総合内科のアプローチ ~臨床研修医のために~肺疾患の胸部X線所見と臨床所見 

総合内科のアプローチ ~臨床研修医のために~ 臨床研修医のみなさんへ、Drみやけの診断の「虎の巻」をお教えします。

肺疾患の胸部X線所見と臨床所見

Dr.みやけ

肺疾患の診断は、一般医にとってはたいへん難しく感じます。

一枚の胸部X線写真から診断に至ることは困難ですが、臨床所見と併せると診断に近づくことが可能になります。

肺疾患を胸部X線所見と臨床所見の特徴を簡単にまとめてみました。

胸部X線所見:粒状・結節・腫瘤

胸部X線所見:粒状・結節・腫瘤
  疾患 空洞 所見

肺結核・
非結核性
抗酸菌症
 
敗血症性
肺塞栓
  • 持続する発熱と多発性結節
  • 両側性で胸膜直下優位の多発結節や斑状影、空洞も高率に
  • 高熱と炎症反応高値、蜂窩織炎の存在、D-ダイマー陽性
  • 感染性心内膜炎(とくに右心系)や感染性静脈炎が原因となることが多い
  • 皮膚軟部感染症、肝膿瘍、腎膿瘍、中心静脈カテーテル感染症、永久ペースメーカー感染症など
  • 内頸静脈に血栓性静脈炎を起こし、本症に至るレミエール症候群(上気道炎症状が先行し、胸鎖乳突筋に沿った圧痛の存在がヒント)
肺化膿症  

クリプト
コッカス
  • 同一葉内に多発する結節性陰影
  • 画像は多彩であるが、その中でも同一葉内多発結節、奇妙な形態をした結節などは本症を疑う根拠
  • 下肺野末梢の肺結節、健常者が罹患する頻度も高く、しばしば無症状で健診などを契機に発見
  • 胸膜直下の比較的辺縁明瞭な単発あるいは多発する結節が多くみられ,浸潤影を呈する場合もある
  • 空洞は40%程度にみられるとされる.同一肺葉内の多発結節が特徴
アスペル
ギルス症
  • 空洞内には球形の菌糸集塊(真菌球形)を形成
  • 全身の免疫能が保たれている状態で、気管支喘息の経過中に出現した空洞影
カンジダ
   
エヒノコ
ッカス症
(寄生虫)
   
ノカルジ
ア症
(分枝状菌)
 


ニューモ
シスチス
肺炎
  • ❶経過とともに斑状からびまん性に広がるすりガラス状陰影、❷多彩な画像所見
  • 胸膜直下にスペアされた(侵されていない)領域を認めることもある
  • 白血球減少、リンパ球減少

肺過誤腫  
気管支
カルチ
ノイド
  気管支カルチノイド腫瘍は神経内分泌腫瘍に分類される比較的まれな低悪性度の腫瘍
神経原性
腫瘍
 
類上皮
血管腫
  肺多発性結節として見られる疾患、本症はまれな低悪性度腫瘍で、多臓器発生例(肝臓が多い)もある
肺癌
悪性
リンパ腫
  • 両肺びまん性線状影や網状影、Kerley’B線はいわゆるリンパ路性間質を侵す疾患を疑う
  • 孤立腫瘍型、結節型、肺炎または浸潤型、顆粒状またはリンパ管炎型
肺分画症  
  • 心横隔膜部の腫瘤状陰影、通常は正常気管支との交通はない
  • 分画された肺と正常肺との境界に胸膜がないため感染を生じやすく、繰り返す肺炎症状で発見されることが多い
硬化性
血管腫
  良性肺腫瘍だが通常は孤立性で辺縁平滑な結節影
肺動静脈
廔・奇形
 
  • 低酸素症と多発性肺結節陰影、1/3は多発結節陰影で、家族性の遺伝性出血性末梢血管拡張症の合併を常に考える
  • 肺血管から連続する2本の太い異常血管が見られたら肺動静脈奇形(肺動静脈瘻)を考える 
  • フィルターの役割をする毛細血管を介さないため、血栓や細菌が流れやすく、血栓症や膿瘍を合併



多発
血管炎性
肉芽腫症
典型は両肺の多発結節や腫瘤であり、胸膜下や気管支血管周囲に分布する
好酸球性
多発
血管炎性
肉芽腫症
肺炎、浸潤影・結節影、好酸球浸潤、肺胞出血、胸水
IgG4
関連疾患
唾液腺、膵臓、腎臓、後腹膜、肺など多臓器に病変
(炎症性
偽腫瘍)
肺病変としては炎症性偽腫瘍、間質性肺炎の一部がこの病態


