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内臓脂肪とメタボリックシンドローム(2)

2- メタボリックシンドロームや糖尿病予備群にひそむ危険

Dr.みやけ

日常診療で狭心症や心筋梗塞を診る機会はたいへん多いのですが、ほとんどがメタボリックシンドロームか糖尿病予備群の人達に起こります。

メタボリックシンドロームと心血管病

メタボリックシンドロームと心血管病
(イラスト:メタボリックシンドロームと心血管病)

メタボリックシンドローム(糖尿病の予備群)では、内臓脂肪から出るさまざまな物質(サイトカイン)やインスリン抵抗性の亢進によるインスリン過剰分泌を介して、心臓など比較的大きな血管の動脈硬化を進めます。その結果、狭心症や心筋梗塞など心臓発作を起こしやすくなります。

事実、日常診療で狭心症や心筋梗塞を診る機会はたいへん多いのですが、ほとんどがメタボリックシンドロームか糖尿病予備群の人達に起こります。

職場健診や特定健診でメタボリックシンドロームや糖尿病予備群と指摘されても、日常生活の指導や検査を受けるために定期的に診療所を受診して頂く人は、残念ながらほとんどいません。
50~60歳代の一番リスクが高いと考えられる年代の人たちは、仕事が忙しく疲れ切っていて医療機関を受診する余裕がないというのが実際のところでしょう。これが一番問題と考えられます。

糖尿病と心血管症

糖尿病を例に取ると、心筋梗塞などの大血管症(心血管疾患)は糖尿病発症初期までに多く起こる印象があります。ある程度、糖尿病が進行してくると、意外なことに心筋梗塞などの心血管病が起こりにくくなる状態がしばらく続きます。

しかし、糖尿病歴が10~15年と長くなるにつれて、糖尿病性腎症という微小血管症が進行していきます。糖尿病性腎症が起こると、メタボリックシンドローム(内臓脂肪)とは異なる機序で心臓など大血管の動脈硬化が起こるようになります。
糖尿病性腎症が進行すると、心筋梗塞などの危険性が再び高まることになります。

糖尿病と診断された時、微小血管症と呼ばれる糖尿病性腎症や網膜症を予防することは、腎臓や目の機能を守るためばかりでなく、大血管症と言われる心筋梗塞などを予防するためにも重要です。

【少し詳しい説明】

糖尿病性腎症の診断と推算GFR

糖尿病性腎症の診断には、尿蛋白と血清クレアチニンから計算される推算GFR(1分間の腎血流量mLで、mL/min/1.73㎡と表現されます)を使います。

病 気 尿アルブミン値(mg/gCr)
あるいは
尿蛋白値(g/gCr)
GFR(eGFR)
(mL/分/1.73㎡)
第1期(腎症前期) 正常アルブミン尿(30未満) 30以上
第2期(早期腎症期) 微量アルブミン尿(300~299) 30以上
第3期(顕性腎症期) 顕性アルブミン尿(300以上)
あるいは
持続性蛋白尿(0.5以上)
30以上
第4期(腎不全期) 問わない 30未満
第5期(透析療法期) 透析療法中  

(表:糖尿病性腎症の診断)

微量アルブミンと尿蛋白

尿蛋白の評価には、微量アルブミン定量と尿蛋白定量があります。診療所で簡単に調べる尿検査では、大まかな尿蛋白の程度を調べ、±・+・++・+++のように大まかに表します。

尿蛋白定量では、正確な尿蛋白の量を調べ、尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr)で表します。

微量アルブミン(mg/gCr )は尿蛋白の一種ですが、一般の尿検査で調べる蛋白よりもより早期に尿中に出現します。アルブミン→蛋白の順に尿中に蛋白が出てきます。尿蛋白陰性でも尿アルブミン陽性であれば、腎症が進んできたことが分かります。

尿微量アルブミン量が増えると心血管死が増加するという、次のような重要な関係があります。

微量アルブミンと心血管死
(表:微量アルブミンと心血管死)

次のページで慢性腎臓病(CKD)について解説します。

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