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町医者の診療メモ > それぞれの慢性頭痛の特徴Ⅰ)片頭痛とは(3) 

町医者の診療メモ Dr.みやけの20年の経験で培われた一種の「診察のコツ」をまとめます。

それぞれの慢性頭痛の特徴 I)片頭痛とは(3)

片頭痛に潜む頚肩腕症候群

片頭痛による苦痛は、「動けないほど激しい発作的な頭痛で、他人の動きや騒音・振動まで気にさわる」と表現されるほど大きく、日常生活は著しく障害されます。片頭痛は緊張型頭痛や頸肩腕症候群(いわゆる肩こり)を伴うことも少なくありませんが、片頭痛の症状の背後に隠れてしまい、それらに対する治療が十分に行われていないことがあります。

一方、緊張型頭痛や頚肩腕症候群(いわゆる肩こり)による頭痛はもっとも一般的な頭痛と考えられますが、片頭痛に似た痛みを生じることがしばしばあります。このような頭痛は片頭痛と混同されやすく、片頭痛によく使用されるトリプタン系薬剤は有効ではありません。緊張型頭痛や頸肩腕症候群(いわゆる肩こり)による頭痛は、緊張型頭痛と呼ばれる頭重感や片頭痛に近い拍動性頭痛、さらに神経痛様の痛みなどさまざまな痛みを生じます。しばしば、ふわふわとした浮動性めまいや倦怠感、微熱、息切れや動悸、胸部の圧迫感などの全身症状を伴うことがあります。

鳥取県大山町の住民を対象としたアンケート調査において、頭痛を有すると回答した889例の種類別の出現頻度は、片頭痛が29.1%、緊張型頭痛が50.8%と、両者で全体の約80%を占めていました。年齢分布をみると、片頭痛は10歳代から多く認められ、30歳代で最も多くなり、以降は年齢とともに減少する傾向を示しました。一方、緊張型頭痛は10歳代には少なく、50歳代でピークを迎え、60歳代から頻度が低下するものの、70歳代でも少なくありませんでした。こうした年齢分布を把握しておくことも診断の一助になります。

片頭痛の主な誘因としては、「環境の変化」、「睡眠不足」、「精神的ストレス」、「疲れを感じたとき」などが比較的多くみられました。一方、緊張型頭痛の誘因は、「環境の変化」、「睡眠不足」、「肩こり」などが比較的多くなっていました。ただし、片頭痛患者と緊張型頭痛患者で「肩こり」の頻度に大きな差は認められなかったことから、「肩こり」は両者の鑑別ポイントにはならないと考えられました(表1)。視点を変えると、肩こりの強い人では片頭痛や緊張型頭痛の一方だけでなく、ときには両方の性質を有した頭痛を生じやすいことが考えられました。

(表1)頭痛の主な誘因
  片頭痛
(頻度:%)
緊張型頭痛
(頻度:%)
環境の変化 88.3 40.5
特定の飲食物 28.8 14.6
睡眠不足 74.7 45.6
睡眠過多 13.6 4.4
精神的ストレス 50.5 18.8
激しい運動 14.4 1.5
肩こり 33.5 46.0
疲れを感じたとき 74.3 42.7

下村登規夫:診断と治療 1998;86(6):824-828より改変

頭痛患者のライフスタイルを評価した検討では、頭痛のない人に比べて、片頭痛患者の場合、男性は「飲酒習慣」が少なく、「睡眠不足」が有意に多くみられましたが、女性では「偏食」、「朝食抜き」が有意に多くなっていました。一方、緊張型頭痛患者の場合、男性では「運動不足が有意に多く、女性では「運動不足」に加えて、「偏食」、「睡眠不足」が有意に多くみられました。

片頭痛の症状の特徴と診断

片頭痛は反復発作性の頭痛で、頭痛発作は通常24時間持続します。典型的な特徴として、片側性、拍動性、中等度~重度の頭痛が生じること、日常的な動作によって頭痛が悪化すること、悪心・嘔吐、光過敏、音過敏などの随伴症状が挙げられます。ただし、片頭痛は必ずしも片側性ではなく、患者の約40%は初めから両側性、約20%は片側性から全体へと痛みが移行していくことから、実際には全体の約60%は頭部全体あるいは両側性の頭痛が生じています。

片頭痛は、局所神経症状の有無により、「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の2つに大きく分類されます。前兆とされる局所神経症状として最も多いのは閃輝暗点(せんきあんてん)で、視野の中心部に白く輝く歯車状のものが現れて、その部分が見えなくなります。その他には麻痺、構音障害、言語障害が前兆として現れることもあります。

(表2)病歴聴取のポイント
(1) いつから(中学生から、など)
(2) どこが(右側頭部など)
(3) どのように(拍動性か、など)
(4) どのくらい(寝込んでしまうなど)
(5) 随伴症状(吐き気の有無)
(6) 体動による悪化の有無(悪くなれば、片頭痛)
(7) 頻度は(1週間に、1ヵ月に)
(8) 変化は(良くなっている、悪くなっている)
(9) 家族歴(片頭痛は家族歴が多い)

