Q9:成長して学童になっても続くような食物アレルギーの見分けかたはありますか?
A9:食物アレルギーの発症は乳児期にピークがあり、その後年齢とともに減少します。
乳児期から幼児早期の主要な原因食品である鶏卵、乳製品、小麦などの食物アレルギーは比較的早期に耐性を獲得するようになります。耐性とは成長とともに食物アレルギーが軽くなりやがて消失していくことをいいます。
原因食物や子ども個々により差はありますが、大まかに3歳までに50%、6歳までに90%が原因物質に対して耐性を獲得すると考えられています。それではどうして中には耐性を獲得できない子がいたり、耐性を獲得しにくい物質や食物が出るのでしょうか?
乳児期に食物アレルギーの原因となるのはおもに、鶏卵、乳製品、小麦、それに大豆やイモ類、コメなどですが、これらは一度食物アレルギーと診断されても、比較的すみやかに耐性を獲得して食べることができるようになります。
しかし、このように耐性を獲得しやすい食物のほうが限られており、他の多くの原因食物はむしろ耐性を獲得しにくいと考えられています。
口にするとアレルギー症状が出るために除去が必要であった食物が、やがて耐性を獲得する詳しい機序は明らかではありませんが、乳児や幼児の成長につれて消化機能が成熟してくるためではないかと考えられています。
そしゃくや唾液、胃液、膵液、腸液などの消化機能の成熟は、口に入った原因食物の抗原性を消化機能でアレルギーの原因になりにくくして、耐性化を促す要因となります。また、腸管上皮の成熟や、腸管免疫の成熟、吸収機能の高機能化により、原因食物が体内に取り込まれないようになってきていると推測されます。
それまでアレルギーの原因となっていた食物が、耐性を獲得しやすくなってきたとも考えられます。消化吸収機能の成熟に伴い、今まで原因物質であったものが、アレルギーの原因になりにくくなる構造をしている可能性もあるではないかと推測されます。
耐性を獲得しにくく、学童期に入っても続く食物アレルギーのおもな原因食物として、ピーナッツ、ソバ、魚類、木の実、果物などがあります。これらはまったく耐性を獲得できないわけではありませんが、成長に伴う耐性化の可能性はたいへん低いといえます。
耐性化の機序が分かっていない現状では、たとえ耐性を獲得しやすい原因物質であってもどの食物アレルギー児が将来的に耐性を獲得できるのか、またはできないか、耐性を獲得できるのがいったい何歳の頃なのかは全く分かりません。
専門家は食物アレルギーが遷延化しやすい条件として、原因食物の特異的IgE値の低下傾向が弱く、過去にアナフィラキシーショックの既往歴が多く、経過中のアトピー性皮膚炎の症状が悪い傾向にあることを指摘しています。
アナフィラキシーを繰り返すことで、強い抗原刺激と強いアレルギー反応が体に記憶されるようになります。またアトピー性皮膚炎の悪化により、原因食物の皮膚を介した感作を助長している可能性があります。それらの結果として、特異的IgE値が維持されて、アレルギーの遷延化に影響していることが推測されます。
参考文献:「食物アレルギー」 監修斉藤博久、編集海老澤元宏、診断と治療社
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