> 町医者の診療メモ > (よく見られる症状と診察のポイント)発熱10~12 

町医者の診療メモ Dr.みやけの20年の経験で培われた一種の「診察のコツ」をまとめます。

(よく見られる症状と診察のポイント)発 熱 10~12

10, 発熱と頭痛・吐き気

夏季に発熱があり、頭痛と吐き気を伴う場合には、髄膜炎を考えなければなりません。しかし、同じような症状はウィルス性胃腸炎(おなかのかぜ)でも起こります。吐き気の強いウィルス性胃腸炎は、頭痛や全身の筋肉痛や関節痛を伴うことがしばしばあります。
夏季に髄膜炎とウィルス性胃腸炎の区別は大切ですが困難を伴うことがあります。ウィルス性胃腸炎でも高熱を伴うことは珍しくはありません。吐き気に下痢を伴えばウィルス性胃腸炎の可能性が高くなります。

頭痛が激しくなると吐き気を伴うのは、なにも髄膜炎に限ったことではありません。脳出血やくも膜下出血、脳腫瘍など脳外科の病気でも頭痛と吐き気は重要なサインです。
より一般的には、片頭痛や肩こりが原因の緊張型頭痛でも頭痛と吐き気を伴うことです。この場合には熱はありませんが、ふだんから頭痛持ちの人、とくに女性がかぜで高熱を生じると、頭痛・吐き気を伴いやすくなります。

急性副鼻腔炎は前額部の頭痛を生じます。鼻閉や鼻声があれば副鼻腔炎を疑いますが、頭の位置によって鼻閉が左から右、右から左へと移動するのも特徴の一つです。

発熱・頭痛・吐き気は、以上のようにごくありふれた症状です。ウィルス性胃腸炎、(かぜによる発熱を伴う)緊張型頭痛、急性副鼻腔炎などがおもな原因ですが、それではどんなときに髄膜炎を疑えばよいのでしょうか?

(イラスト)髄膜炎の診断
(イラスト)髄膜炎の診断

項部強直(neck flexion test)、jolt accentuation testなどが髄膜炎を示唆する重要なベッドサイドの所見です。項部強直の見つけ方のコツは、患者に自分の力で頭を前屈してもらうことです。
ベッドに横になってもらい、医師の手で患者の後頭部を持ち上げる従来の方法は正確ではありません。椅子に座ったままの姿勢で前屈してあごが胸につくかどうか?さらに、ベッドに両足を伸ばした姿勢で座ってもらい、自分の力で首を前屈してもらいます。
このとき両手は力を抜いてそっと両足の上に置きます。ベッドに両手をついて体を支えないようにします。

Jolt accentuation testは髄膜炎の診断のため、感度の高い検査方法です。しかし頭を左右に振るときに閉眼していないと目が回ります。また多くの患者が頭痛は増強すると答えます。
割れるような頭痛が起こったかどうか尋ねる必要があります。頭痛がそれほど強くないとき、項部強直の明らかではないときでも髄膜炎は存在します。結局、「原因不明の発熱が4日以上続くときは、常に髄膜炎も疑う」というルールを忘れないことです。

 

若い女性の微熱について

20歳台の健康な女性が、微熱を訴えて受診されることがしばしばあります。微熱の程度は37.5度を超えることはありません。夕方近くになると微熱が出て、倦怠感を感じるようになります。微熱の原因として甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や貧血、膠原病などは重要ですが、白血球数や白血球像、CRPや血沈も調べます。これらの検査で異常が認められなかったときには、心配がないこと伝えます。

ところでどうして若い女性では、微熱が出やすくなるのでしょうか?女性ホルモンの影響が考えられますが、月経の周期とは無関係なことからそうとも言いきれません。排卵後は基礎体温も高くなりますが、このときに起こる微熱はあまり気にならないようです。男性の我々には不思議に思えます。

