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分かりやすい動脈硬化

10.プラークの破裂と血栓形成

Dr.みやけ

動脈硬化の初期変化はごく小さな斑点状の脂肪沈着として動脈表面に肉眼的に認められます。

この病変は脂肪線条(fatty streak)とよばれ、10歳代のヒト動脈標本でも認められるます。このことは粥状動脈硬化が長年の経過を経ながら進行することを意味しています。
脂肪線条はおもにマクロファージからなるコレステロールエステルを多量に含む泡沫細胞が集合してできていることからも分かるように、動脈硬化にはコレステール代謝が深く関わっています。

脂肪線条は病変の進行とともにプラーク(fibrous plaque)に移行します。これは肉眼的には血管内腔に突出する硬い隆起性病変として認められますが、脂肪の蓄積とともに平滑筋細胞、マクロファージ、Tリンパ球の浸潤、繊維成分などから成っています。
プラークがいかにして形成され、プラークの性状やプラーク破裂がいかにして血栓形成を引き起こすかは、今までにこのシリーズの中で詳しく述べてきました。

コレステロールが動脈硬化の進行には重要な役割を果たしていますが、血栓の形成にはプラークの性状が深く関係しています。プラークには安定プラークと破裂して血栓症の危険性の高い不安定プラークが存在することをすでに述べてきました。(図1、2、3)

プラークの変化 図1プラークの変化

正常な冠動脈と安定プラーク・不安定プラーク 図2正常な冠動脈と安定プラーク・不安定プラーク

動脈硬化と血栓 図3動脈硬化と血栓

破裂しやすい不安定プラークでは、

  1. 脂質コアが大きい
  2. 繊維性被膜が薄い
  3. マクロファージの浸潤が多い
  4. 平滑筋細胞が少ない 

などの特徴がみられます。不安定プラークのできる原因を明らかにし、不安定プラークを安定化させることは急性冠動脈症候群を予防するためにたいへん重要な戦略となりますが、これらは今後の課題として残されています。

プラークには常に各種の機械的、血行動態的力が加わり、これらがプラークを破裂させる促進力、あるいは契機になっていると考えられます。心拍数、血圧の上昇、心収縮力の増強、冠血流の増加(これらはストレスなどによる自律神経の興奮によっても起こります)はプラークの破裂を起こりやすくします。

高血圧症、糖尿病、喫煙、ストレスなどの動脈硬化の危険因子はさまざまの機序を介して、プラークの不安定化や破裂に深く関係しています。コレステロールの低下療法そのものが動脈硬化の進行を予防するだけでなく、プラークの安定化に重要であることが分かってきました。
さらに高血圧症や糖尿病の治療や禁煙などの生活習慣の是正もプラークの安定化に重要な役割を果たしています。

動脈硬化の病巣に各種ストレスが加わりプラークが破裂すると、血管内皮細胞の損傷などにより血小板が活性化され、血小板のその部位への粘着と凝集が引き起こされます。血小板血栓と呼ばれますが、これは血栓形成の第一段階で血小板血栓そのものはもろいものです。
血小板血栓が形成される、血液中の凝固因子といわれるタンパク質が一連の反応を経て、最終的にフィブリンが形成されます。フィブリンは網目となって血小板血栓を包み込み、強固な血栓が形成されます。(図4)

血小板と血栓の結成 図4血小板と血栓の結成

心臓の冠動脈が血栓により血流が遮断されると急性心筋梗塞を起こします。急性心筋梗塞では閉塞した部位から末梢の血流が遮断されるため、速やかに血栓が解除されないかぎり支配領域には壊死巣(梗塞)が形成されます。

フィブリン網により形成された血栓も、初期には動脈硬化で細くなった部位で血栓形成・融解という現象をくり返すことがあります。冠動脈でも心筋梗塞の発症前に小さな血栓形成・融解をくり返すことがあります。
この時期には、軽い運動や安静時でも胸痛発作をくり返すようになります。不安定狭心症と呼ばれますが急性心筋梗塞の前兆と考えられており、不安定狭心症と急性心筋梗塞とあわせて急性冠動脈症候群と呼ばれています。(図5)

血栓の結成による病気 図5血栓の結成による病気

参考文献:
1)寺本民生ら監修.わかりやすい動脈硬化.ライフサイエンス出版.2002.

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■分かりやすい動脈硬化

  1. 冠動脈硬化とプラーク
  2. プラーク形成-血管内皮細胞と単球の役割
  3. プラーク形成-血管平滑筋細胞の役割
  4. プラークの性状
  5. プラークの不安定化-プラーク破裂
  6. プラークの不安定化要素-酸化LDL
  7. プラークの安定化-内皮細胞由来NO
  8. プラークの安定化-コレステロール低下療法
  9. プラークの破裂と急性冠動脈症候群
  10. プラークの破裂と血栓形成

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