関節
リウマチ
 
シェー
グレン
症候群
 


サルコイ
ドーシス
  • 一般的には呼吸器症状が乏しいという特徴
  • 派手な胸部画像陰影が見られる一方で、発熱などの炎症症状が乏しく、自覚症状は軽度の息切れと咳嗽のみ
  • BHL、肺野のリンパ路に沿った陰影の進展が特徴的だが、BHLがなく肺野に多発結節陰影を認めるだけのものも
  • 結節性陰影は粒状影の集簇と見えることが一般的だが、粒状影がはっきりしない場合もある
アミロイ
ドーシス
 

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胸部X線所見:肺炎様浸潤影

胸部X線所見:肺炎様浸潤影
  疾患 所見

細菌性肺炎 区域性
マイコプラ
ズマ肺炎・
百日咳
  • 両側中下肺野の末梢に血管影を不鮮明化させる境界不鮮明な策状ないし小結節状の陰影
  • 肺胞性均等影(肺炎様均等影)や粒状、網状影は認められず
レジオネラ
肺炎
  • 疑ったら温泉利用歴や検査結果に固執せず早期に抗菌薬(レボフロキサシンやアジスロマイシンの静注)を投与する
  • 市中肺炎の1~5%、胸部X線では広範囲の浸潤影
  • 潜伏期は2~10日で急性経過をたどることが多く、診断の遅れによる死亡率は高い
  • 呼吸器症状は乏しく、頭痛、下痢、意識障害などが認められることがある
肺結核
  • 市中肺炎様の臨床像を呈する肺結核もあり得ることを知っておくべき
  • 免疫反応の強い青壮年に多いといわれるが、高齢者にも起こる
  • 滲出性病変を主体としているため、排菌量はむしろ少ないという特徴
非結核性
抗酸菌症
肺MAC症などのNTMの場合は上肺野と中葉に病変が分布



ノカルジア
 

肺癌 喫煙者で発熱があり肺炎を疑う所見では肺門部肺癌の合併に注意
粘液産生
腺癌
  • 肺炎様陰影を示す粘液性腺癌は細菌性肺炎に酷似
  • 細菌性肺炎や粘液性腺癌は下肺野優位
  • すりガラス影あるいは淡い浸潤影として見られる肺癌(粘液性腺癌)がある
悪性
リンパ腫
  • 両肺びまん性線状影や網状影、Kerley’B線はいわゆるリンパ路性間質を侵す疾患を疑う
  • 孤立腫瘍型、結節型、肺炎または浸潤型、顆粒状またはリンパ管炎型



多発血管炎
性肉芽腫症
  • 全身症状を伴う多発結節影ではGPAを疑う
  • 胸膜直下や気管支血管束に沿って浸潤影や結節影が分布
  • 副鼻腔炎、鼻出血、中耳炎などの上気道炎症状
好酸球性
多発血管炎
性肉芽腫症
レントゲン上移動性浸潤影: 移動性、一過性肺浸潤影。固定陰影は含まない(ACR1990年)




好酸球性
肺炎
 
薬剤性肺炎
  • 新規薬剤投与後に遷延する発熱の原因として薬剤性肺炎も鑑別に
  • 薬剤性肺障害を否定できない場合には健康食品の摂取歴も確認


特発性
間質性肺炎
  • ❶初期は末梢肺底部に線維化が進行して、下中肺野が縮小し肺活量も低下
  • ❷両側に広がるガラス状陰影と浸潤影で、線状影が多発することは稀
  • 抗生剤に反応しない肺炎、両側性の中下肺野の末梢優位の浸潤影や結節影
  • 胸膜直下や気管支血管束周囲優位の肺炎様の均等影で、両側のことが多いが一側性のことも
  • ステロイドが著効する予後良好な疾患だが、寛解後に再燃することも
肺水腫・
肺胞出血
 
肺梗塞
  • 浸潤影やすりガラス陰影が見られる場合、肺門部陰影の大きさや左右差には常に注意
  • 気管支透亮像を伴わない胸膜を底辺とする楔状のコンソリデーションで下葉に見られることが多い
リポイド
肺炎
  • 検診で中葉の浸潤影を認めた場合、浸潤影とすりガラス影を示して下肺や右中葉に多い
  • 緩下剤、動物性・植物性油脂の誤嚥、吸引、ワセリン含有点鼻薬、潤滑油含有点眼薬など

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胸部X線所見:線状・すりガラス

胸部X線所見:線状・すりガラス
  疾患 所見

ウィルス性
肺炎
 


サイトメガ
ロウィルス
肺炎
 
ニューモシ
スチス肺炎
  • 慢性経過の上肺優位な多発性嚢胞陰影
  • ❶経過とともに斑状からびまん性に広がるすりガラス状陰影
  • ❷多彩な画像所見
  • ❸胸膜直下にスペアされた(侵されていない)領域を認めることもある

