Q8:乳幼児の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎はどのようにして起こるのですか?
A8:小児のアトピー性皮膚炎の悪化因子として食物アレルギーはたいへん重要です。食物アレルギーの関与が考えられるアトピー性皮膚炎は前例の約1/4ほどで、かつ全年齢ではなく年少児に関与すると考えられています。
1歳半以下の年少児においては、食物アレルギーはアトピー性皮膚炎のかなり重要な基本因子になっているのではないかと思われますが、3歳を過ぎた頃から食物アレルギーの頻度は目立って少なくなります。
食物アレルギーの最近の話題としては、従来は食物を食べることで感作が成立すると考えられていたのですが、皮膚を通して入ってきた食物抗原が食物アレルギーを原因とする皮膚炎を引き起こし、ひいては喘息やアレルギー性鼻炎へと進展するのではないかという経皮感作が言われるようになってきました。
生まれてすぐにリスクの高い子どもを選んでスキンケア介入することで、従来のアレルギーマーチを阻止できるのではないかという研究が世界的に進められています。
乳幼児の食物アレルギーについては、皮膚と消化管の2つの感作ルートを考えなくてはならないという仮説が、最近提唱されるようになってきました。「食物アレルギーは口から食べた物に対するアレルギーであるから、消化管での免疫異常、機能異常が基盤になる」というのが従来の考え方であり、感作も消化管を中心に考えていたわけです。
しかし、皮膚感作も絡めて考えると、食物アレルギーの治療のターゲットは消化管だけでなく、皮膚も含めなければならないことが分かってきました。
子どものアトピー性皮膚炎で食物アレルギーの関与が高いと判断されたときには、皮膚炎の治療はもちろん大切なことですが、食べ残しがあればきれいに掃除をして皮膚を通した感作を予防するという注意が必要になります。
離乳食が始まっていない生後3~4ヶ月で、湿疹を起こして病院を訪れた乳児にプリックテストという皮膚試験を行うと、卵白・卵黄が陽性になることがけっこう多いことが指摘されています。
母親から胎盤または母乳を通して胎児や乳児にこれらが移行して感作されたと考えられますが、もしかすると兄弟姉妹の食べ残しのような物が、皮膚を通して感作を起こしている可能性も推測されます。子どものシーツからの食物抗原も報告されています。
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