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町医者の診療メモ:関節痛・筋肉痛と内科の病気 Dr.みやけの20年の経験で培われた一種の「診察のコツ」をまとめます。

A、首筋付近から腰(頸椎から腰椎)にかけて脊柱に沿った痛み

5多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)

多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞というリンパ球が腫瘍化した病気で、単に骨髄腫ということもあります。形質細胞は免疫グロブリン(抗体)という、病原菌から体を守る働きをするタンパク質をつくっています。
正常な形質細胞は骨髄に1%未満の割合でしか存在しませんが、多発性骨髄腫の場合、通常10%以上にまで増え、 異常な免疫グロブリンを産生し(M蛋白と呼ばれ、感染防御の働きをしません)、様々な症状を引き起こします。

年齢の高い方に多い病気で多くの場合60歳以上ですが、30歳代あるいは40歳代の比較的若い方に発病することもあります。また男性の患者数が女性よりも多いとされています。

ふつうは全身の骨髄で病気が発生しますが、ある一部分で"かたまり (腫瘍) "をつくる時があり、その腫瘍は形質細胞腫と呼ばれます。一般的にはゆっくりとした慢性の経過をたどりますが、まれに急激に進行する場合もあります。

多発性骨髄腫では多彩な症状が現れます。最も特徴的なのは骨の破壊による症状です。骨からカルシウムが溶け出すことによって 血液中のカルシウムが高くなると(高カルシウム血症)、口の渇きによる多飲と多尿、吐き気や便秘、ぼんやりする(意識障害)などが現れます。

多発性骨髄腫で生じる痛みの部位
多発性骨髄腫で生じる痛みの部位

骨の破壊が進行すると骨がもろくなり、日常の動作でも骨折(病的骨折)を来すことがあります。骨の破壊は頭蓋骨、脊椎、肋骨、骨盤などに多くみられます。特に胸椎や腰椎などの脊椎では、重力により押しつぶされる骨折(圧迫骨折)が起こりやすく、背部痛や腰痛が生じます。骨粗しょう症・骨折などの骨病変は骨髄腫患者の77%に認められます。

さらに、背骨が強く変形すると、背骨の中を通っている脊髄という神経が圧迫されてしまい、手足のしびれやまひ、排尿や排便の障害などの非常に重篤な症状が起こります。また骨髄腫細胞が骨髄での造血を妨げることにより、倦怠感や息切れ、感染しやすくなる、出血傾向などの症状が現れます。さらにM蛋白は腎臓などの臓器にも悪影響を及ぼすことがあり、腎の機能が低下してしまいます(むくみなどの症状がでます)。

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町医者の診療メモ

町医者の診療メモ:はじめに

(よく見られる症状と診察のポイント)発熱

(よく見られる症状と診察のポイント)頭痛

内科から見た肩こり

めまい:脳からみためまいを中心に

関節痛・筋肉痛と内科の病気

  1. 首筋付近から腰(頸椎から腰椎)にかけて脊柱に沿った痛み
    1. 強直性関節炎
    2. 反応性関節炎および炎症性腸疾患に伴う関節炎
    3. 軸椎歯突起症候群 crowned dens syndrome
    4. SAPHO症候群
    5. 多発性骨髄腫
    6. 骨軟化症
    7. 転移性脊椎腫瘍
    8. 中高年者の腰痛
    9. 化膿性脊椎炎
    10. 石灰沈着性頸長筋腱炎
    11. 脊椎・関節の疾患以外に起こる頚部や胸背部の痛み
  2. おもに肩・肘・手および股・膝・足など大きな関節の痛み
    1. 伝染性紅斑(りんご病)
    2. リウマチ性多発筋痛症
    3. 偽痛風
    4. 成人発症スティル病
    5. IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)
    6. 関節リウマチ
    7. 化膿性関節炎
  3. おもに手首・手指の関節の痛みおよび足首・足指など小さな関節の痛み
    1. 関節リウマチ
    2. 痛風
    3. 反応性関節炎
    4. 乾癬性関節炎
    5. 膠原病
    6. 回帰性リウマチ
    7. ヘバーデン結節
  4. 不定部位に起こる関節痛や筋肉痛
    1. おとなのりんご病
    2. 線維筋痛症、慢性疲労症候群
    3. リウマチ性多発筋痛症、RS3PE症候群
    4. 低カリウム性ミオパチー
    5. 甲状腺ホルモンの異常
    6. パーキンソン病
    7. 副腎皮質機能低下症
    8. 骨軟化症
    9. 流行性筋痛症(ボルンホルム病)
    10. 各種の膠原病
    11. その他

血液検査からみた診断へのアプローチ

急な胸の痛み(胸痛発作)

いろいろある鎮痛薬

胸部レントゲン写真から考える肺疾患


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