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パズルで分かる不整脈

上室性期外収縮 または 心室性期外収縮

規則正しく秒針のようにうっていた脈が一瞬途切れる、こうした脈がとぶ不整脈のことを期外収縮といいます。

脈がふつうのリズムよりも早く出現するため早期収縮と呼ぶこともあります。もっとも一般的にみられる不整脈の一つです。

自分で分かる期外収縮

ほとんどの期外収縮は自覚症状はありません。偶然、脈をとっていて脈がときどき触れなくなる、飛ぶのに気がつくことがあります。

期外収縮の自覚症状はさまざまで、人によって感じ方も異なります。どきっとする、胸が一瞬重くなる、もやもやする、ドーンと大砲が響くように感じる などと表現されます。そのような時に脈をみると、脈がとんでいることで期外収縮と判断されることが多いようです。上室期外収縮と心室期外収縮とでは、自覚症状の差はありません。

少し詳しい説明

脈が触れなくなる不整脈は期外収縮ばかりではありません。洞房ブロックや房室ブロックという不整脈でも、脈の間隔が長くなる結果、秒針のように規則正しくうっていた脈がしばらく触れなくなります(2~3秒くらい)。
洞房ブロックや房室ブロックでは、約4秒以上触れなくなると(心停止を起こす結果)、フーとするめまい感や失神発作を起こすことがあります。これらの不整脈では動悸(ドキッと感じる)はあまり起こりません。

期外収縮は怖いですか?

期外収縮は一般的には怖くない場合がほとんどです。とくに上室性期外収縮は正常の人でも多くみられます。

ふつうは期外収縮が出ていても自覚症状がない場合がほとんどです。たまたま自分の脈をとってみて、ときどき脈がとぶことからおかしいなと感じる人がいます。しかし、自覚症状がない場合には、気にならないで放っておく場合がほとんどです。

これからやや詳しく期外収縮について述べていきますが、ほとんどの期外収縮は(一部の例外を除いて)心配のないことを忘れないでください。

期外収縮の心電図の例

期外収縮には2種類あります。心電図で正常の波形と比較して、期外収縮の波形が同じ場合を、上室性期外収縮と呼びます。一方、期外収縮の波形が大きく異なる場合を、心室性期外収縮と呼びます。

上室性期外収縮(心電図1)

上室性期外収縮は一つ一つの単発で出ることが多いのですが、連続して現れることがあります(これをショートランといいます)(心電図2)

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(心電図1)上室性期外収縮
心電図1上室性期外収縮(心電図2)ショートラン
心電図2ショートラン

心室性期外収縮(心電図3)

心室性期外収縮は心電図の波形が大きく異なるため、心電図が記録されれば診断は簡単です。多くの場合、心室性期外収縮のすぐ後の脈は正常の脈の間隔よりもやや長く空きます。

(心電図3)心室性期外収縮
心電図3心室性期外収縮

しかし、正常の脈の間に割り込むようにして起こる心室性期外収縮もあります(これを間入性期外収縮といいます)(心電図4)

(心電図4)間入性期外収縮
心電図4間入性期外収縮

少し詳しい説明

心室性期外収縮が一つおきに出現する場合を二段脈(心電図5)、二つおきに出現する場合を三段脈(心電図6)と呼びます。二段脈や三段脈では期外収縮の数が多くなりますが、もともと心室性期外収縮は、周期的に規則正しく出やすいため、二段脈や三段脈はいくら数が多くても心配ありません。

(心電図5)心室性期外収縮(二段脈)
心電図5心室性期外収縮(二段脈)

(心電図6)心室性期外収縮(三段脈)
心電図6心室性期外収縮(三段脈)

これに対して、心室性期外収縮が連続して2回、3回・・と続く場合をそれぞれ、心室性期外収縮の二連発、三連発・・と呼びます(心電図7)。心室性期外収縮が連続して出現する場合は、次に述べる心室頻拍につながることがあり注意が必要です。

(心電図7)心室性期外収縮二連発
心電図7心室性期外収縮二連発

心室性期外収縮が連続して長い間出現する場合、心室頻拍と呼ぶことがあります(心電図8、9)

(心電図8)心室頻拍
心電図8心室頻拍

(心電図9)心室頻拍
心電図9心室頻拍

心室頻拍は一般的には重症の不整脈とみなされます。心室頻拍に移行しやすい心室性期外収縮として、① QT時間延長、② R on Tの現象が知られています。

① QT時間の延長については、すでに詳しく述べました(3、心電図の読み方-(7)QT時間の変化から分かること)。QT時間延長は、不整脈の治療薬やその他の薬剤の副作用として出現することもあり、どのような薬剤がQT時間延長を来しやすいか、医師はよく知っておく必要があります。

