2反応性関節炎および炎症性腸疾患に伴う関節炎
反応性関節炎とは、関節以外の部位の細菌感染症後に起こる関節炎のことです。関節から菌は検出されません。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)に伴う関節炎は、その名前の通り、炎症性腸疾患をもつ人におこる関節炎です。
それぞれ異なる疾患ですが、1950年代くらいまでは関節リウマチとの区別がはっきりとはついていませんでした。1960年代になり、これらの疾患はリウマトイド因子という検査が陰性であること(関節リウマチでは陽性のことが多い)、仙腸関節炎(臀部にある関節の炎症)を伴いやすいことなど、共通の特徴を持つことから関節リウマチとは別の疾患であると認識され、1970年代に強直性脊椎炎、乾癬性関節炎とともに血清反応陰性脊椎関節症という一つの大きなグループにまとめられました。
さらに現在では、必ずしもリウマトイド因子が陰性でないこともあることから、血清反応陰性脊椎関節症とは呼ばず、脊椎関節炎と呼ばれる大きなグループのなかに分類されました。
1) 反応性関節炎
基本的に症状は軽微です。関節炎、仙腸関節炎、腱付着部炎を呈しますが、関節炎は主として下肢の関節(膝や足関節などの比較的大関節に非対称性に関節炎が生じることが多い)に多く認められますが、1か所~数か所といったごく少数の関節にしか起こりません。仙腸関節炎では腰部~臀部の痛みを自覚します。
腱付着部炎はアキレス腱がかかとの骨に付着する部位あるいは足底腱膜がかかとの骨に付着する部位などに比較的高頻度に起こりやすいです。またその他、尿道炎であれば排尿時痛、結膜炎は結膜充血といった症状がみられることもあります。
一般的にこれらの症状が出現する1~4週間程前に尿路感染症もしくは細菌性の下痢といった細菌感染症を先行して起こしています。この時の細菌の種類によってその後の症状の出現の仕方が若干変わります。反応性関節炎を起こす菌としては、
① 性感染症としてクラミジア・トラコマチス、
② 食中毒としてサルモネラ菌、赤痢菌、エルシニア、カンピロバクター
などが知られています。
このグループの疾患では遺伝素因としてヒト白血球抗原(HLA)のB27遺伝子が発症のリスク因子であることが知られています。HLA-B27遺伝子は、日本人の一般人口での保有率が0.2%と比較的高い頻度でみられます。
1)反応性関節炎、2)炎症性腸疾患に伴う関節炎で生じる痛みの部位
2)炎症性腸疾患に伴う関節炎
炎症性腸疾患とはクローン病と潰瘍性大腸炎のことで、共に下痢や血便を主症状とする疾患です。これらの疾患では5~10%程度(多い報告で20%)の人に腸管以外の症状を伴います。関節炎以外には皮疹(結節性紅斑、壊疽性膿皮症)が有名です。
関節炎は少数関節炎(5関節未満)の場合と多発関節炎の場合とがあります。少数関節炎は膝や足関節に起こりやすく、多発関節炎はそれらに加えて手指関節を含めた上肢の関節に起こりやすいです。関節リウマチと異なり、通常は骨の破壊をきたしません。
参考:
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000734.html
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/page4/snsa.html
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