兵庫県姫路市、みやけ内科・循環器科【内科・循環器内科・小児科】
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「肩こり関連症候群」とは?〈2〉

ふわふわとするめまい

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めまいにはグルグルまわるような回転性めまいとフワフワするような浮動性めまいに大別することができます
(イラスト1)

めまいにはグルグルまわるような回転性めまいとフワフワするような浮動性めまいに大別することができます(イラスト1)。頭を動かすとグルグルまわる回転性めまいの多くは耳の三半規管に関係しています。「肩こり関連症候群」に関連するめまいでは、フワフワする浮動性めまいが多くみられます。

フワフワするめまいは、「歩いていても左右のどちらかに寄っていくような感じ」とか「雲の上を歩いているように、何となく足が地に着かない感じ」と訴えられることがあります。徹夜の仕事を終えて朝日を浴びながら帰宅するとき、頭重感とフワフワするめまいを感じることがありますが、それがちょうど浮動性めまいです。

この浮動性めまいの成因は複雑です。「ふらつき」は一般には体が左右前後に揺れて感じる視覚運動体験の一つとされます。肩こりの強い人や緊張型頭痛ではフワフワするめまいを訴えることがしばしばあります。眼精疲労でもフワフワすることがあります。ちょうど船酔いや車酔いをすると、フワフワして気分が悪くなり、吐き気を伴うのと似ています。

高齢者でもめまいやふらつきはよくみられますが、前庭機能の衰えや三半規管の感度低下、筋力低下、筋固有知覚の低下、栄養障害、脳血管障害、脊椎症など原因は複雑と考えられます。

肩こりと自律神経失調症:バレ・リュー症候群から得られるヒント

むち打ち事故のあと後頭部痛、めまい、耳鳴、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの症状が出ることがあります。病院へ行くと「自律神経失調症」、「バレ・リュー症候群」、「外傷性頚部症候群」などと診断され、精神安定剤などを投与されることもあります。

バレ・リュー症候群の臨床症状

頭痛、頭重、めまい、耳鳴り、難聴、眼精疲労、視力障害、流涙、首の違和感、摩擦音、疲労感、血圧低下など多彩な症状を示します。いわゆる不定愁訴の範ちゅうに入れられる症状が多いことも有り、対応に困ることがあります。血液検査、尿検査、レントゲン検査、種々の機能検査を行っても異常が認められないにもかかわらず不定愁訴を訴える患者さんに対して、便宜的に、「自律神経失調症」という診断が下されることが少なくありません。バレ・リュー症候群は自立神経失調症と全く同じというわけではありませんが、頸椎外傷後に起こる自律神経機能障害と理解することができます。(イラスト2)

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頸椎内部の様子
(イラスト2)

1925年にフランスのバレ、1928年にバレの門下生のリューが「後部頚交感神経症候群」すなわち「頚部の疾患・外傷でありながら、むしろ頭部や顔面に頑固な自覚症状を訴える例があり、これらの症状が頚部の交感神経と密接な関係を持つ」と発表したのが最初です。その発生原因については定説が確立されていませんが、頸椎の特徴として自律神経失調症神経の一つである交感神経が頚髄周囲に網の目のように走っており、頸椎障害のときにこれらの交感神経も傷害されて、さまざまな自律神経障害を起こしやすいことが挙げられます。

バレらの見解は、何らかの原因により頚部の交感神経を過度に緊張した状態にさせ、交感神経の支配領域に症状をもたらす頚部交感神経緊張亢進説と呼ばれるものです。前頚部頚動脈の近傍にある星状神経節(前頚部交感神経系)と椎骨神経叢は連絡があり、頚部筋肉への血流が変化するため様々な不定愁訴が出現するのかもしれません。ちょっとした痛み、耳鳴、フワフワ感を過大に感じて不安になり、ときにはパニック状態になって外来受診されることがあります。他にも、椎骨動脈循環障害説、頚部軟部組織緊張亢進説、脳幹障害説、末梢前庭・内耳障害説などもあり、これらが互いに関連して発している場合が多いと言われています。二次的には心因性ストレスも原因になることも指摘されることがあります。

