日常的に最も多くみられる頭痛のパターンについて例を挙げてみます。
- 20~30歳代の女性
- ふだんから肩こりを自覚することが多いが、最近に頭痛を毎日のように自覚するようになった
- 頭痛はズキンズキンと脈打つような頭痛と重だるく感じる頭重感の両方で、症状の軽重はあるが頭痛は毎日のように続く
- 頭痛は朝起きたときから感じることが多いが、逆に夕方にかけてひどくなることもある
- 頭痛が強くても寝込むほどではなく、仕事や家事などは何とかできる
- 頭痛をいつ頃から自覚するようになったのか?はっきりと記憶にないが、随分前からのように思う
- 10歳代や20歳代のときに、典型的な片頭痛があったかどうかはっきりしない
- 天気が悪くなり雨の降るときや台風など気圧が下がるときに、頭痛などの症状がひどくなる
日常臨床では、緊張型頭痛の特徴と片頭痛に似た頭痛の両方の性質を持つ頭痛患者は多いと考えられます。ここではこのような頭痛も肩こり関連症候群に含めて考えることにします。緊張型頭痛では疼痛に対しては鎮痛薬や漢方薬である葛根湯、筋緊張に対し筋弛緩薬、筋弛緩作用のある抗不安薬を組み合わせて使用することがあります。
次に処方の例を示しますが、ここではすべて商品名で記載します。
処方例1)
葛根湯 2.5g
ロキソニン60
セルシン2 1tab
テルネリン1 1tab
処方例2)
ボルタレンSR 1cap
デパス0.5 1tab
テルネリン1 1tab
内服の仕方は本院では次のように指導しています。これらの薬は眠前に頓服で内服し、2日から3日続けて眠前に内服して症状が改善すれば、しばらくの間は内服しないように指導します。
頭痛が強いときには、一日2回を限度に内服します。ふつうは眠前、翌朝、眠前と3回くらい連続して内服すると頭痛が改善することが多いので、それ以上は内服しないように指導します。
緊張型頭痛や肩こり関連症候群は長期にわたり増悪・緩解をくり返すことが多いため、内服の機会が多くなることが考えられます。内服の回数が多くならないように、これらの薬の組み合わせを10回程度の少ない回数を渡し、短期間にくり返して投薬しないように、過剰投与にならないことを注意しています。
肩こり関連症候群では、頭部を圧迫するような緊張型頭痛とズキンスキンと脈打つような拍動性頭痛を併せて持つ人が多くいます。後者は片頭痛に性格が似た痛みで血管性頭痛と考えられますが、片頭痛の特効薬とされるトリプタン系薬剤はそれほど有効ではありません。
一方、片頭痛の予防薬のミグシス(商品名)は効果的との印象が強く、処方1)や2)と併用すると肩こり関連症候群による頭痛は改善しやすくなります。
処方例3)
ミグシス5 2tab/分2
ミグシス定期的に内服し、頭痛時には処方1)や2)を併用します。トリプタン系薬剤は使用しません。ミグシスは1月から2月くらいの間継続して内服してもらいますが、頭痛の改善とともに頓服薬の内服回数が減っていくことで確認できます。
40歳代までの若い女性に多くみられる緊張型頭痛と片頭痛の混合型と思えるような頭痛、肩こり関連症候群による頭痛には有効性が高いという印象が強くあります。頭痛の改善後にミグシスを終了しますが、内服を止めた後も頭痛はしばらくの間ほとんど起こらなくなるようです。
肩こり関連症候群に伴って起こる三叉神経痛(眼神経痛)や後頭神経痛にも、処方1)や2)は有効との印象が強くあります。三叉神経痛にはテグレトール(商品名)がよく使用され、肩こり関連症候群から起こる症候性神経痛にも有効ですが、テグレトールには薬疹を比較的多く起こしやすい欠点があります。したがって本院ではまず処方1)や2)を使用し効果がみられないときに、薬疹に気をつけながらテグレトールを使用するようにしています。
※このサイトは、地域医療に携わる町医者としての健康に関する情報の発信をおもな目的としています。
※写真の利用についてのお問い合わせは こちら をご覧ください。