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どうき-胸や背中の痛み

どうきといっしょに胸や背中の痛みを生じたときには、いろいろな病気を区別しなければなりません。狭心症心筋梗塞肋間神経痛逆流性食道炎胆石による胸痛肺塞栓症 などが日常の診察でしばしば遭遇する病気です。

注意:これらの病気は(肺塞栓症を除いて)どうきよりも、痛みのほうがはるかに重要な症状です。

狭心症

狭心症には労作性狭心症と安静時狭心症(冠れん縮性狭心症)があります。(イラスト1)

(イラスト1)狭心症血管断面
(イラスト1)狭心症血管断面

労作性狭心症は、心臓の血管(冠動脈といいます)の動脈硬化が原因で起こります。労作性狭心症では、急いで歩いたとき、階段を昇ったとき、自転車に乗ったときなど運動時や、興奮したとき、重いものを持ち上げたときに、胸の前のあたりに締めつけるような圧迫感や痛みを生じます。締めつけられる圧迫感は、顎や歯ぐき、左肩にも広がることがあります。運動を止めると圧迫感は、2~3分くらいで治まります。

安静時狭心症(冠れん縮性狭心症)は日本人に多くみられます。早朝の安静時に起こる特徴があります。労作性狭心症よりも長く持続し、10~30分間またはそれ以上の間、胸痛や圧迫感が続きます。一度起こると毎朝のように起こることが多く、しばらく続くと発作は起こらなくなります。労作性狭心症とは早朝安静時に起こりやすいこと、持続時間が長いことから区別できます。

安静時狭心症は、比較的軽い動脈硬化をベースにして、局所の血管の反応性が亢進して、血管が部分的にけいれんの様に収縮して起こります(冠れん縮といいます)。れん縮が収まると、動脈硬化は軽度のため、日常生活には支障はありません。

心筋梗塞

心筋梗塞は、労作性狭心症と関連が深いです。労作性狭心症は、動脈硬化で血管は細くなっているものの、まだ動脈硬化の部分に血栓ができていない状態(安定プラークといい、心筋梗塞を起こしにくい状態)です。
しかし安定プラークも長くは続かず、血流や血圧などの力によって、プラーク(動脈硬化の部分をプラークといいます)が破れると、そこに血栓が形成されます。血栓が完全に血管を閉塞すると、血流が遮断されて、心筋梗塞を起こします。

急性冠動脈症候群

血栓ができても不完全な閉塞状態では、そこを流れる血流が不安定になり、不安定狭心症と呼ばれる胸痛発作を起こすようになります。胸痛の程度が強くなり、発作時間も長くなります。軽い運動や安静時でも、しばしば発作が起こるようになります。不安定狭心症は切迫心筋梗塞とも呼ばれて、いつ心筋梗塞を起こしても不思議ではない危険な状態です。

不安定狭心症も心筋梗塞も、安定プラークが破綻して血栓が形成された危険な状態であることから、あわせて急性冠症候群と呼ばれます。 (イラスト2)

(イラスト2)急性冠動脈症候群
(イラスト2)急性冠動脈症候群

逆流性食道炎

逆流性食道炎はふつうは胸やけとして自覚症状が起こりますが、胸の痛みもしばしば起こり、狭心症と区別に困ることがあります。逆流性食道炎では顎や歯ぐき、左肩に痛みが広がることはなく、前胸部の比較的狭い範囲の痛みとして自覚します。運動とは関係なく、時間を問わず起こりますが、食後や横になっているときに起こりやすくなります。

胆石

胆石の発作も狭心症と同じように胸の痛みが起こることがあります。しばしば歩行時にも短時間起こることがあり、労作性狭心症と区別が出来ないことがあります。しかし、胆石があるかどうかは、腹部超音波検査で簡単に分かります。

解離性胸部大動脈瘤

解離性胸部大動脈瘤は胸痛や背部痛で発症することが多く、心筋梗塞との鑑別がたいへん重要です。胸部から背部にかけて引き裂かれるような痛みが特徴とされますが、痛みの性質だけからは心筋梗塞と区別することは困難です。

心電図変化や胸部レントゲンや胸部CTで胸部大動脈の異常な拡大が決め手となります。このような検査を組み合わせると診断は容易ですが、心筋梗塞と同様に緊急を要する重要な疾患です。

胸膜炎

胸膜炎は肺を被っている胸膜の炎症が原因で起こります。胸膜炎にはかぜなどに引き続いて起こるものや、いろいろな病気に関連して起こるものがあります。

若い人が胸痛を訴えて、胸部レントゲンを撮影した結果、胸膜炎と診断されることがあります。若い人ではかぜをこじらせて起こることが多いのですが、さし込むような痛みは次に述べる肋間神経痛とよく似ています。

肋間神経痛

肋間神経痛も胸膜炎もどうきはあまりなく、おもに痛みを生じます。痛みは一ヶ所だけさし込むように痛くなります。肋間神経痛では痛みの場所を軽く叩くと、響くような痛みを起こすため、診断は容易です。

肺塞栓症

肺塞栓症は若い年齢でも手術や出産、経口ピルの内服、血液凝固の異常などによって起こることがあり、たいへん重要な病気です。旅行者血栓症、エコノミー症候群などによって起こる深部静脈血栓症とも深い関係があります。

重要な病気であるにもかかわらず、診断のむつかしさから見逃されることがあります。主要な症状は急に起こったときには、突然の呼吸困難が多く、強い全身倦怠感、胸部痛やときに失神を起こすこともあります。慢性の場合は(小さな血栓が繰り返し塞栓を生じさせてきた場合)労作時の息切れが多く、ときには咳・血痰も認められます。

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