11, 熱が続くときの血液検査

熱が続くときの血液検査で重要な項目は、赤血球数、血色素量、白血球数、血小板数、白血球像(白血球分画)、CRP、血沈がまず挙げられます。これらは診療所で比較的簡単に測定することができるため(白血球像はふつう検査センターに依頼します)、発熱のスクリーニング検査(予備検査)として多用されます。

赤血球数、血色素量

赤血球や血色素量は貧血の診断に重要ですが、発熱の原因としてはそれほど参考になりません。

白血球、白血球像(白血球分画)

発熱時には大切な検査です。白血球は顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)と単核球(リンパ球、単球)に分けられます。これらの割合はふつう%で表され白血球像(白血球分画)と呼ばれますが、白血球と%を掛け合わせた絶対数で考えることが大切です。

白血球のポイントとしては、

  1. 白血球数からみて、増加時には細菌感染症や炎症性疾患などが疑われ、減少時にはウィルス感染症などが疑われます。
  2. 日常の白血球の変動はおもに好中球の変動によるものです。細菌感染症では増加します。また、食後や興奮時、運動直後、喫煙者でも経験的に好中球増加による白血球数増加を生じます。白血球増加(10,000/µl以上)では、過去の白血球数の推移、喫煙歴、使用薬剤を調べます。また発熱や体重減少(悪性腫瘍?)の有無を尋ねます。
  3. 白血球増加が好中球増加(7,000/µl以上)の場合は、細菌感染症、炎症性疾患、悪性腫瘍、骨髄増殖性疾患(慢性骨髄性白血病など)、血管炎、急性出血・溶血、薬剤の影響(副腎皮質ステロイドの投与他)などを考えます。
  4. 白血球減少(3,000/µl以下)があるときには、過去の白血球数の推移(正常でも少ない人がいます)と感染症を起こしやすいかどうか(皮膚感染症や気道感染症など)と使用している薬剤を必ずチェックします(薬剤の副作用)。
  5. 白血球減少のうち、好中球減少(1,000/µl以下)は、ウィルス感染症、血液疾患(再生不良性貧血、急性白血病など)、膠原病などで起こりますが、薬剤の副作用を忘れてはなりません。好中球数の絶対数が500/µl以下になると細菌感染しやすくなり、100/µl以下になると細菌感染症(敗血症など)は必発です。
  6. 好酸球の基準は500~600/µlで、これを超えるこれを超えると好酸球増多となります(%による表現は無意味です)。好酸球増多では、寄生虫病、アジソン病、薬剤アレルギー、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患、アレルギー疾患、悪性腫瘍(ホジキン病など)、血管炎、骨髄増殖性疾患を考えます。また、好酸球が1,000/µl以上を超えて(3ヶ月以上)、臓器異常を伴うときには、高好酸球症候群(hypereosinophilic syndrome)の可能性があります。
  7. リンパ球増加(3,000/µl以上)ではウィルス感染症、リンパ系増殖疾患(慢性リンパ性白血病など)、マクログロブリン血症などを考えます。リンパ球減少では(1,500/µl以下)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ホジキン病、リンパ腫、薬剤(副腎皮質ステロイドなど)が挙げられますが、AIDSを忘れてはなりません。
  8. 単球増加(800/µl)は炎症性疾患(結核、心内膜炎、膠原病など)やリンパ系悪性腫瘍にみられます。
  9. 好塩基球が200/µlを超える場合には、骨髄増殖性疾患の可能性があります。
  10. 高齢者の感染症、とくに肺炎で白血球減少があると、予後不良と考えられます。
  11. 類白血病反応(leukemoid reaction)は白血球数が50,000/µlを超える状態です。白血球系の幼若細胞が出現しますが、重症感染症にみられます。

CRPと血沈(赤沈)

