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パズルで分かる不整脈

洞房ブロック、洞停止またはブロックされた上室性期外収縮

洞房ブロック、洞停止、ブロックされた上室性期外収縮

いずれもしばしば起こる珍しくない不整脈ですが、ときに「ドキン」と感じることがあります。自覚症状からは、上室性期外収縮や心室性期外収縮と区別ができません。心電図を記録して初めて診断できます。

脈がとんだ後、とんだ分だけ脈と脈との間隔がふつうより少し長くなります。少し長くなった分だけ、心臓に帰ってくる血液量が多くなります。したがって、脈がとんだ直後の心拍は通常よりも力強くうつことになりドキンと強く感じます。場合によっては、からだが揺れるほど ドキン と強く感じることがあり、そうなるとたいへん不安な気持ちになります。それでは脈がとぶときにはいつもドキンと感じるのでしょうか? そうではありません。ふつうは脈がとんでも気がつかないことがほとんどです。ドキンと感じるのは、ごくわずかな脈のとぶタイミングの違いによって起こるものなのです。

少し詳しい説明

(心電図1)上室性期外収縮
(イラスト1)刺激伝導系

(イラスト1)心収縮のスイッチとなる規則正しい電気刺激は心房内のどこからでも発生しますが、ふつうは洞結節から発生します。洞結節から発生した電流は心房内を通り、房室結節に達し心電図のP波ができます。P波があれば、電流が洞結節から房室結節に流れたことが分かります。房室結節からは左室には左脚、右室には右脚という電線が出ています。電流が左脚・右脚に流れると心臓は収縮し、心電図にR波(QRS波)が記録されます。収縮した心臓は弛緩してもとに戻ります。このとき心電図ではT波ができます。

洞停止はスイッチである洞結節からの刺激発生がないもの、洞房ブロックは洞結節にスイッチが入っても、洞結節から房室結節までの心房内の刺激伝達ができないものを指します。いずれの場合も心房内に電流が流れないためP波は欠落して記録されません。このように両者の機序は少し違いますが、心電図はよく似ています。 (イラスト2)

(イラスト2)洞停止・洞房ブロック
(イラスト2)洞停止・洞房ブロック

洞停止ではスイッチである洞結節の機能不全が起こり、スイッチが不規則に入ることになります。そのため、波形の欠落の間隔は正常のスイッチの間隔とは無関係に不規則になりがちです。

洞房ブロックでは、スイッチである洞結節からの規則正しいリズムは崩れませんが、電気が心房内でブロックされるためP波ができません。このときスイッチは規則正しく入るわけですから、欠落の間隔は整数倍になります。

注意:洞停止でもたまたま欠落の前後が整数倍になることもあるため、区別できないことがあります。 不規則な場合は「洞停止」と言えますが、整数倍の場合は「洞停止か洞房ブロック?」となります。

ブロックされた上室性期外収縮ではP波は記録されますが、P波に続くR波が記録されません。まず上室性期外収縮の例です。 (イラスト3)

イラスト:上室性期外収縮
(イラスト3)上室性期外収縮

上室性期外収縮は洞結節の規則正しいリズムが乱れて、やや早くに発生したものです。上室性期外収縮のP波出現は、正常のP波間隔よりも短くなります。このためP波に続くR波は、その前のT波に重なりやすくなります。心臓が弛緩するときにできるT波は心臓の興奮が冷めるときで、一時的に心室内の電気伝導性が低下しています。そのため上室性期外収縮では心室内で電流がブロックされやすいのです。これがブロックされた上室性期外収縮です。 (イラスト4)

(イラスト4)ブロックされた上室性期外収縮
(イラスト4)
ブロックされた上室性期外収縮

よく見るとT波に重なったP波が観察できるはずです。P波が分かりにくくてもT波の形が少しいびつに変形していることで、P波が重なっていることが分かります。「ブロックされた上室性期外収縮(blocked APC)」は日常の診療でしばしば認める所見ですが、動悸の原因になり得るものです。

ポイント

  1. 洞停止では、脈の欠落はP波間隔とは無関係に不規則
  2. 洞房ブロックでは、脈の欠落はP波の間隔の整数倍
  3. ブロックされた上室性期外収縮では、よく見るとP波が記録されている

洞停止と洞房ブロックのどちらも徐脈となりますが、約5秒間以上スイッチが入らないとその間心臓が止まり、脳への血流が途絶えます。そうするとフーとしたり、ひどくなると失神発作を起こします。「アダムス・ストークス発作」と呼びますが、ペースメーカー植え込みの対象となります。 (イラスト5)

(イラスト4)ブロックされた上室性期外収縮
(イラスト5)
アダムス-ストークス

房室解離とは?

正常ではメインスイッチである洞房結節の刺激が心房に伝わり、この刺激が引き続き房室結節を通って心室に伝わります。つまり心房P波→心室QRS波で、回数も同一で、その間隔も一定です。房室結節には、メインスイッチの洞房結節が正常に作動しなかったときのために予備スイッチがあります。このような予備スイッチは、房室結節だけでなく心室内にも存在します。

心房と心室が異なったペースメーカーにより支配されている状態を房室解離といいます。房室解離は、房室結節や心室からの電気刺激頻度(QRS波)が洞房結節からの刺激頻度(P波)より多くなったときに起こりやすくなります。

房室解離は洞房結節の機能低下により心房側の刺激頻度が低下したか、房室結節や心室内の過敏性亢進などで電気刺激頻度が増えたことで、房室伝導は悪くなくても心室側が心房側からの刺激を待たないで独自に興奮を始め、心房性P波回数≦心室性QRS波回数の状態となっているものです。 (イラスト6)

イラスト:房室解離
(イラスト6)房室解離

房室解離と完全房室ブロックとの違い

房室結節の機能不全のために、心房からの刺激が心室に伝わらない(ブロックされた)状態を完全房室ブロックと呼びます。予備スイッチである房室結節からの電気刺激は(QRS波:約40回/分)、洞房結節からの刺激頻度(P波:個人差がありますが約70回/分)よりも少ないため、完全房室ブロックではP波は正常で、QRS波は少なくなります。 (イラスト7)

イラスト:完全房室ブロック
(イラスト7)完全房室ブロック

ポイント

  1. 房室解離では、QRS波の回数がP波の回数よりも多い。QRS波の回数が約70回/分くらいでほぼ正常に近い
  2. 完全房室ブロックでは、P波の回数がQRS波の回数よりも多い。QRS波の回数は約40回/分と少ない
  3. wideQRS型の頻拍を認めた場合、房室解離を認めれば心室頻拍と診断できる。変行伝導を伴う発作性上室性頻拍との鑑別に重要である

洞不全症候群とは?

洞不全症候群では、主に心臓のメインスイッチである洞房結節(洞結節とも呼ばれます)の働きが低下することにより脈が遅くなり、血流が低下します。そのために脳、心臓、腎臓などの臓器の機能不全が現れる病気です。

洞不全症候群はⅠ群~Ⅲ群まで分けられています。

  • I群「特定原因のない洞性徐脈(HR<50/min)持続性洞性徐脈」
  • Ⅱ群「洞停止」「洞房ブロック」
  • Ⅲ群「徐脈頻脈症候群」

Ⅰ、Ⅱ群のほかに心房粗動、心房細動、発作性上室頻拍といった頻脈を伴うものです。心房細動の後に脈が正常の洞調律に戻り、その後すぐに洞停止になった場合、失神する可能性があります。

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