バレ・リュー症候群はおもに交通事故などによるむち打ちに伴う自律神経障害に対して診断されることが多いのですが、同様の症状はむち打ちだけでなく頸椎の障害を伴うさまざまの病態で起こることが推察できます。頚髄周囲に存在する交感神経刺激に伴う自律神経障害は、格闘技やスノーボードなどで後頭部を強打したとき、いろいろなスポーツ中にくり返し後頭部に圧力が加わったときなどに起こる可能性があります。また脳脊髄液減少症や慢性疲労症候群、線維筋痛症などに伴う自律神経障害の原因の一部となる可能性も考慮されます。肩こり関連症候群ではバレ・リュー症候群ほどの強い自律神経障害を伴うことは少ないと考えられますが、めまいやふらつき、立ちくらみ、どうきなどの症状に関係している可能性があります。

頚部交感神経障害によると思われる自律神経失調症は、若い年齢で起こると日常生活や仕事にも大きな影響を及ぼす可能性が高く解明が待たれるのですが、いまだ多くのことが分かっていません。

肩こり関連症候群と神経痛:三叉神経痛と後頭神経痛

肩こり関連症候群では三叉神経痛の一種である眼神経痛や後頭神経痛が起こりやすいことはすでに述べました。しかし脳外科的な本来の三叉神経痛はまったく異なるものであることに注意すべきです。三叉神経は顔面の痛みなどの知覚に関係する神経です。顔面の筋肉を動かすのは顔面神経で、顔面神経は味覚には関与しますが痛みなどの知覚には関与していません。顔面神経痛と呼ばれることがありますが、これは俗称で正確には三叉神経痛と呼ばれなければなりません。

本来の三叉神経痛による顔の痛みにはかなり特徴があります。痛みは非常に強いものですが、突発的な痛みです。一瞬の走るような痛みで、数秒のものがほとんどで、ながく続いてもせいぜい数十秒です。三叉神経痛では痛みはいろいろな動作で誘発されます。洗顔、お化粧、ひげそりなどで顔に痛みが走ります。また、食べたり噛んだりする動作に誘発されることもありますし、つめたい水を飲むと痛みが走ることもあります。痛みで歯磨きができないこともあります。触ると痛みを誘発されるポイントがあり、鼻の横などを触ると、顔面にビッと痛みが走る、という場合は三叉神経痛の可能性が高く、季節によって痛みが変動するのも特徴です。

本来の三叉神経痛の原因は顔面の感覚に関係する三叉神経の付け根を血管が圧迫することによって起こるといわれています。血管の圧迫により三叉神経に異常な神経回路ができ、疼痛の原因になると考えられています。非典型的な三叉神経痛は原因不明な事が多いですが、中にはヘルペスウイルスによる感染、多発性硬化症、脳腫瘍などが原因になっている事があります。

肩こり関連症候群で起こる眼の周囲や眼の奥に生じる痛みは、三叉神経の一つ眼神経に関係した痛みですが、典型的な三叉神経痛とは異なる病態で「症候性三叉神経痛」と呼ぶ方が適切と思われます。本来の三叉神経痛に対しては通常テグレトール(商品名)が使用されますが、肩こり関連症候群による眼神経痛や後頭神経痛では、次に述べる緊張型頭痛の治療薬の組み合わせにより比較的容易に軽快します。

背部の灼熱痛

肩こりや頭頸部のこりとはまったく異なるものですが、何らかの原因で背筋を痛めると左右どちらかの肩甲骨周辺に激痛を生じることがあります。軽いと背部が重だるくなるくらいでがまんできますが、ひどくなるとえぐられるような何とも言えないほどの灼熱痛となり、仰向きに寝るのも辛くなります。腕の位置によって痛みがひどくなるため、普通の姿勢では夜寝ることができないこともあります。

この痛みの原因としては、背部の筋肉を痛めると筋肉が収縮し、肩甲骨周囲の神経を直接に刺激するためではないかと考えられます。その部位を軽く抑えると痛みが誘発されることから診断は容易です。この神経痛が強くなると鎮痛薬が効かずたいへん辛い思いをすることがあります。時間が経過すればほとんどの場合は治るのですが、最近になってリリカ(商品名)による治療効果が期待できることが分かりました(自験例)。一度この痛みを起こすと、痛みがくり返し起こることがあるので、ふだんからストレッチ体操による予防を心がける必要があります。

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