4- 糖尿病性腎症と慢性腎臓病(CKD)の関係
慢性腎臓病の心腎相関は、糖尿病性腎症ではさらに強く認められ、深刻な状態と言えます。
糖尿病性腎症の心臓病リスク
糖尿病性腎症の生命予後が悪い原因は、心血管病のリスクとなり狭心症や心筋梗塞などによって起こる死亡をもたらすからです。
糖尿病性腎症の年次進行率と死亡率とをみた英国の2型糖尿病の研究によると、糖尿病性腎症なしから早期腎症、持続性蛋白尿、腎不全と段階的に悪化する割合は年間2~3%でした。
一方、心血管病による死亡率は、腎症のない例は1.4%、早期腎症では倍加して3%、腎不全になると20%近くが心血管病で死亡していました。
糖尿病性腎症は病期の進展につれて強い心血管病のリスクになることが分かります。日本でも同様の結果と考えられます。
慢性腎臓病と糖尿病
慢性腎臓病の心腎相関は、糖尿病性腎症ではさらに強く認められ、深刻な状態と言えます。
2型糖尿病を対象に慢性腎臓病の発症率をみた研究では、内臓肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症などの病気を持つほど、慢性腎臓病の発症率が明らかに高まることが分かりました。
メタボリックシンドロームのようなインスリン抵抗性によって起こるこれらの病気を併せて持つことが、腎臓に対する進展増悪に関与することを示す結果と考えられます。
慢性腎臓病(CKD)と糖尿病性腎症の関係は次の表で表すことができます。
慢性腎臓病は糖尿病だけでなく、高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドローム、慢性糸球体腎炎さらには加齢などによる腎機能障害が生命予後に与える影響を総合的に考えたものと言えます。
【少し詳しい説明】
腎症発症に重要な足細胞
腎臓の糸球体の足細胞にはインスリン受容体が局在します。糸球体のろか機能では、老廃物を出すのと同時に必要な物を残す選択制を足細胞が担っていると考えられています。
足細胞におけるインスリンシグナルの低下により、足細胞のアポトーシス(細胞死)を生じて糖尿病性腎症に至ります。
一方、足細胞はきわめて密な細胞と細胞とのアタッチメントを形成していて、これがうまく機能しないと蛋白尿に至ります。こうして糖尿性腎症に至ると考えられています。
高血圧などに他の病気よって起こる腎障害にも、2型糖尿病と同じようなインスリン抵抗性が存在するのではないかと考えられています。
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