(6) T波の変化から分かること
T波は収縮した心臓がもとに戻るときに(弛緩)できる波です。
心肥大や強い心筋障害があると、スムーズに弛緩できないためにR波だけでなくT波にも異常が出てきます。(イラスト1)
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平坦または陰性T波
ふつうT波は上向きですが、さらにとがって高くなったり(尖鋭化)、平坦になったり(イラスト2)、下向きになったり(イラスト3)すると異常です。
肥大型心筋症では巨大陰性T波と呼ばれる、ふつうよりも先鋭で大きな下向きT波がみられます(イラスト4)。
また、肥満傾向にある人ではT波が低くなる傾向がありますが、この場合は病的とはみなされません。
後から述べるように陰性T波にST降下が伴えば、狭心症の発作や心肥大、心筋虚血が疑われ、病的な意味が強くなります。
point pointT波が平坦、下向きの時は左室肥大や心筋虚血!
上向きで先鋭なT波
次の場合には、T波が上向きでも先鋭になることがあります。
- 健常な若者
- 大動脈弁や僧帽弁の閉鎖不全症では拡張期に左室に多量の血液が逆流するため(容量負荷とか拡張期負荷といいます)、T波が上向きに先鋭になることがあります。(イラスト5)
- 高カリウム血症(ふつう腎不全で起こります)でも先鋭T波が認められます。
- とくに重要なのは、心筋梗塞の発症直後に先鋭T波が認められることがあります。
point pointT波が上向きに先鋭のときは、急性心筋梗塞や高カリウム血症!
(7) QT時間の変化から分かること
QT時間は心臓の電気的収縮時間を表しています。
QT延長は、再分極(T波)が遅れて心臓の興奮が延長していることを示しています。
QTが延長すると心室細動という重篤な不整脈が起こりやすく、突然死の原因になります。
QT時間の評価は、正確には心拍数で補正されたQTc時間で行います。(イラスト6)
学童検診ではQTc時間が450msecを超えると異常とされ、精査が行われます。
遺伝的なQT延長症候群は子どもや若者の突然死の原因になることがあります。
一部の人は生まれつき耳が聞こえませんが、約3分の1は何も症状はありません(後者をRomano-Ward症候群といいます)。
大人のQT延長症候群はある種の薬剤(とくに不整脈の治療薬など)の影響や電解質異常(低カリウム血症、低カルシウム血症)や著明な徐脈などで起こります。
point pointQT延長は突然死の可能性!
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