(3)アルファ遮断薬(α遮断薬)、ベータ遮断薬(β遮断薬)、
アルファベータ遮断薬(αβ遮断薬)
人は緊張したり、ストレスを感じたりするとカテコールアミン(アドレナリンなど)という物質が出て、心臓がドキドキしたり血管が収縮したりして血圧が上昇します。
このカテコールアミンは細胞の受容体に結合して作用しますが、受容体にはαとβの2種類があります。血管にはアルファ(α)受容体、心臓にはベータ(β)受容体が存在します。
α遮断薬はカテコールアミンが血管のα受容体に結合するのを妨げるほか、カテコールアミンの産生も抑制して血圧を下げる働きがあります。また、コレステロールや中性脂肪を低下させたり、利尿作用なども認められています。
α遮断薬やβ遮断薬は、ストレスの多い人や脈拍の早い人などに広く使われています。また、コレステロールなどの脂質を改善する働きや呼吸器系に影響を与えない事から、脂質異常症や糖尿病、肥満体質、喘息の人にも使用されます。
交感神経の遮断をするために、副作用としてめまいや立ちくらみなどが出る事があります。α遮断薬は脂質異常を伴った糖尿病に使用される事が多いのですが、糖尿病にも立ちくらみなどの神経障害が出る事があるので、そのような症状がある場合には注意が必要です。
アルファ(α)遮断薬(図10)
血管にある交感神経のアルファ(α)受容体を遮断し、血管を広げることで血圧を下げます。高血圧のほか、前立腺肥大を伴う排尿障害の治療に用いることもあります。単独で使うにはやや軽い作用の降圧薬です。立ちくらみを起こしやすいので注意が必要です。
* やや詳しい説明 *
交感神経系の伝達物質であるノルアドレナリンは、血管のα受容体と結合し血管を収縮させますが、その結合を遮断して、血管を拡張させ、血圧を下げるのがα遮断薬です。
α受容体にはα1とα2とがありますが、その両方を遮断してしまうと血管の収縮は抑制できるものの、ノルアドレナリンは増えることがあることから、降圧薬としては、α1受容体遮断薬が使われています。このα1遮断薬は、高圧作用に加え、糖や脂質の代謝に良い影響があるとされています。(図11)
*商品名:ミニプレス、デタントール、カルデナリン、バソメット、エブラントルなど
ベータ(β)遮断薬(図12)
心臓を休ませて血圧を下げます。作用のメカニズムは、心臓にある交感神経のベータ(β)受容体を遮断することで、これにより心臓の興奮がおさえられ、血圧が下がります。
高血圧、狭心症、頻脈性不整脈の治療に用いられるほか、心筋症や心不全の治療に応用されることもあります。急に服用を中止すると、反発的に症状が悪化することがあり、自分だけの判断で止めてはいけません。喘息のある人には向きません。
* やや詳しい説明 *
β受容体にはβ1、β2、β3の3種類が知られていますが、循環器系では、心臓にはβ1が、血管にはβ2が多く存在しています。β遮断薬にはこれらの受容体を選択的に遮断して、効果をより高いものにする工夫がされています。 (図13)
カルシウム拮抗薬の副作用として、ときに動悸や顔のほてりなどが問題になることがあります。ベータ遮断薬は心拍数を減らして動悸をおさえることができるため、カルシウム拮抗薬と併用したり、カルシウム拮抗薬が副作用のために使えない場合に使われることがあります。
最近の研究では、ベータ遮断薬が心血管イベント(脳梗塞や心筋梗塞など動脈硬化が原因の病気)を必ずしも予防しないことが分かってきました。そのため、ベータ遮断薬は以前ほど使用されなくなってきました。高血圧治療の最終目標は心血管イベントを減らすことにあるわけで、ベータ遮断薬の存在価値が薄れてきた感は否めません。
pointβ遮断薬の降圧薬としての真の評価は、今後の研究を待たなくてはいけない。
*商品名:インデラル、カルビスケン、ミケラン、テノーミン、セロケン、サンドノーム、メインテート、セレクトール、セレカル、ダイムなど
アルファベータ(αβ)遮断薬
α遮断作用とβ遮断作用の両方を持ち合わせた降圧薬です。その中でアーチストは、心筋症や心不全の治療に応用されることがあります。アルマールは震えの治療(本態性振戦)の治療にも用います。
*商品名:ローガン、アーチスト、アルマールなど
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