片頭痛の診断では病歴聴取が重要で、頭痛の発症時期、発症部位、拍動性頭痛の有無、頭痛の程度、随伴症状、体動による頭痛増悪の有無、頻度、症状の変化、家族歴について問診することが大切です(表2)。診察時には意識障害、発熱、髄膜刺激症状、麻痺、構音障害、視野障害、運動失調、瞳孔の左右差の有無を確認します。また、二次性頭痛を鑑別するために、神経学的診察、頭部CT/MRI検査、血液検査などを行うことも重要です。なお、(図1)に示す識別法を用いると、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の鑑別が容易に行えます。

片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の鑑別ポイント
(図1)片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の鑑別ポイント

片頭痛と緊張型頭痛の連続性

一般的な片頭痛発作でも緊張型頭痛の要素が加わっている
(図2)一般的な片頭痛発作でも緊張型頭痛の要素が加わっている

片頭痛と緊張型頭痛には連続性があり、一般的な片頭痛発作でも緊張型頭痛の要素が加わっていることや(図2)、片頭痛発作が起こると同時に緊張型頭痛が誘発されることも多いです。このとき肩こりを訴える患者が少なくないことから、緊張型頭痛によって頸肩腕症候群(いわゆる肩こり)を引き起こしていると考えられます。このような状況で片頭痛治療薬のトリプタン系薬剤を投与すると、血液循環が悪化し、頭痛や頸肩腕症候群(いわゆる肩こり)がさらに増悪することがあるため、トリプタン系薬剤では症状の十分な改善が得られないと判断される懸念があります。これを回避するためには、あらかじめ緊張型頭痛に対する治療、すなわち緊張型頭痛によって生じている頚肩腕症候群(いわゆる肩こり)の治療を行うことが重要で、それによってトリプタン系薬剤の効果を高めることが期待できます。

一方、緊張型頭痛が引き金となって片頭痛発作を引き起こすこともあります。20歳以降では40%程度がこのタイプの頭痛であると言われています。また、突然片頭痛発作が始まることもあります。このケースではいきなり片頭痛発作が始まるとともに緊張型頭痛も起こるのが特徴で、15歳までの片頭痛患者ではほぼ全例が、40歳以降では30%程度がこのタイプに該当すると考えられます。これらの片頭痛患者ではトリプタン系薬剤を投与しても十分な効果は得られにくく、“トリプタン系薬剤の効果限界”となるため、それをいかに改善するかが課題であると考えられます。

片頭痛患者に対する薬物療法と生活指導のポイント

片頭痛の薬物療法は、急性期治療と予防療法に大別されますが、急性期治療では血管収縮薬や鎮痛薬が、予防療法ではセロトニンに作用する薬剤や血管収縮作用のある薬剤が用いられます。

片頭痛の急性期治療としては、一般的には非ステロイド性消炎鎮痛薬、エルゴタミン製剤、トリプタン系薬剤などが重症度に応じて使用されます。トリプタン系薬剤の投与後に頭痛が再発した場合、再度トリプタン系薬剤を投与するのも1つの選択肢ですが、血管収縮作用の少ないアスピリンなどが有用な場合もあります。一方、予防療法としてはロメリジン、パルプロ酸などが用いられます。ただし、予防に対する効果判定には一定期間を要するため、患者の自己判断による服薬中止を防ぐためにも、事前に治療スケジュールを説明しておく必要があります。

片頭痛治療では薬物療法のみならず、患者に生活習慣の改善を促すことも重要です。生活指導のポイントとして、過労を避けること、ストレスを運動などによって発散すること、規則正しい生活をすること、頭痛を誘発する食べ物(アルコール類、チョコレートなど)を避けること、姿勢を正しくすること、入浴などで筋肉をリラックスさせること、カフェインを多く含むもの(コーヒー、紅茶、市販の鎮痛薬など)を連続して過剰に摂取しないことなどが挙げられます。なお、片頭痛発作時に入浴すると血管が拡張し、さらに頭痛が増悪するため、痛みが生じているときには入浴は避けるよう指導することも大切です。

難治性の片頭痛患者に対する治療

難治性片頭痛の治療では、医師と患者の間に良好な関係を構築し、医師側で治療の妥協点をつくり出さないことが重要と考えられます。薬物療法としてはβ遮断薬、Ca拮抗薬、エルゴタミン製剤、非ステロイド性消炎鎮痛薬などを適切に併用し、生活指導を十分に行って生活リズムを整えることも考慮します。そして、片頭痛の背後に隠れている頸肩腕症候群の治療も同時に行うことが望ましいです。特にトリプタン系薬剤無効例には、この治療が重要です。

片頭痛はトータルケアの時代へ

従来、片頭痛に対しては、「頭痛発作が起こったらトリプタン系薬剤!」と、火事が起きたら消防車を呼んで消し止めるような治療が行われてきました。しかし、これからは頭痛発作の回数をいかに減らすか、つまり大きな火事にならないうちにボヤで消し止める治療が求められます。頭痛発作の回数が少ないほど脳へのダメージも少なく、予防療法と早期のトリプタン系薬剤投与の重要性はますます高まるものと考えられます。そして、今後、片頭痛はトータルケアの時代に入っていくと思われます。片頭痛を単に頭部の疾患と捉えるのではなく、患者が抱えるストレス、便通異常、動悸などにも十分に注意を払い、全身の疾患として対処していくことが望まれます。

参考文献
1)Nikkei Medical 2013.8 Book in Book、2013学会アップデート

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