動脈の内膜に生じた動脈硬化性の肥厚を「プラーク」と呼びます。
最近、急性心筋梗塞、不安定狭心症(切迫心筋梗塞)などの急性冠症候群の発症には、冠動脈プラークの不安定化とそれに伴う血栓形成が密接に関係していることが明らかになってきました。 (図1、2)
プラークの形成は、高コレステロール血症、高血圧症、糖尿病などの基礎疾患のほか、喫煙、肥満、運動不足、体質それに加齢などの危険因子が加わると加速されます。こうしてプラークが形成されたとしても、ただちに急性心筋梗塞や不安定狭心症などが発症するわけではありません。
病理組織学的な研究から、急性心筋梗塞や不安定狭心症の冠動脈病変部位には、巨大な脂質コアを有し、かつ繊維性被膜のきわめて薄いプラークが多く存在し、こうしたプラークには脂質コアへの直接的な亀裂で特徴づけられる「プラーク破裂(ラプチャー)」とそれに伴う血管内腔の血栓形成が高頻度に認められることが分かってきました。
プラークの破裂の誘因としては、1)プラーク自身の破裂しやすい内因的な要素と、2)血行動態などに関連した外因的な要素の二つが重要視されています。
内因的な要素としては、
- 脂質コアの大きさ-脂質コアが大きくなるほど、プラークは脆弱になり破裂しやすくなります
- 繊維性被膜の薄さ
- 被膜への炎症-マクロファージの浸潤や内皮細胞の活性化などの活動性の炎症は病変を脆弱化させ、破裂の危険を増加させます
が挙げられます。
プラークには、常に各種の機械的、血行動態的な力が加わり、これらがプラークを破裂させるきっかけになると考えられています。こうした外因的な要素としては、
- 心拍数
- 血圧の上昇
- 心収縮力の増加
- 冠血流の増加
などが挙げられます。こうした変化は高血圧症のほか、興奮やストレスによる交感神経の緊張によっても引き起こされます。
参考文献:
1)松澤佑次監修.プラークの予防、安定化を目指して.日医雑誌 vol.121 no.7 PY1-4.
2)寺本民生ら監修.わかりやすい動脈硬化.ライフサイエンス出版.2002.
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