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血液検査で分かること

血液検査貧血の検査

血液の造られるしくみ(イラスト1)

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血液の造られるしくみ
(イラスト1)

人の体の血液中に流れている細胞は3系統に分けることができます。

  1. 酸素の運搬を行う赤血球
  2. 感染防御の担い手である白血球
  3. 止血や血液の凝固(血液が固まること)にかかわる血小板

の3つです。これらの血液細胞は、骨髄といわれる骨の内部で造られます。最近の研究の進歩はめざましく、これらの3つの細胞は源をたどっていくと、幹細胞といわれる一つの細胞から異なった分化の道をたどって造られてくることが分かってきました。

さらにこのような血液細胞の分化と成熟には、さまざまの造血因子が関与していることが分かってきました。最近はこのような造血因子を手に入れることができるようになり、赤血球や白血球の合成をコントロールし、病気の治療に役立てることができるようになってきました。

赤血球、白血球、血小板
(イラスト2)
それぞれの説明は下の目次をクリック

骨髄から血液中に流れ出てくるのは成熟した血液細胞(赤血球、白血球、血小板)で、成長途中にある細胞はふつうは現れてきません。このようにして血液中に現れた血液細胞の寿命は長くはなく、日々膨大な数が入れ変わっていきます。

1)赤血球の異常

赤血球のもっとも重要な役割は体のすみずみまで酸素を運搬することです。その機能を担っているのが赤血球の中にある血色素(ヘモグロビン)で、この血色素は酸素と結合する能力を持っています。赤血球に関する検査の第一歩は、赤血球数です。さらに血色素の量は直接測定することができます(血色素量)。また血液中で赤血球の占める体積の割合をヘマトクリットといいます。この3つ(赤血球数、血色素量、ヘマトクリット)が赤血球についての基本検査です。

さてもっともふつうにみられる赤血球の異常は貧血です。一口に貧血といってもいろいろな種類があります。貧血の原因を調べるためには、赤血球数、血色素量、ヘマトクリットと、これらから計算される個々の赤血球の容積や血色素の密度(MCV、MCH、MCHCと表示される数値です)がたいへん重要となります。

*MCV:平均赤血球容積
*MCH:平均赤血球血色素量
*MCHC:平均赤血球血色素濃度

貧血の診断

貧血は血色素量の減少として現れ、赤血球数が必ずしも減少するとは限りません。もっとも一般的な鉄欠乏性貧血では赤血球数は正常のことも多く、貧血の診断には赤血球数は正確な検査ではありません。貧血の診断のための第一歩は血色素量の減少です。

血色素量からみた貧血の診断基準

貧血の診断基準
  血色素量
男 性 14g/dl 以下
女 性 12g/dl 以下
妊 婦 11g/dl 以下
高齢者 12g/dl 以下
 

鉄欠乏性貧血について

診察室で貧血はよくみかける病気ですが、ほとんどが鉄欠乏性貧血です。鉄は赤血球の中に存在する血色素の原料として重要で、体内から鉄の欠乏する原因はほとんどが出血です。出血の原因としては男性や閉経後の女性では消化管からの出血、閉経前の女性では月経過多がほとんどです。女性が月経過多を示す場合、子宮筋腫が原因であることも多く、念のために子宮筋腫がないか調べておく必要があります。子宮筋腫は内科でも腹部エコーで容易に検査ができます。

赤血球の原料である鉄が不足すると、できあがった赤血球は粗悪品となります。健康な状態に比べて、赤血球が大小不同になったり、変形したりします。鉄欠乏性貧血では一般に赤血球は小さくなりますが、数は正常のことが多くあります。貧血が高度になるにつれて、やがて数も少なくなります。したがって鉄欠乏性貧血の診断のためには、血色素量が減少していることと、赤血球が小型であることが診断の助けになります。少し詳しい検査では、赤血球数、血色素量、ヘマトクリットとともに、MCV、MCH、MCHC が測定されます。

これらは赤血球数、血色素量、ヘマトクリットから計算される数値で、個々の赤血球の容積と血色素の密度を示します。鉄欠乏性貧血ではいずれも低値を示しますが、簡単には原料である鉄不足のため、赤血球が小さくやせていることを意味しています。

