めまいはたいへん起こりやすい症状の一つです。
一口にめまいといっても、その中には自分や周囲がグルグル回るような感じのめまい(回転性めまい)、雲の上を歩くようなフワフワするようなめまい(動揺性めまい)、立ちくらみや一瞬意識がなくなるようなフーとするようなめまい などが含まれます。
めまいの原因は多彩なために、診断は困難を感じることが多くありますが、めまいだけでなく、他の症状を伴う場合、たとえば頭痛、顔や手足のまひやしびれ、難聴や耳鳴り、耳がつまったような感じなどがある場合には、脳外科や神経内科、耳鼻咽喉科の専門の医師の診察が不可欠です。
また、めまいが頻回に繰り返したり、手を上げたりしゃがんだり、一定の姿勢をとる時に、きまってめまいが起きるときにも専門医の診察が必要です。ただし、めまいの時に起こりやすい吐き気は心配ありません。ちょうど船酔いの時に吐き気を感じるのと同じです。
しかしそうは言っても日常起こるめまいのほとんどは、心配のいらないものです。グルグル目が回るような回転性めまいとフワフワする感じの動揺性めまいが多くみられます(図1)。

回転性めまいは30歳台からの女性に多く、夜にトイレに立ったときに急に起こったり、朝に起きあがろうとしたときに起こりやすい印象があります。回転性めまいは強い吐き気を伴いやすく、体を動かそうとするとめまいと吐き気が強くなりますが、目を閉じてじっと寝ていると楽に感じます。
このようなめまいも静かに寝ていると、半日もすると軽くなり起きあがれるようになります。このようなめまいの多くは疲れやストレス、睡眠不足が重なると、耳が原因で起こると考えられます(図2)。

しかし、この回転性めまいが一日以上続いたり、頭痛や顔・手足のまひを伴うときには、小脳や脳幹部といわれる部分の病気も考えられるため注意が必要です(図2)。
また、このようなめまいがメニエール病と混同されることが多くあります。メニエール病も耳が原因で起こりますが、突然はげしいめまいが耳鳴りや難聴とともに起こり、1,2時間するとこれらは軽くなります。真のメニエール病が原因のめまいは、むしろ珍しいと言えるでしょう。
突発性難聴でもめまいが起きることがあります。突発性難聴では、急にさまざまな程度の難聴が起こってきますが、耳鳴り、耳がつまるような感じ などの症状のこともあります。このような聴力に関係した症状とともに、ぐるぐる回るめまいが起こることがあります。
しかし起きあがれなくなるほど強いめまいではありません。突発性難聴の治療の開始は早ければ早いほど、聴力の回復が期待できるため、できるだけ早く耳鼻科を受診する必要があります。
フワフワとした動揺性めまいは、雲の上を歩くような感じや船酔いの感じに似ためまいです(図1、3)。中年の女性に更年期に関係して起こることが多い印象がありますが、高齢者にも同様のめまいが起きることがあります。

肩こりが強くなると、首筋や頭の筋肉のこりが強くなり、頭を重く感じたり、フワフワとしためまい感を生じやすくなります(図4)。

また、更年期に起こりやすいフワフワとしためまい感も、肩こりに関係して起こることもありますが、自律神経失調症として考えた良い場合もあります。このようなフワフワしためまいは何日も続きやすいために、血圧や脳の病気を心配して来院されることが多いようです。
治療方法は、肩こり、更年期障害、自律神経失調症などおもな原因に応じて異なりますが、原因がオーバーラップしていることも多く、治療に困ることも多くあります。血液検査で貧血がないか調べたり、血圧の検査、必要に応じて脳CTや脳や頚部のMRIを行って調べることがあります。
これらの検査で異常がないときには、このめまいは自然に治っていくようです。
高齢者でもふわふわとしためまいが起こることがあります。高齢者では脳血管の動脈硬化、とくに後頭部付近の動脈の循環不全(椎骨・脳底動脈循環不全と呼ばれます)が、めまいを起こしやすく、注意が必要です(図2)。転倒などの危険性が高いだけでなく、高齢者自身にも脳梗塞や脳出血の不安感を強く与えます。
しかし、高齢者のめまいは動脈硬化だけでなく、血圧の変動、足腰の筋力低下、不安感、肩こりなどいろいろな因子がからみあってこのめまいを起こしている印象が強く、治療の面ではお手上げのことがあります。脳外科や神経内科の専門医に相談しながら、根気よく様子をみていく必要があります。
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