橋本病は甲状腺ホルモンの分泌が低下してくる病気です。
男性の20~30倍以上女性に多く、若い世代から中高年の女性に多いのが特徴で、成人女性の約3~10%を占めると言われています。診療所で多いのは検査の機会が多い50歳代以降の女性ですが、無症状でも治療が必要と考えられる方は数多くみつかります。
(イラスト:甲状腺機能検査)
甲状腺ホルモンに関係した検査としてはフリーT3、フリーT4、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が代表ですが、通常はフリーT4とTSHを測定します。甲状腺ホルモンが不足する橋本病ではフリーT4が低下しTSHが上昇しますが、TSH 8くらいまでは様子をみてよいとされています。
橋本病は「自己免疫」の異常が原因で起きる甲状腺の炎症です。自己免疫で起こる病気は関節リウマチなどたくさんありますが、何がきっかけで自己抗体ができるのか?いまだ明らかではありません。橋本病の代表的な自己抗体は、抗サイログロブリン(Tg)抗体や抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体です。フリーT4低値かつTSH高値で、Tg抗体陽性、TPO抗体陽性で橋本病と診断できます。
甲状腺ホルモンは身体のエネルギー代謝を活発にする働きがあります。橋本病は自覚症状が出にくいため自分では気がつきにくいのですが、ある程度病状が進行すると次のような自覚症状が出やすくなります。
寒がりになる、便秘がちになる、顔がむくむ、体重が増える、何となくだるい、眠い、脈拍が遅くなる、不活発になりおとなしくなる、何となく元気がない
甲状腺ホルモン不足がさらに進行すると、心不全や胸水貯留、さらには徐脈となりブロックと呼ばれる不整脈、「粘液水腫」と呼ばれるむくみを起こすことがあります。活動性の低下や記憶力の低下は、うつ病や認知症と間違われることがあります。
しかしこのような症状が徐々に出現すると、橋本病の存在はなかなか気がつきにくいものです。甲状腺機能(フリーT4とTSH)は体調不良時のルーチン検査として、一度は調べておくという考え方でもよいのではないかと思います。
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