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エンテロウイルス感染症(手足口病、ヘルパンギーナなど)

エンテロウイルスとは

エンテロウイルスは小児期に多彩な病像の感染症を引き起こします。夏期に多く「夏かぜ」の病原といわれますが、夏だけ流行するものではなく年間を通してみられます。毎年流行するウイルスが異なります。

代表的な疾患は急性上気道炎、胃腸炎、ヘルパンギーナ、手足口病、ウイルス性発疹症、無菌性髄膜炎、急性脳脊髄炎、急性灰白髄炎(ポリオ)、心筋炎、出血性結膜炎などです。

病原ウイルスは、コクサッキーA群、コクサッキーB群、エコー、ポリオ、エンテロウイルス、A型肝炎ウイルスです。

臨床的特徴

それぞれのエンテロウイルスが種々の臨床像を呈するので、症状からウイルスを推測することは困難です。手足口病がコクサッキーA16で起こるのではなく、コクサッキーA16感染症の一つの症状として手足口病があります。

また今流行しているエンテロウイルスが何か知っておくと診断の参考になります。たいてい数種類が流行しており、夏だけでなく春から冬にも多く発生しています。

感染の成立

主要な感染経路は糞口感染であり、飛沫感染もあります。咽頭で感染成立の後、消化管で増殖します。この時期は無症状か発熱ていどにすぎません。リンパ節で増殖後ウイルス血症をきたし、標的となる髄膜、心筋などを襲い二相性の病像をとることがあります。

ウイルスは糞便中に長期間排泄されますが、咽頭からは初期の短期間しか検出されません。通常は一過性の経過で、予後は良好です。不顕性感染が多く60~80%に達すると言われます。

疫学

年ごとにいろいろなコクサッキーA、コクサッキーB、エコー、エンテロウイルスの各型が次々と発生し大小の流行を起こします。温帯地方でエンテロウイルスは一年中発生していますが、4月から12月の間に多発します。

髄膜炎が多発する年、手足口病の流行が大きい年、発疹症、口内炎、ヘルパンギーナ、扁桃炎などさまざまなかぜ症候群の多い年などがあります。髄膜炎を伴う手足口病はエンテロ71によります。

a. 急性上気道炎、発熱性疾患

大多数のエンテロウイルス感染症は発熱を主徴とし、倦怠感、筋肉痛、食欲不振などの非特異的な症状を呈するいわゆるかぜ症候群の一つです。胃腸症状はあっても軽度です。扁桃炎を起こして扁桃に膿栓が付着することがあります。高熱が5~7日続くこともあります。肺炎はまれに起こります。

冬インフルエンザやアデノウイルスと同時にエンテロウイルス感染が発生すると、診断はまぎらわしくなります。

b. 発疹性疾患

1)手足口病

病原ウイルスはコクサッキーA16あるいはエンテロ71であり、まれにコクサッキーA4、5、6、8、9、10、B、エコーなどの報告があります。エンテロ71の手足口病は無菌性髄膜炎を起こすことがあります。向神経性の強さはその時の流行株によって異なります。

潜伏期は2~5日、乳幼児に好発しますが、学童、成人も感染します。毎年流行するようになってから罹患年齢が低下してきました。集団保育の場などではすぐに感染しますし、ウイルスは長期間消化管から排泄されるので隔離の意味はなく、登校・登園停止しても流行は阻止できません。患者の症状に応じて休ませるようにすればよいでしょう。

発熱は10~20%で38度程度が多く持続しません。まもなく特徴的な皮疹と口内粘膜疹が出現し、次第に数を増してきます。5~7日で治癒します。

皮疹は手掌、手背、指の間、足底、足背、膝、肘関節部、殿部にみられます。

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手足口病-写真01

手足口病-写真02

手足口病-写真03

手足口病-写真04

平たい楕円形の1~5mm大の赤みを伴う灰白色の水疱が主に手掌、足底、指間にまたその他の部にも出現します。また赤い少し盛り上がった大小の丘疹が多数見られます。皮疹のかゆみはなくおおむね無痛ですが、年長児、成人ではちくちくする、さわると痛いと訴えることもあります。次第に赤みがうすれ、色素沈着を残して水庖内容は吸収され消失します。

粘膜疹は皮疹に先立ってまたは同時に出現します。頬粘膜、舌、口峡部、口蓋部、口唇粘膜など口内すべてに見られます。

手足口病-写真06 

手足口病-写真07

赤みを伴う大小の粘膜疹で、水痘びらん、潰瘍となり、よだれがみられ、痛みのため摂食できないのが一番つらい症状です。

皮疹と粘膜疹のいずれか一方の場合があります。また皮疹の部位も全部そろうものから一部しか出ないものまで様々です。ときに全身に発疹が出現し、いわゆるウイルス性発疹症と区別がつかないものがあります。予後良好ですが無菌性髄膜炎に注意します。