(2)R on Tは、心室性期外収縮が前の心電図波形のT波の重なるようにして出現する場合で、心筋の興奮性が高まる結果、心室頻拍が起こりやすいと考えられています(心電図10)

(心電図10)R on T
心電図10R on T

心室頻拍に比べて比較的ゆっくりと心室性期外収縮が続いて出現することがあります。これを心室性固有調律と呼びます。心室性固有調律は心室頻拍に比べて、安全と考えられています(心電図11)

(心電図11)心室性固有調律
心電図11心室性固有調律

心室性固有調律とまぎらわしい心電図に心室性補充収縮があります。これは脈が不整脈のために遅くなったとき、心室から自動的にスイッチが入って遅い脈を補うように心室が収縮するのを指します。心室性期外収縮の連発にも似ていますが、心室性補充収縮では脈がややゆっくりとしたリズムで現れます。心室性補充収縮ではその前のリズムが遅いのがポイントです(心電図12)

(心電図12)心室性補充収縮
心電図12心室性補充収縮

心室性期外収縮の形が出現する時間によって異なることがあります。これを心室性期外収縮の多源性と呼ぶことがあります(心電図13は変行伝導の可能性も考えられますが、一例として掲げました)

(心電図13)多源性心室性期外収縮
心電図13多源性心室性期外収縮

ホルター型24時間心電図記録の重要性

不整脈とくに期外収縮の診断にはホルター型24時間心電図記録が不可欠です。不整脈の種類によってはせっかく検査をしても、その日に限って不整脈が出ないで記録ができなかったということが起こります。しかし、期外収縮は一日にわたってかなりの回数出ることが多いため、自覚症状がなくてもほとんどの場合にうまく記録されます。

少し詳しい説明

期外収縮の診断は量よりも質が大切です。
質的診断では、

  1. ショートランがないか、
  2. 2連発や3連発が起こっていないか、
  3. 心室頻拍や心室内固有調律が出ていないか、
  4. R on Tになっていないか? 
  5. 多源性の期外収縮になっていないか?

などの点に注意します。

期外収縮の数が極端に多くても、1 から 5 のような所見が出ていなければ心配ありません。

どうして期外収縮は起こるのですか?

大きく分けると、(1)心臓に異常のみられない一見健康人に起こる場合と、(2)何らかの心臓の病気があり(心筋症、心筋梗塞、心臓弁膜症、先天的な心疾患など)、それらが原因となって起こる場合があります。

健康人に起こる場合では、自律神経の異常によって起こることが多いようですが、原因がはっきりしないこともあります。アルコール・コーヒーなどの飲みすぎ、睡眠不足、疲労、ストレス、喫煙、加齢などが誘因になります。

少し詳しい説明

心房や心室には電気的なスイッチ(ペースメーカー)が存在します。このスイッチが規則正しく入ると、規則正しく収縮活動が起こります。何らかの原因により心臓の他の部位に異常なスイッチが存在すると、そのスイッチの異常な活動の結果、期外収縮が起こることになります。これを心房や心室の自動能亢進と呼びます。健康人で自律神経の緊張と関係した期外収縮は、自動能亢進が原因と推測されます。

また、場合によっては回帰収縮(リエントリー)で生じることもあります。リエントリーとは、正常な心臓の興奮が心臓内の異常な回路を回ってもう一度戻ってくるブーメランのような現象をいいます。

専門外来でみる慢性の心室性期外収縮のほとんどはリエントリーによる期外収縮です。つまり期外収縮、頻拍症、細動が生じるのは電気的に不安定になるような異常部位(不整脈を生じ易い細胞や回路)があるためです。異常部位は心筋症、心筋梗塞、心臓弁膜症、先天的な心疾患などの心臓病や多量の飲酒、喫煙などがあると生じやすくなります。

ある種の薬剤や抗不整脈薬自身も、新たな電気的不安定性を生じさせて、不整脈を引起す作用(催不整脈作用)がある場合もあり、注意が必要です。

自覚症状についてもう少し詳しく説明しましょう

一日に平均10万回前後心臓は収縮をくり返します。期外収縮は多い人では、2万~3万回くらい出現していることがあります。期外収縮による動悸や違和感などの症状の感じ方は千差万別です。もちろん1日数個程度の期外収縮でもはっきりと脈が飛ぶなどの自覚症状が出る方もいれば、1日何万個も出現しても全く症状のない方もおられます。健常な人でも自分の年齢数くらいは期外収縮が現れてもおかしくありません。

