Dr.みやけが1980年代に訪れた、アメリカ個人旅行の経験をもとに知っておくと便利なことをお話しします。
アメリカのガイドブックと、旅の予定
アメリカの旅行の時に便利なガイドブックと正確な地図は、AAA(アメリカ自動車協会:トリプルエーと読みます)発行のTour Book と State Mapでしょう。Tour Book には観光地の情報が簡潔に記載されているだけでなく、モーテルやレストランなどの情報が地図とともに正確に載っています。また、州ごとの交通ルールの違いや注意事項なども載っており、たいへん重宝します。
また、重要な都市ではCity Map が出ています。AAA事務所ではこれらの本が棚に並んでいて、AAAの会員になっていると無料でいくらでももらうことができます。非会員でも有料でもらえますが、たいへん安い値段です。AAA事務所は少し大きな町では必ずあります。AAA発行のトラベラーズチェックはアメリカ国内では最大級の信用があります。
自動車旅行のときには、State Map と Tour Book はぜひ手に入れておきましょう。地図はたいへん正確で、通行止めの箇所なども正確に記載されています。また危険な場所、冬季の通行止め、州によって異なる交通ルールなど、重要な情報が満載です。
これらの本や地図は日本国内でもJAFから入手可能です。在庫があればすぐに手に入りますが、在庫のない時には注文ができます。一ヶ月もあれば手に入るでしょう。価格も安いものです。
行き当たりばったりの旅行もよいかも分かりませんが、できるだけ旅行の予定を詳しく事前に立てておく方が安全です。移動日であれば、一日で800~1000kmくらいは走ることは可能です。
ただし夜はひとたび町を離れると、街灯もなく真っ暗闇です。周囲の状況も分かりにくく、動物が道路に飛び出してきたりすることもありたいへん危険です。鹿などの大型の動物にぶつかると大事故につながりかねません。
またアメリカの道路のほとんどはガードレールもありませんので、夜間の走行はたいへん危険です。暗くなる前に目的地に着くように旅程を立てましょう。
モーテルなどの宿泊施設はほとんどが安全で快適です。宿泊料金も高くはありません。モーテルは道路沿いに見かけることが多く、見つけるのに苦労はないでしょう。しかしかえって都会では見つけることが困難なことがあります。そのときには空港近くで探すと必ずいくつかのモーテルを見つけることができます。
観光シーズンともなると、グランドキャニオンなどの有名な観光地では、早くからモーテル、ホテルなどは予約でいっぱいです。そのときのモーテル探しのコツは、観光地の周辺の小さな町で探すことです。30~40分くらい離れると必ず空いているところが見つかるでしょう。
公園によっては、近くに一つだけ宿泊施設があり、周辺100キロ~200キロ近くにモーテルひとつもないことがあります。そんな公園に行くときには前もって宿泊予約を入れておくことが必要です。AAAのTour Bookには詳しく宿泊施設について書かれていますので、事前に手に入れて調べておきましょう。
アメリカで車に乗る
アメリカは広大な国なので、自動車のガス欠には常に気をつけましょう。ガソリンスタンドは主な道路沿いには数多くあるので見つけるのは簡単ですが、ガス欠を起こすと周囲に全く人家がないことも多く、心細い思いをします。
ガソリンが1/3くらいになったら、給油をしておきましょう。とくにアメリカ南西部の砂漠を旅行するときには、ガス欠と自動車の調子に気をつけておかないと、万一砂漠の真ん中で立ち往生すると、40度近くの暑さのために非常に危険になります。
長距離を走るときには毎朝、オイルとタイヤを点検しましょう。1回の旅行で7000~8000km走ることもありましたが、さすがに目に見えてオイルが減ってきました。スーパーでオイルを購入しておき、ときどき補給しておきましょう。
アメリカは当然ながら、車は左ハンドルで、右側通行です。左ハンドルにはすぐに慣れますが、問題は右側通行です。交差点などではうっかりしていると、左側に入ってしまいます。私の経験では、曲がり角の際には、「右側、右側」とつぶやきながら、曲がるのが良い方法です。
アメリカではひとたび郊外に出ると、歩行者などはほとんど見かけず事故の心配も少なくなります。しかし、都会にはいると道路も複雑になり、車の量も増えてきます。
道路標識は日本と違い、たいへん見やすいので迷う心配はまずありませんが、市街地に入ろうとすると複雑になり、慣れないと危険です。必要以外には市街地には入らないで素通りするか、市街地では駐車しておいて歩く方が安全です (しかしダウンタウンなどでは、歩く方がかえって危険なこともあります。興味だけで知らないところには行かないことです)。
アメリカでは勝手に他人の家の敷地内には入ってはいけません。また、夜に出かけるのもほどほどにしましょう。夜遅くに雑貨店に買い物に出かけるのも止めましょう。運悪くパトカーに停止命令を受けたときには、外には出ないで車の中で静かに待ちましょう。
個人責任の国・アメリカ
アメリカは日常生活でも、旅行でも個人で責任をとるのが基本です。アメリカの公園は、柵や手すりなどの安全策は最小限にとどめられています。一つ間違えると崖からまっさかさま という所も多くあります。
自分の安全は自分で守る というのが基本ですから、くれぐれもむやみな冒険は控えましょう。そのかわり大自然がほとんど手つかずで残されており、醍醐味を満喫できます。公園内にはvisitor center が完備され、地図や資料が豊富に用意されています。公園係員による説明も充実していますので、始めにぜひ訪れたい所です。公園内外の道標なども完璧です。
アメリカの移動手段と、沈黙は…?
