Q5:特異的IgE抗体検査の結果は年齢によって変化しますか?
A5:食物アレルギーを診断する上で、特異的IgE抗体の検査は原因となる抗原を決める上でたいへん重要な検査です。しかし、特異的IgE抗体は現在の病状よりも過去の感作歴を反映する傾向があり、治療効果の判定や経過観察には向かない場合もあります。
IgE抗体レベルと誘発症状は必ずしも同じレベルではありません。
乳児では特異的IgE抗体は陰性になりやすいことがあります。抗体価が陰性であってもアレルギー症状を呈することもあるし、逆に抗体価が陽性であっても負荷試験を行うと陰性であることもあります。
年齢が上がるにつれて、抗体価陰性にもかかわらず、アレルギー症状を呈する例は少なくなりますが、乳児ではこのような例も存在することを忘れてはいけません。
血中総IgE値(一般に「リスト値」と表現されます)の基準値は年齢によって異なることが知られています。年齢が低いほど、体内でのIgEの産生は盛んではなく、成人値に落ち着くのは10歳前後であるとされています。
総IgE値(リスト値)は乳幼児や学童のアレルギーの体質を調べるために検査しますが、食物アレルギーの診断にはそれほど役に立ちません。 (図1)
食物アレルギーの特異的IgE抗体検査の考え方
- 特異的IgE抗体が陰性であっても食物アレルギーは存在する
- 感作(IgE抗体が陽性)と食物アレルギーとは区別して考える
- 年齢により食物アレルギーの原因抗原や発症型は異なるため、そのときどきに応じた検査項目の選択が必要(Ⅳ参照)
- 食物-食物、食物-環境アレルゲンでの交叉抗原性の理解が大切(3-A6参照)
- 卵白、牛乳に関しては特異的IgE抗体の結果は年齢を考慮した上で食物アレルギー診断の参考になるが、小麦、大豆に関しては一定の傾向が得られにくい(3-A4参照)
血液検査や皮膚試験などの検査が陽性でも、食べた後に症状が出ないこともあります。検査結果が陽性だからという理由だけで制限や除去を始めると、食物の種類が多くなり、手間ばかりかかったり、栄養面のかたよりが出たりして良くないことが起こります。
本当に除去が必要な食物と区別するには、疑わしい食物を一度やめてみたり(除去試験)、時期をおいてまた食べてみる(負荷試験)することが必要です。
除去試験や負荷試験は、勝手に家庭で行わず専門医や栄養士の指導のもとに行うことが大切です。とくに負荷試験はアナフィラキシーなどの危険を伴うことがあるため、専門の病院で行う必要があります。
参考文献:
1) 「食物アレルギー」 監修斉藤博久、編集海老澤元宏、診断と治療社
2)「保護者と学校の先生に伝えたい食物アレルギーの基礎知識」、監修小林陽之助、編修兵庫食物アレルギー研究会、診断と治療社
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