CRP

CRPは炎症性マーカーの代表としてよく使用され、細菌感染症、膠原病などの炎症性疾患、心筋梗塞、悪性腫瘍、手術や分娩などの組織破壊時に血中に増加します。

感染症では細菌感染でその程度を反映しますが、ウィルスや真菌感染症では上昇は軽微です。膠原病の中で、関節リウマチや血管炎では上昇し、疾患の活動性を反映します。全身性エリテマトーデス、多発性筋炎(皮膚筋炎)、強皮症、シェーグレン症候群では陰性か軽度上昇するだけです。
心筋梗塞や肺梗塞で上昇し、脳梗塞では陰性か軽度の変化です。悪性腫瘍の中では、悪性リンパ腫や広い転移がみられる場合に上昇し、白血病では陰性か軽度です。

CRPは血沈亢進に先立ち陽性化し、血沈値の改善前に陰性化します。血沈とCRPの間に乖離がみられることがあります。

血沈(赤沈)

血沈には疾患特異性はありません。血沈の測定は簡便なため、自己免疫性疾患など慢性疾患の病勢や治療効果の判定によく使われてきました。血沈の測定値は他の種々の要素の影響を受けて変化します。現在ではあくまでも補助的検査の一つとして考えられています。

血沈に影響を与える疾患としては、急性または慢性感染症、自己免疫性疾患、組織の破壊性病変(悪性腫瘍、心筋梗塞、熱傷など)、血液疾患(各種貧血、急性白血病など)、血漿タンパク異常(肝硬変、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、ネフローゼ症候群など)と多岐にわたります。

こうした疾患は、一般的には診断が困難な病気です。最終診断は専門家に任せるとして、一般の診療所では、このような病気が隠れているかどうか、外来診察の短時間の中で速やかに判断しなければなりません。つまり病気を見逃さずに、拾い上げることをまず心がけ、最終診断はそれからです。
血沈は、疾患特異性は乏しいとは言え、「何かおかしい、病気が隠れているのではないか」と疑うたいへん優れたスクリーニング検査(予備検査)です。最近は軽視される傾向にありますが、スクリーニング検査としてたいへん有用で、見直す必要を感じています。

血沈の欠点は1時間、2時間と時間がかかることです。診療所の外来では1時間も患者を待たせることは困難です。6分・9分で1時間・2時間値に相当する結果を迅速に得られる簡便法があります。比較的正確に測定できるため、患者を待たせることなく結果が得られ、たいへん便利です。

 

血沈の重要性

血沈は血漿中の赤血球が重力に従って自然に沈降する速度を測る検査で、昔から行われてきました。血沈は急性および慢性感染症だけでなく、さまざまな病態で変化する疾患特異性に乏しい検査であること、測定に1時間、2時間と時間がかかるなどの理由により、最近は敬遠される傾向にあります。炎症マーカーとしては、CRPが感度・特異度に優れているため、最近はこれらの検査がおもに使用されます。炎症反応では赤沈に比べてCRP、SAAの方が初期から陽性となり、また治癒判定に際しても速やかに陰性となります。

血沈はもはや必要のない検査でしょうか?血沈は感染症だけでなく、自己免疫疾患、悪性腫瘍、血液疾患、多発性骨髄炎など血漿タンパクの異常を示す疾患など、いわゆる難治性疾患や診断困難な疾患などさまざまな疾患で異常値を示します。
血沈の最大のメリットは、こうした診断困難な疾患を、外来で気がつくための予備検査(スクリーニング)として重要な検査ではないかと考えています。時間も最短で6分、9分で1時間、2時間値に相当する値が得られる簡便法もあります。外来の限られた時間内に、重大な疾患に気がつくための重要な検査であると思います。

12, のどが痛いとき、「水やつばが飲みこめますか?」・・扁桃周囲膿瘍、急性喉頭蓋炎とは?