アメリカは広大な国なので、限られた時間の中で多くを見ようとすると、移動手段としては飛行機を利用するのが便利でしょう。
しかし少し時間にゆとりがあれば、公園から公園へ、町から町への移動は自動車を利用するのがお勧めです。さまざまの風景の移り変わり、人々の生活の様子、思いがけずすばらしい風景に出会ったり、いろいろな店に立ち寄ったり、すばらしい経験の連続です。
アメリカの公園はアクセスが限られており、自動車がないとたいへん不自由です。
公園内にはさまざまなツアーが用意されていますが、ツアーが予定時間より長くなることがよくあります。係員が熱心に説明してくれたり、また人々からさまざまの質問が出るために、長引くためです。自動車があれば時間を気にかけないですみます。逆に自動車がない方はくれぐれも時間に余裕を持って、ツアーに参加しましょう。
アメリカ人は陽気でよく話しかけてきます。アメリカに住んでいて感じたことは、アメリカ人の天性の明るさもありますが、見知らぬ人どうしが一緒になったときに、お互いの警戒心を解くために話しかけてくるのではないかと いうことです。
話の内容と言えば、家族のことやペットのこと、自己紹介など 他愛のないことばかりです。アメリカ人からみれば、日本人が一人でぽつんとしていたり、日本人グループだけで孤立しているのは奇異に映るのではないでしょうか。
アメリカ人と同席したり、ツアーで一緒になったら、できるだけ会話をしましょう。言葉の問題があるかと思いますから、あらかじめ自己紹介から始めて、話題をいくつか用意してくのが良いと思います。
相手の話が分からなくて、こちらの一方的な話になっても構いません。知り合いもでき、旅がいっそう楽しくなるのはまちがいありません。アメリカでは、沈黙は金なりではなくて、よく話すのが金なりと言えるでしょう。
子供と旅するアメリカ
小さな子どもを連れて旅行する時には、アメリカでもチャイルドシートの着用が義務づけられています。この義務はアメリカどこでもかなり厳しく、万が一子どもをチャイルドシートに座らせていないのを見つかると、パトカーに必ず駐車を命じられ、違反を取られます。
パトカーに見つからなくても、アメリカ人からはかなり批判の目で見られます。これは、アメリカでは親が子どもを守る義務がある と信じられているからです。チャイルドシートはスーパーマーケットで安く手に入ります。
また、アメリカでは子どもだけ残して、親が外出することは厳しく禁じられています。子どもを寝かしつけてから親が外出したのが分かると、警察沙汰になります。下手をすると留置所行きです。くれぐれも気をつけてください。
アメリカでは幼児の誘拐事件が多発しています。旅行中や大都会でうっかり親が目を離したすきに、子どもがいなくならないとも限りません。
実際には日本人の子どもが誘拐された話は聞いたことはありませんでしたが、アメリカの生活では子どもから目を離さない注意が絶対に必要です。人混みの中で小さな子どもの手を離して、一人で走り回らせるなどは絶対にしないことです。親と子どもの手首を結ぶビニールバンドが売られているくらいですから。
ファミリーレストランであっても子どもがぐずったり、泣き出したりしたら、必ず子どもを外に連れて行きましょう。レストランでなくても人が集まるところで子どもが泣き出したりしたら、連れ出すのがアメリカの大切なルールです。
よちよち歩きの子どもを連れて旅行するときには、うば車(ストローラー)か背負うためのキャリアーを用意するのが便利です。アメリカの公園は広大で、歩く距離がかなり長くなります。
うば車は平坦な道では問題ありませんが、少しでもでこぼこするとたいへん扱いにくくなります。折り畳んで運ぶのも荷物になってたいへんですし、建物の中にはうば車を持って入れないところが多くあります。キャリアーを用意する方が便利でしょう。
アメリカを子ども連れで旅行するときに、宿泊施設(モーテルなど)で親と同じベッドで寝るのも一つの方法ですが、子どもがベッドから落ちたり、親も安眠できなかったりでたいへんです。寝袋を用意しておいて、床に広げて寝かせるのが便利です。
そのときに子どもが寝袋から転がりでないように、旅行カバンなどで寝袋の周りを囲っておくと安心です。夏でも場所によっては夜になると寒く感じます。カゼを引かせないように厚着できるように用意しておくと安心です。寝袋などはスーパーで安く手に入ります。
子ども連れの長距離のドライブは、子どもが疲れないように工夫しておきましょう。寝袋や旅行カバンを後部座席のすきまに詰め込んで、座席とのすきまを埋めるようにすると平坦になり、横になって寝やすくなります。しかし、前に述べたように一定の年齢までの子どもはチャイルドシートが義務づけられており、子どもの人数だけシートを用意しておかなければなりません。
子どもはいたずら好きです。スーパーの買い物用のカートの中に子どもを入れて買い物する風景は日本と同じです。少し目を離したすきに、子どもが勝手に果物を食べ始めてしまいました。でも心配はありません。アメリカではまずとがめる人はいないでしょう。
アメリカのモーテルのほとんどには無料の製氷器が置いてあります。クーラーボックスを用意しておき、出発前に氷と飲み物、果物などを入れて冷やしておくと大変便利です。
子ども連れの旅行では荷物が多くなります。面倒でもモーテルに泊まるときには、荷物を全部車内から室内に移しましょう。車のトランクに荷物を残しておいたのを誰かに見られ、夜の間に車ごと盗まれた話はよくありました。
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