における「反応」とは、生命徴候としての応答を意味する。心停止が疑われる傷病者に対しては、肩をたたく、大声で呼びかけるなどの刺激に対して目を開ける、体を動かす(痛み刺激に対する逃避反応などを含む)など目的のある仕草が認められた場合には、「反応がある」とみなす。一方、心停止直後には死戦期呼吸やけいれんなどの動きが認められることがあるが、これらには刺激に対する目的のある応答ではないので、「反応」とはみなさない。肩をたたくなどの刺激に対する反応の有無は、心肺蘇生を行うか行わないかの重要な指標なので、死戦期呼吸やけいれんなどをもって「反応がある」とみなすことのないように指導する。

Q28:「普段どおり」でない呼吸はすべてが死戦期呼吸か?

「普段どおり」でない呼吸には、死戦期呼吸以外の異常な呼吸様式も含まれる。これらには心停止でない傷病者の呼吸様式も含まれているが、市民が死戦期呼吸を見分けることは困難なので、「普段どおり」でない呼吸はすべて心停止の徴候とみなす。

Q29:死戦期呼吸の理解を助けるためにはどう説明したらよいか?

激しく泣いたあとの子どもに時折みられる、しゃくりあげるような不規則な呼吸は、よくみる呼吸様式のなかでは死戦期呼吸に類似していると説明するとよい。しかし言葉だけで理解を得ることは難しいため、呼吸の評価方法を指導するさいには、教材のビデオを見せる、あるいは指導者が死戦期呼吸を実演するなどの工夫が望まれる。

【解説】

意識を失って倒れた瞬間から3〜4分以上経過すると脳の回復が難しくなります。ここでは正しい対処法を解説します。注意すべきは、すべての不整脈由来の意識消失にAEDが有効ではないことです。

16時04分 女子児童がゴール直後に@倒れる。教職員らがAけいれんと呼吸を確認。B担架に乗せて保健室へ

@倒れる

@倒れる → すぐにげんこつで胸骨を強く2、3回叩く → 同時にAEDを現場に持って来るように大声で頼む → AED到着までその場で胸骨圧迫を試みる

即座に「げんこつで胸の真ん中(胸骨)を叩く」ようにします。意識消失を伴う不整脈の原因が心室細動(VF)や心室頻拍(VT)のときはAEDが有効ですが、心臓の電気活動が全くない心静止(心電図でフラット、電気活動がない状態)ではAEDは作動しません。この場合は、心マッサージ(胸骨圧迫)を正しく行うことが大切ですが、技術的に難しい場合もあります。すぐに2、3回げんこつで胸の真ん中(胸骨)を強く叩いて刺激すると、直後に心臓が正しく動き出す可能性があります。心静止だけでなく、VFやVTでもわずか数秒で回復する可能性がある簡単な方法です。

意識を失って倒れる→すぐにげんこつで胸の真ん中を2、3回強く叩く

同時に大声を出して、AEDを探して現場に持って来てもらうように頼みます。AEDのある場所や他の場所(保健室など)に運ぶのは、時間の大きなロスになります。3〜4分が勝負なのを忘れないことです。

AEDが近くにない場合もありますし、有効でない場合もあります。その場合は救急車が到着するまで、胸骨圧迫を正しく繰り返して続けることが大切です(心肺蘇生)。

心肺蘇生法について、詳しくはこちらをご参照ください。
日本医師会 救急蘇生法 http://www.med.or.jp/99/

Aけいれんと呼吸

不整脈が原因で意識消失を来したとき、静かに横たわっているわけではありません。まずこのことを知っておかなければなりません。心停止や心静止が起こると脳に血液が流れなくなります。そうすると手足にピクピクするけいれん様の動きが起こります。これを何かを払いのけるような目的のある手足の動きと誤解しないことが大切です。

さらに分かりにくいのが呼吸です。脳の血液の流れが悪くなると、脳は酸欠から逃れるために無意識にあえぐような呼吸をするようになります。簡単に言うと、心臓が止まっても呼吸はしばらくの間続きます。臨終に立ち会う機会の多い医療従事者であれば経験的によく知っていることですが、一般の人には理解しがたいことです。いわゆる「あえぎ呼吸(死戦期呼吸)」を心臓が動いているときの自発呼吸と間違えないことです。

B担架に乗せて保健室へ

心肺蘇生法(胸骨圧迫)は現場で行うのが原則。心肺蘇生法=AEDではないことに注意すべきです。AEDが手元になくても、正しく心肺蘇生法が行われると救命できる可能性が高いのです。学校ではAEDの置く場所は決まっているわけですが、AEDは保健室で行うものではなく、一秒を争いながら現場で行うべきものです。

このような対応がてきぱきと行えるかどうかは、個人差が大きいのも事実です。医療従事者は指導者の下に経験を積むことができます。しかし、一般にはしり込みしてしまうこともあるでしょう。海外では心肺蘇生法を小さい頃から学校で練習すると聞いたことがあります。ふだんから心肺蘇生に慣れ親しむ環境作りが、心突然死の予防につながります。

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