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分かりやすい動脈硬化

3.プラーク形成-血管平滑筋細胞の役割

Dr.みやけ

動脈硬化巣では血小板、内皮細胞、マクロファージ、平滑筋細胞、T-リンパ球などのいろいろな細胞の病的な反応像が認められます。

これらの細胞は、冠動脈危険因子である高コレステロール血症、高血圧症、喫煙、糖尿病などを刺激として活性化されます。

いろいろな危険因子により内皮細胞が活性化されると、血液中の単球が内皮細胞の表面に接着し、内皮細胞に侵入するようになります。ここに過剰のLDL(悪玉コレステロール)が存在すると、単球はマクロファージへと成熟・分化し、泡沫細胞を形成するようになります。(図1、2)

マクロファージと泡沫細胞の形成 図1マクロファージと泡沫細胞の形成

プラークの変化 図2プラークの変化

正常の中膜の平滑筋細胞は収縮する機能を担っています(収縮型)。何らかの刺激、たとえばPDGF(血小板由来増殖因子)など、が内膜側から与えられると、この平滑筋は合成型に変換します。合成型は内弾性板を超えて内膜に遊走し、増殖しながら周囲に結合組織を分泌し、内膜肥厚を造りあげると考えられています。PTCA後(図3)の再狭窄は平滑筋細胞が主体であることが知られています。

PTCA後 図3PTCA後

中膜から遊走した平滑筋細胞は血管内腔側から、ちょうどマクロファージ由来のプラークを囲むように増殖し、プラークの表層は内皮細胞下に数層の平滑筋細胞により保護、補強された形となります。しかし高脂血症が存在し続けると、平滑筋細胞も泡沫化してしまい、プラーク側から血管内腔表層に向かって泡沫化し、プラークの拡大が進行することになります。

動脈硬化巣の初期病変において、内膜でマクロファージだけでなく、平滑筋が脂質を貧食している様子が認められます。したがって平滑筋細胞が泡沫化するためには、その形質が転換して、マクロファージ様の細胞になることが必要です。 (図4)

図4動脈硬化巣の初期病変

M-CSF(マクロファージ・コロニー刺激因子)は単球-マクロファージの増殖や分化を刺激する因子ですが、血管壁を構成するすべての細胞から分泌されることが分かっています。
中膜に存在する平滑筋細胞は、PDGF受容体のみが発現してM-CSFは出現しないのに対して、内膜平滑筋細胞ではM-CSF受容体が出現して、平滑筋細胞がマクロファージに成熟・分化するためのM-CSFの作用を受けることが明らかになりました。
M-CSFなどの作用により、内膜平滑筋細胞がマクロファージ様細胞に分化し、さらに動脈硬化が進展すると考えられます。

参考文献:
1)松澤佑次監修.プラークの予防、安定化を目指して.日医雑誌 vol.121 no.7 PY1-4.
2)寺本民生ら監修.わかりやすい動脈硬化.ライフサイエンス出版.2002.

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■分かりやすい動脈硬化

  1. 冠動脈硬化とプラーク
  2. プラーク形成-血管内皮細胞と単球の役割
  3. プラーク形成-血管平滑筋細胞の役割
  4. プラークの性状
  5. プラークの不安定化-プラーク破裂
  6. プラークの不安定化要素-酸化LDL
  7. プラークの安定化-内皮細胞由来NO
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  9. プラークの破裂と急性冠動脈症候群
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