期外収縮の症状はさまざまで、人によって感じ方も異なります。どきっとする、胸が一瞬重くなる、もやもやする、ドーンと大砲が響くように感じる などと表現されます。そのような時に脈をみると、脈がとんでいることで期外収縮と判断されることが多いようです。上室期外収縮と心室期外収縮とでは、自覚症状の差はありません。

少し詳しい説明

心拍の間隔が期外収縮によりタイミングが変化したことを症状と感じる方や、期外収縮が生じた次の心臓収縮時の送血量(1回心拍出量)の変化を症状として感じる方もおられます。

一般の期外収縮では(間入性を除きます)、期外収縮の後に正常よりもやや長い休止期が続きます。この休止期の間に心臓に余分に血液が流れ込むため、期外収縮の次の心拍は力強く収縮することになります。これが動悸として表現される、さまざまな自覚症状の一因です。

したがって、正常心拍が現れる時期に近い休止期のタイミングで期外収縮が現れる時には、前後の心拍の出現時間に著しい差はないために、期外収縮はほとんど自覚されません。逆に短い休止期で生じる期外収縮は、起源がどこであっても、強く症状を感じます。

上室性期外収縮ではふつうは心室興奮のタイミングが変化するだけで心室内の興奮の順序は変化しませんが、心室性期外収縮ではそれが起こる場所によっては心室の興奮の順序が大きく変化し、心室の収縮する方向が大きく変化して症状をおこす可能性もあります。

検査と治療

期外収縮の治療が必要かどうかは、(1)患者の自覚症状の程度、(2)不整脈の重症度や原因となる心疾患の程度で異なってきます。

一般に不整脈の薬には安全性の高いものもありますが、特殊な薬になると危険性を伴います。また安全と思われる薬でも、高齢者では心機能を悪くして心不全を起こすこともあります。不整脈の薬剤治療には循環器科の専門医の診察が不可欠です。

期外収縮の治療の必要性を調べるために、次のような基本事項に気をつける必要があります。

  • 高血圧や糖尿病、その他の心臓病がないか? 
  • 今までに心不全や狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを起こしたことがないか?
  • 喫煙歴や飲酒歴があるか?
  • 高齢者かどうか?
  • 若い人の場合、近親者に学童の突然死などの既往がないか?

次いで血液検査、胸部レントゲン、心電図、心エコーなどの検査を行います。これらの検査は、不整脈の原因となっているかもしれない心疾患を見つけるのに必要かつ不可欠の検査です。

不整脈の正確な診断のために、ホルター型24時間心電図記録や携帯用心電図モニターで自宅の心電図を行います。

少し詳しい説明

これらの検査は不整脈診断の基本とも言えるものばかりで、このような検査なくして投薬を受けるべきではないと考えられます。一般の診療所の場合では、ほとんどの場合、原因となる心疾患を持たない無害性の期外収縮がほとんどです。

したがって一般の診療所で投薬を行う場合は、始めに述べたように心疾患はないものの、患者の自覚症状が強く、不安感を伴う場合がほとんどです。

参考までに比較的安全と思われる薬剤を列記してみます。あくまでも私見であることをお断りします。

*抗不安薬(商品名:リーゼ、セルシン、コンスタンなど)
*抗不整脈剤(商品名:リスモダン、ワソラン、シベノール、サンリズム、アスペノン、セロケンなど)

最後に

期外収縮、とくに心室性期外収縮の重症度は、医学的には患者の自覚症状の程度ではなく、すでに述べたように不整脈の重症度や原因となる心疾患の程度で決まります。不整脈の重症度の判定には、ホルター型24時間心電図記録や心臓超音波検査が不可欠です。これらの検査は一般の循環器専門の診療所で簡単に受けることができます。

一般的に言って、期外収縮などの不整脈があるからと言ってすぐに薬を処方するわけではありません。抗不整脈剤を投与することによって、ブロックやQT時間延長などにより致死的な不整脈や頻脈発作が誘発されたり、心機能抑制により心不全を引き起こすことがあります。

とくに高齢者では心機能の低下や全身の動脈硬化が進んでいること、他にも薬を内服していることが多く負の相互作用などが予測されるため、抗不整脈剤を使用するときには副作用が起こらないように、常に気をつける必要があります。

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