癌性
リンパ管症
肺門部(末梢優位の肺線維症との違い)から末梢に広がる多発性線状影と微細粒状影、カーリーB線
悪性
リンパ腫
  • 両肺びまん性線状影や網状影、Kerley’B線はいわゆるリンパ路性間質を侵す疾患を疑う
  • 孤立腫瘍型、結節型、肺炎または浸潤型、顆粒状またはリンパ管炎型
リンパ脈管
筋腫症
妊娠可能年齢の女性にみられる嚢胞性肺疾患、肺気腫同様に透過性亢進し肺は過膨張
肺ランゲル
ハンス
組織球症
  • ❶若年男性、喫煙者、繰り返す気胸の既往
  • ❷初期における上中肺優位の小葉中心性分布を取る粒状・結節性陰影と嚢胞性陰影
  • ❸喫煙関連間質性肺炎として位置付けられており、各所見は禁煙で改善する
  • 無症状で健診で発見されることも多い


関節
リウマチ
RF、ANA、KL-6、ANCA
皮膚筋炎/
抗ARS抗体
症候群
抗Jo-1抗体、抗ARS抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1-γ抗体
肺病変先行
型膠原病
 
シェーグレ
ン症候群
抗SSA



IgG4
関連疾患
  • ❶孤立性または多発性の結節や腫瘤、
  • ❷慢性間質性肺炎様の両側下肺野優位のすりガラス影と内部の気管支拡張
  • ❸リンパ路病変、
  • ❹胸膜肥厚 に大別されるがリンパ路病変が多い
  • 患者の多くが50歳以上で男性に多い




急性好酸球
性肺炎
  • 若年男性で喫煙開始後の急な息切れ
  • 日本では喫煙開始を誘引とし発症したとする報告が多いが、薬剤が関与する例も多数報告
過敏性肺炎
(夏型、
農夫肺、
鳥関連、
住居関連
など)
  • 真菌胞子などの抗原の反復吸入が誘因のびまん性肺疾患で、乾性咳、発熱や呼吸苦
  • やや上肺野優位の淡いすりガラス影や結節影
  • 急性型は国内では夏型過敏性肺炎(トリコスポルン・アサヒ)が多い
  • 慢性型は鳥関連過敏性肺炎が多く、鳥飼育に加えハトや羽毛布団使用による発症も見られる
  • 慢性過敏性肺炎の血液検査では炎症所見は軽度で、3〜4割で抗核抗体やリウマトイド因子が陽性で膠原病肺との鑑別も必要
  • 最近は加湿器肺が多くみられる
亜急性
過敏性肺炎
  • 両下肺野優位のすりガラス陰影では、薬剤性肺障害、ニューモシスチス肺炎、肺胞出血、亜急性過敏性肺炎などを鑑別
  • ❶築50年木造家屋、❷鳥の接触歴、❸加湿器の使用、❹羽毛布団、❺常用薬の有無、❻職業の内容 などに注意
  • 亜急性過敏性肺炎、とくに夏型過敏性肺炎では、KL-6高値、抗トリコスポルンアサヒ抗体
加湿器肺
  • 急性から亜急性に経過する過敏性肺炎は住宅関連の夏型過敏性肺炎がその大半を占める
  • 加湿器肺を含めた換気装置肺炎の報告は約4%にすぎないとされる
薬剤性肺炎
  • 新規薬剤投与後に遷延する発熱の原因として薬剤性肺炎も鑑別に
  • 薬剤性肺障害を否定できない場合には健康食品の摂取歴も確認


特発性
間質性肺炎
  • ❶初期は末梢肺底部に線維化が進行して、下中肺野が縮小し肺活量も低下
  • ❷両側に広がるガラス状陰影と浸潤影で、線状影が多発することは稀
サルコイ
ドーシス
  • ❶肺門リンパ節肥大BHL、肺野のリンパ路に沿った陰影の進展が特徴的
  • ❷BHLがなく肺野に多発結節陰影を認めるだけのものもある
  • ❸サルコイドーシスは一般的には呼吸器症状が乏しいという特徴があり、全身倦怠感や息切れなどの全身症状のみを示す例が少なくない
肺胞蛋白症
  • 健診でバタフライ状のすりガラス陰影を認めたら肺胞蛋白症も鑑別に
  • 若年男性で健診の際に偶然発見されるという病歴からはサルコイドーシスも鑑別
肺気腫合併
肺線維症
  • ❶肺野がさほど縮小していない喫煙者の肺線維症、高率に肺癌を合併する
  • ❷上肺に肺気腫、下肺に肺線維症が併存する、肺気腫による容積増加と下肺の肺線維症による容積減少が相殺される
  • ❸肺野全体としては容積にあまり変化はないが、上肺に限って言えば、肺気腫による容積増加と透過性亢進を示す

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