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思うように下がらない高血圧、手に負えない高血圧「治療抵抗性高血圧」

9.血圧の変動性

Dr.みやけ

血圧は、ストレス、喫煙、肥満、環境や日常の行動によって様々な影響を受けて変動しています。

つまり血圧を測定した時の状態によって値は変化します。(図26)

【図26】血圧の変動に影響を及ぼす主な要因
図26血圧の変動に影響を及ぼす主な要因

他人との比較ではたとえ平均血圧が同じでも、変動性(標準偏差)や最大到達値(最大収縮期血圧)が異なる場合があります。(図27) Bさんのように突出した血圧値を示すなど、変動性が大きくなっている場合、脳心血管イベント(脳卒中や心臓病)発症リスクが高まります。

【図27】血圧の変動性の違いの例

図27血圧の変動性の違いの例

診察室では血圧が上昇し、自宅では血圧が正常な白衣高血圧。診察室だけでなく、日常生活の中でも緊張などにより容易に血圧が上昇していることが推測できます。最近、職場血圧ということばを耳にする機会が多くなってきました。仕事中に血圧を測ると血圧が大きく変動していることは容易に想像できます。しかし、仕事に支障が生じるため職場で血圧を測ることは、言うほど簡単なことではないかもしれません。

脳卒中発症リスクは、受診毎の血圧変動性の大きな患者、最大到達値(最大収縮期血圧)が高い患者で高くなることが指摘されています。脳心血管イベントのリスク評価の指標として、収縮期血圧とともに血圧変動の大きさも考慮する必要があります。(図28)

【図28】脳心血管イベントのリスクと収縮期血圧
図28脳心血管イベントのリスクと収縮期血圧

最近のデータによれば、カルシウム拮抗薬が他の降圧薬に比べて収縮期血圧の変動幅を有意に縮小させることが分かってきました。(図29)

【図29】Ca拮抗薬は収縮期血圧の個人間変動を低下させる

図29Ca拮抗薬は収縮期血圧の個人間変動を低下させる

point現在の血圧測定方法ではそのときそのときのポイント測定しかできない。収縮期血圧以外のパラメーター、たとえば血圧変動や中心血圧などを考慮した新しい血圧測定機法が近い将来発案されるかもしれない。

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心臓・血管の話

■治療抵抗性高血圧

  1. はじめに
  2. 降圧薬の種類
    1. カルシウム拮抗薬
    2. ACE阻害薬とARB
    3. アルファ遮断薬(α遮断薬),ベータ遮断薬(β遮断薬),アルファベータ遮断薬(αβ遮断薬)
    4. 利尿剤
  3. 高血圧の自覚症状について
  4. 高血圧治療におけるコントロール不良と治療抵抗性の要因降圧薬の種類
  5. 診察室でもっとも多い「なかなか下がらない高血圧」
  6. まず少量の降圧利尿薬の追加
  7. 治療抵抗性の切り札は「アルドステロン拮抗薬」
  8. 慢性腎臓病(CKD)と治療抵抗性高血圧
  9. 血圧の変動性
  10. ベータ遮断薬に期待される役割とは?

誰でも分かる「簡単な心電図の読み方」

分かりやすい動脈硬化

心房細動について


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