鉄欠乏性貧血の診断のポイント

  1. 血色素量とヘマトクリットが低値であること(赤血球数は正常のことも多い)
  2. 赤血球が小さくやせていること(MCV、MCH、MCHCが低下している)
  3. 赤血球が大小不同を示したり、奇形赤血球を伴うこと
     

血色素量からみた女性の鉄欠乏性貧血の重症度(私見)

鉄欠乏性貧血の重症度(私見)
血色素量  
12g/dl 以上 正 常
10~12g/dl 軽度の貧血
8~10g/dl 中程度の貧血
8g/dl 以下 重度の貧血

ちなみに本院でもっとも重症の鉄欠乏性貧血の例では、2g/dlという信じられないほどの低値を示しました。子宮筋腫による月経過多が原因でしたが、徐々に貧血が進行したため貧血症状に気がつかないまま放置されてました。さすがに来院されたときには、顔面蒼白でむくみや息切れを訴えられましたが、それでも日常生活では主婦としての仕事をきちんとされていました。

また初老の男性で、ある時期から急に鉄欠乏性貧血が進行してきました。胃カメラでは胃ガンが発見されました。このように鉄欠乏性貧血と診断された場合は、どこかに出血源がないか検査しておくことは病気の早期発見のために重要です。

高齢者の貧血について

高齢になるにつれて血色素量の減少を示すことが多くなります。一般に高齢者では 12g/dl以下であれば貧血と考えることができます。高齢者では軽い貧血を示しても、定期的な検査でほぼ一定の貧血の程度を示せば心配ありません。しかし徐々に貧血が進行する場合には、鉄欠乏性貧血だけでなく、さまざまな原因を考慮しながら検査を進めていくことが必要です。

2)白血球の異常

白血球は血液中だけではなく、組織にも移行してさまざまな生体防御に機能しているといえます。白血球はいくつかの種類に分けられますが、種類に応じて特有の機能を担っています。

好中球と呼ばれる白血球は、細菌などの異物を認識して好中球の中に取り込んで(貪食)、殺菌するという大切な機能を果たしています。

好酸球は好中球と同様に貪食殺菌作用を有していますが、好酸球の殺菌機能は一般の細菌に対するよりも寄生虫に対する作用が特徴です。またアレルギー疾患の発病にも深く関与し、アレルギー反応に際して好酸球から放出されるさまざまの物質は、組織を傷害するという困った作用も持っています。

好塩基球は刺激に対して中に含まれるさまざまな物質を放出し、アレルギー反応に関与しています。

単球は組織に移行してマクロファージと呼ばれますが、この細胞は異物に対して活発な貪食能を示します。異物を細胞内に取り込んだ後に破壊・殺菌作用を示すだけでなく、異物を貪食・処理してリンパ球にバトンタッチすることにより免疫機能を促進するという役割を持っています。

リンパ球は免疫機能の中心的な役割を担っています。免疫機能とは外部からの異物(ウィルス、細菌など)や内部からの異物(体内でかってに生じる不必要な物質)に対する排除機能といえます。リンパ球そのものが免疫機能を発揮するものや(T細胞といいます)、リンパ球抗体を産生して免疫機能を発揮するもの(B細胞といいます)などがあります。

白血球分類とか白血球分画と呼ばれる検査は、これらの5種類の細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球)の割合を%で表したものです。白血球数の増加・減少をみた場合には、白血球の分類が重要で、とくにふつう認められない異常な白血球が増加した場合には診断的価値があります。

白血球の増加・減少

白血球の異常

健康診断などで軽い白血球の増加や減少をみることがあります。原因をはっきりさせることが困難なことも多く、次のような場合は心配ないものと考えられ、経過観察だけでよいと思われます。

  1. 白血球数が3,000~4,000/μlあるいは9,000~15,000 /μlで、白血球分類に異常がない
  2. 赤血球数、血小板数が正常である
  3. 明らかな臨床症状、基礎疾患がない

3)血小板の異常

血小板は止血のために重要な役割を果たしています。血小板が減少すると、皮膚出血(紫斑、点状出血)や鼻出血を起こしやすくなります。

血小板数の増加と減少

血小板数の異常

参考文献:
ⅰ)池田康夫ら監修:血液疾患診療マニュアル.日本医師会、2000.
ⅱ)高久久麿総監修:外来診療のすべて.メディカルビュー、1999.
ⅲ)河合忠、水島裕監修:今日の臨床検査2001-2002.南江堂、2002.

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