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よく見られる大人の病気・症状(大人の日常起こりやすい症状や病気について、写真やイラストを用いて分かりやすく解説しています)

いろいろある蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹は日常的にありふれた病気ですが、意外と診断や原因について困ることがあります。

蕁麻疹(じんましん)の特徴

じんましんの特徴は、

  1. 「膨疹(ぼうしん)」と呼ばれるように、蚊に刺されたような盛り上がりがあること、
  2. かゆみが強いこと、
  3. 症状が出てからふつうは数時間後、長くても半日程度ではれもかゆみも治まること 

の3つです。一日またはそれ以上湿疹が続くときには、じんましん以外の原因も同時に疑うことが大切です。

*じんましんの写真はこちらのページをご覧ください。

蕁麻疹(じんましん)の原因

じんましんはさまざまなことが引き金となります。食べ物や薬だけでなく、植物に触れて出ることもあれば、風邪などの感染症が原因となることもあります。
食べ物は、小麦やソバなどの穀類、エビ・イカ・カニといった魚介類、キウイなどの果物、木の実が出やすいです。
薬剤ではアスピリンなどの解熱鎮痛薬や抗生物質などもじんましんを引き起こすことがあります。
冷たい風や冷水による刺激、皮膚をひっかく・買い物かごなどの機械的な刺激、日光や汗、疲労やストレスなどがきっかけになることもあります。

野菜や果物の中には薬理活性物質(仮性アレルゲン)を持ち、食物アレルギーと同じような反応を起こすものがあります。(下表1)

(表1)野菜・果物中の薬理活性物質(仮性アレルゲン)の例
ヒスタミン ほうれんそう、トマト、とうもろこし など
セロトニン トマト、バナナ、キウイフルーツ、パイナップル など
アセチルコリン なす、トマト、たけのこ、里いも、大和いも、クワイ など
ニコチン じゃがいも、トマト など
サリチル酸化合物 トマト、きゅうり、じゃがいも、いちご、りんご など

いずれにしても、原因が分かればそれを取り除くことで、じんましんを避けることができます。
原因不明のじんましんを「特発性じんましん」と呼びますが、実際は何が原因か特定できないケースの方が多いのです。

蕁麻疹(じんましん)の分類

じんましんの分類は必ずしも明確にはされていませんが、そのなかでも原因や症状などの特徴や定義が比較的はっきりしている種類としては、以下のようなものがあります。

1)急性じんましん

毎日のように繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して1ヶ月以内のもの

2)慢性じんましん

毎日のように繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して1ヶ月以上経過したもの。
原因が特定できないことが多い

3)物理性じんましん

機械的擦過や圧迫、寒冷、温熱、日光、振動などといった物理的刺激により起こる

4)コリン性じんましん

入浴や運動などで汗をかくと現れるじんましん。
一つ一つの膨疹(皮膚の膨らみ)の大きさが1~4mm程度と小さいく、小児から若い成人に多い

5)アレルギー性じんましん:

食べ物や薬剤、昆虫などに含まれる特定物質(アレルゲン)に反応して起こるもの。
アレルゲンに結合するIgEという血清蛋白が関与する

6)イントレランス

アスピリンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬、色素、造影剤、食品中のサリチル酸などにより起こる蕁麻疹で、IgEが関与しない

難治性蕁麻疹 (なんちせいじんましん)

じんましんは表皮下の真皮の肥満細胞から放出されるヒスタミンなどの物質によって起こります。
ヒスタミンの作用を抑える抗ヒスタミン薬の内服が治療の中心です。塗り薬は真皮まで届きにくく、あまり効果はありません。
一般に抗ヒスタミン薬の効果は高いのですが、期待したほどの効果がみられないことがあります。
そのような場合、じんましんという診断が本当に正しいかどうかが問題になります。
次に述べる疾患はじんましんとは違うため、抗ヒスタミン薬では効きません。

じんましんの中でも、抗ヒスタミン薬が十分に効かないものが約10%存在します。
そのような場合でも、皮膚の肥満細胞は激しく脱顆粒しているので、ヒスタミンが関与していることは間違いないようです。

抗ヒスタミン薬が効かない理由の一つは、じんましんにヒスタミンが関与していないためでなく、局所に放出されるヒスタミンの活性の強さに比べて、抗ヒスタミン薬の作用が不十分であるからだと考えられます。
そこで症状が強く治りにくい「難治例」に対して、まず抗ヒスタミン薬の増量を考えるべきですが、加えて抗ヒスタミン薬の変更、H2受容体拮抗薬や漢方薬などの併用が有効なことがあります。
最近の抗ヒスタミン薬は、いずれも従来の抗ヒスタミン薬に比べて臨床効果の割に副作用の種類と頻度が少なくなっています。
すべての症例に漫然と増量するのは問題ですが、難治性じんましんに一時的に増量するのは一つの方法です。

それでもうまくコントロールできずに症状が激しい場合には、ステロイドの内服が必要な場合があります。
ステロイドは長期使用による副作用からあまり推奨されないことが多く、また有効性も確立されていません。
さらに生活できないほどの激しいじんましんでは、シクロスポリンのような免疫抑制剤や血漿交換など、免疫学的な治療法が有効なことがあります。

じんましんは治療しないまま放置すると治りにくくなります。
発症してから早いうちに治療を開始したほど、治癒の可能性が高くなります。
発症して1年以内に治療を行った場合、約6~7割が治癒しますが、1年以上5年未満で約4割、5年以上になると治癒率はさらに下がります。

蕁麻疹(じんましん)と間違えやすい湿疹

日常の診療でじんましんと間違えやすい湿疹がいくつかあります。
じんましんは血管が拡張して起こりますが、一般に血管が拡張して起こる赤みを帯びた湿疹を、「紅斑(こうはん)」と呼びます。
紅斑は、周りを指で押さえると赤い色調が消えることで容易に判断できます。
内出血や点状出血では、指先で押さえても色調が変化することはありません。

ふだん、目にする小さな紅斑を生じる病気には次のようなものがあります。 (クリックすると詳細ページへリンクします)

  1. 溶連菌感染症
  2. 風疹
  3. 伝染性紅斑(ヒトパルボB19感染症)
  4. 伝染性単核症(EBウィルス感染症) など

日常の診療で小紅斑を目にすることは多く、これら4つの疾患を見逃さないように気をつけます。

その他、じんましんと間違えやすい湿疹には次のようなものがあります。
これらは治療に困ることが多く、専門医に紹介することが多いです。

  1. 血管性浮腫(写真1、2)
  2. 多型性紅斑(写真3)
  3. 結節性紅斑 など

血管性浮腫-写真1
(写真1 血管性浮腫)

血管性浮腫-写真2
(写真2 血管性浮腫)

多型性紅斑
(写真3 多型性紅斑)

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