かぜのとき、見逃してはならない重要なポイントがあります。扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍、急性喉頭蓋炎の3つ、さらに口腔底蜂窩織炎と咽後膿瘍の2つです。亜急性甲状腺炎も注意が必要です。

扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍、急性喉頭蓋炎はしばしば遭遇する病気です。20歳~30歳台の比較的若い年齢層に多くみられ、熱はあまり高くないことが多いのですが、ひどくなると窒息死にいたるたいへん危険な状態です。高齢者や子どもには少なく、50歳台でもまれに起こります。子どもでは似たものに仮性クループがあります。

診察室ではうるんだような声、こもったような声からこれらの病気をまず疑います。声を聞いたときに、これらの病気を疑うことが見逃さないためのコツです。自分でものどの奥が腫れて詰まるような閉塞感を感じます。
そして次に食べ物や水、つばが飲み込めるかどうか質問します。これらの病気では食べ物はもちろん、水やつばも飲み込みにくくなります。痛みのためではなく、腫れてのために飲み込めないことに注意すべきです。

口を開けてもらいのどの奥を観察します。扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍では、軟口蓋といわれる部分が赤く腫れて、のどの奥がほとんどつまりかかっているのが観察できます。喉頭蓋炎は口を開けても観察できません。耳鼻咽喉科で喉頭鏡の検査が必要となります。これらの病気は耳鼻咽喉科が専門です。多くの場合、入院が必要になります。

咽後膿瘍や口腔底蜂窩織炎はまれな病気です。これらの経験はまだありませんが、髄膜炎のときに調べる項部強直と同じ手順で、首を後屈できるかどうか、できないときは咽後膿瘍を疑い、前屈してあごを胸につけることができるかどうか、できないときには口腔底蜂窩織炎を疑うように心がけています。

亜急性甲状腺炎は、前頸部の痛みと腫脹を伴うときに疑います。これらは移動するのが特徴です。女性に多くみられ診断は前頸部に圧痛があるときに疑い、超音波や血液検査で確認します。ステロイドの内服治療を行います。


 

のどの痛み

のどの痛みはかぜではごくふつうの症状です。しかし、かぜとは異なるのどの痛みが気になって診療所に来られる方がいます。つばを飲み込んだときのどの奥の一カ所が痛む、首から指で押さえるとその部分が痛むようなときは、のどの奥にできた口内炎が原因のことがあります。口内炎は小さいことが多く、喉頭鏡でも見つけることは困難です。

状況から口内炎が疑われたときには、7日程度様子を見るように説明します。多くの場合、7日くらいたつと自然に治ってしまいます。患者は大きな病気でなくても、いろいろな体調の不良をかかえて来院されます。内科医の役目の一つは、それらの疑問に納得のいくように説明することだと思います。

町医者の診療メモ:目次へ

※このサイトは、地域医療に携わる町医者としての健康に関する情報の発信をおもな目的としています。

※写真の利用についてのお問い合わせは こちら をご覧ください。

町医者の診療メモ

町医者の診療メモ:はじめに

■(よく見られる症状と診察のポイント)発熱

  1. 発熱の4日のルール
  2. 4日以上の熱では、胸部レントゲンで肺炎を確認、血液検査を考慮
  3. 熱の出ない肺炎もある!?
  4. 発熱と咳
  5. 中・高年者の肺炎ではガンに注意
  6. 若い人の胸痛と胸膜炎
  7. 発熱の4日のルールは、肺炎以外にもいろいろな病気を見つける上で重要
  8. 尿検査は発熱の原因を調べる貴重な検査
  9. 発熱時の頸部リンパ節腫大は重要なサイン
  10. 発熱と頭痛・吐き気
  11. 熱が続くときの血液検査
  12. のどが痛いとき、「水やつばが飲みこめますか?」・・扁桃周囲炎、急性喉頭蓋炎とは?
  13. 発熱皮膚の変化(発疹や紅斑)
  14. 不明熱とは

【ひと休み】

■(よく見られる症状と診察のポイント)頭痛

■内科から見た肩こり

■めまい:脳からみためまいを中心に

■関節痛・筋肉痛と内科の病気

■血液検査からみた診断へのアプローチ

■急な胸の痛み(胸痛発作)

■いろいろある鎮痛薬

■胸部レントゲン写真から考える肺疾患


 上に戻る