2回目の手足口病は前回と異なったウイルスで起こっている可能性が大です。年によってコクサッキーA16、エンテロ71のいずれかが主な流行ウイルスとなりますが、最近は双方検出される年が多く、同じ年に2回かかることがあります。

治療は対症的であり、皮疹は刺激を避けるようにし、乳児で全く乳を飲めない場合脱水に注意します。薄味のしみない飲料、軟かい食べ物を冷たくして与えます。

2)ヘルパンギーナ

コクサッキーA群でしばしば見られる病像で、B群、エコーによる報告もあります。突然の高熱で発症し3日前後の有熱期間で、乳幼児に春から秋にかけて流行します。

痛みのため摂食できなくなるのが主症状で、年長児はのどが痛いと訴えます。嘔吐・腹痛が一時的に出現することがあります。特徴的な口内疹で診断されます。

ヘルパンギーナ 写真08
(ヘルパンギーナ)

すなわち口峡部にほぼ限局してごく小さな水疱、それが破れた2~5mm位の大きさの小さな潰瘍があり赤みをおびます。咽頭発赤が著明で病変は2、3日間拡大し、痛みが増しますがまもなく治癒します。

へルペス性歯肉口内炎(へルペス初感染)と類似して鑑別しにくい場合がありますが、ヘルパンギーナでは歯肉に少なく痛みも軽度です。

ヘルペス性(歯肉)口内炎-写真09 歯肉の発赤・腫脹
(ヘルペス性歯肉口内炎)

コクサッキーA群の分離された症例で、口峡部にとどまらず、頼粘膜、口唇粘膜、舌、歯肉などに口内疹の出現する例があるため、発疹がなく口腔内病変があれば広くヘルパンギーナと呼ばれます。

治療は対症的であり、乳幼児で高熱と摂食できない場合は脱水への対策を講じます。手足口病と同様にしみない食べ物を与えます。

3)発疹症

いろいろのコクサッキーウイルス、エコーウイルスにより全身性の発疹がみられます。地域でまた全国的に流行します。

エコーウイルス16による発疹症は、風疹、突発性発疹類似の皮疹と2、3日の発熱をきたしときに口内疹がみられます。発疹の性状は多彩で年齢が幼いほど発疹が出やすくなります。赤色の斑状丘疹、風疹様、ときに紫斑、じんま疹様、多形紅斑様などの全身発疹がみられます。かゆみはありません。1、2日でピークに達し次第に退色し数日で消失します。発疹のみられる時期は発熱と同時、下熱後または無熱のこともあります。粘膜疹、下痢、髄膜炎などのエンテロウイルスによるほかの症状を合併することもあります。

c. 急性胃腸炎

エンテロウイルスにより嘔吐、下痢が起こりますが軽度です。軟便数回から水様便が日に数回2~3日程度までで、血便はありません。嘔吐が主な場合は無菌性髄膜炎がないか注意します。腹痛もよくみられ、疝痛様から軽い不快感までみられます。腹痛は発熱を伴う場合に多く起こります。

d. 神経系疾患

1)無菌性髄膜炎

エンテロウイルスは無菌性髄膜炎を起こすことで知られます。かぜ症候群を起こすウイルスの中で嘔吐の頻度が最も高く、気がつかれないうちに治る髄膜炎が多いものと思われます。大流行となる年も髄膜炎の少ない年もあり、エンテロウイルスの特性により、毎年原因ウイルスが異なります。春から秋にかけて多くみられます。予後は一般的には良好です。

2)髄膜脳炎

高熱、意識障害、けいれんなどの症状を示す脳炎が髄膜炎と合併してみられます。長期の神経学的発達をみると予後は良好です。

3)ギラン・バレー症候群

いろいろのコクサッキー、エコーウィルス感染に引き続き、運動麻痺を主症状とするアレルギー性多発神経炎が起こります。

4)ポリオ様麻痺

ポリオウイルスはエンテロウイルスの一つであり、過去において大流行し多くの神経学的後遺症を残しました。

生ワクチンの導入後、劇的にポリオは消滅しましたが、ポリオ野生株がときにわが国でも分離されており、近隣のポリオ常在地から輸入される可能性があるので、ワクチン投与は引き続き重視されています。ポリオワクチンを投与するとワクチンを受けた小児はもとより、かぜ、胃腸炎、全く無症状、innocentな子どもたちからポリオウイルスがたくさん分離されます。まれにポリオワクチン株によるポリオ様麻痺が発症します。

ポリオ以外のエンテロウイルスによるポリオ様麻痺がときに報告されます。発熱、発疹、髄膜炎を伴うことが多いです。エコーウイルス9型でもっとも多くみられます。

5)その他

小脳失調症、末梢神経炎などの報告があります。

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