(3) R波の高さの変化から分かること
R波は心臓が収縮するときの電気の流れですが、R波が高いときは電気の流れる力が強いとき、すなわち心肥大(左室肥大)の疑いがあることを示しています。
肥大した心筋は虚血を伴います。典型的な左室肥大は後に述べるように、①R波増高に、②虚血性ST-T変化を伴うようになります。(イラスト1、2)
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R波の贈高だけで、虚血性ST-T変化を伴わない場合は「左室肥大の疑い」と診断します。
point pointR波が高いときは心肥大(左室肥大)の疑い!
(4) QRS波の幅から分かること
QRS波の幅が大きく変化するのは、心室の中の電気の流れが悪くなり、時間が長くかかるときです。
①脚ブロックと、②冠動脈硬化により強い心筋の血流障害(これを心筋虚血といいます)の2つがおもな原因です。
①脚ブロック
脚ブロックでは電線である右脚や左脚の電気の通りが悪くなるために幅が広くなります。
左脚ブロックと右脚ブロックがありますが、特徴的な形から区別は容易です(イラスト3)。
右脚ブロックはごく普通にみられるものでほとんど心配ありません(イラスト4)。
しかし左脚ブロックは動脈硬化などによる心筋障害が原因で起こるもので、病的な意味を持ちます(イラスト5)。
②心筋の血流障害
高度の動脈硬化により血液の流れが悪くなり、心筋そのものが広範囲に障害を受けた場合もQRS波の幅が広くなります。
高度の心筋虚血では、Q波やS波の幅が広くかつ下向きに深くなるため、すべての誘導でQRS波の幅が広くなる特徴があります。
左脚ブロックとも右脚ブロックともいえないような、特徴的な心電図を心室内伝導障害と呼び、心筋梗塞に近い高度の心筋虚血を示しています。(イラスト6)
心筋梗塞の発作が落ち着いた後に、特徴的な幅の広いQRS波が梗塞の部位に残ることがあります。梗塞を起こした冠動脈を推測することができます。
特に胸部誘導の広い範囲で幅の広いQRS波がみられる場合には、後遺症として強い心不全が起こります。(イラスト7)
point pointQRS波の幅が広い時、脚ブロックか心筋梗塞(心室内伝導障害)!
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