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町医者の診療メモ:関節痛・筋肉痛と内科の病気 Dr.みやけの20年の経験で培われた一種の「診察のコツ」をまとめます。

D.不定部位に起こる関節痛や筋肉痛

8骨軟化症

Dr.みやけ

骨軟化症の原因は、以前はビタミンDの不足が主でした。

ビタミンD欠乏の原因としては魚・乳製品の摂取不足および日光暴露を避ける生活習慣などが考えられます。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の悪化を心配するあまり、極端な食生活習慣に陥らないように注意すべきです。

現在ではビタミンD抵抗性くる病の成人型が主流になっています。これは、腎尿細管のリンの再吸収にあたって、障害が出てしまうことが原因とされています。 他にも、骨や軟骨の腫瘍や、がんなども原因になることがあります。血液検査では骨型ALP上昇、低カルシウム血症、低リン血症などから本症を疑います。

骨軟化症は、発症当初では自覚症状はほとんどありません。しかし、病気が進行すると体の様々なところで慢性的な痛みが発生してきます。姿勢を維持するために負担がかかる部位、とくに腰背部、股関節・膝関節・足の痛みや、骨が出ている骨盤・大腿骨・下腿骨などの圧迫痛がみられます。
進行すると、下肢や臀筋(おしり)の筋力低下による歩行障害(あひる歩行)、脊椎骨折により脊柱の変形(後わんや側わん)などが現れます。
症状が悪化すると、慢性的に痛む箇所は増えると同時に痛みが増し、骨自体が柔らかくなっていくので、骨が変形してしまい日常生活を送ることが困難となる場合があります。

9流行性筋痛症(ボルンホルム病)  

Dr.みやけ

流行性筋痛症はボルンホルム病とも呼ばれますが、バルト海のデンマーク領ボルンホルム島での流行から命名されました。

4日程度の潜伏期後、突然の発熱や咽頭痛で発症し、同時に筋肉痛が出現します。痛みは胸部や上腹部にみられることが多く、その強さの程度はいろいろです。胸痛が強く泣き叫ぶもの、痛みのために呼吸抑制をきたすもの、胸痛を訴えるだけで比較的平気なものなどさまざまです。呼吸運動や咳で痛みが増強することもあります。
痛みは頸部や手足に広がることもあります。痛みの症状から肺炎や心疾患を疑われたり、腹膜炎などの腸疾患と間違われやすいですが、ふつうは数日で軽快します。

原因ウィルスとしてはコクサッキーウィルスB型によることが多く、その他、コクサッキーウィルスA型やエコーウィルスの報告もあります。年齢としては小児にも成人にも起こりますが、30歳以下の若い人にみられることが多いです。

パレコウィルス3型による筋痛症の特徴としては、感冒様症状に加えて発症する筋肉の痛みが、胸部や上腹部でなくむしろ上腕や大腿に多くみられること、30~40歳を中心とした若い成人(特に男性)に多いこと、小児におけるこのウィルスの流行期に一致していること、などです。

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町医者の診療メモ

町医者の診療メモ:はじめに

(よく見られる症状と診察のポイント)発熱

(よく見られる症状と診察のポイント)頭痛

内科から見た肩こり

めまい:脳からみためまいを中心に

関節痛・筋肉痛と内科の病気

  1. 首筋付近から腰(頸椎から腰椎)にかけて脊柱に沿った痛み
    1. 強直性関節炎
    2. 反応性関節炎および炎症性腸疾患に伴う関節炎
    3. 軸椎歯突起症候群 crowned dens syndrome
    4. SAPHO症候群
    5. 多発性骨髄腫
    6. 骨軟化症
    7. 転移性脊椎腫瘍
    8. 中高年者の腰痛
    9. 化膿性脊椎炎
    10. 石灰沈着性頸長筋腱炎
    11. 脊椎・関節の疾患以外に起こる頚部や胸背部の痛み
  2. おもに肩・肘・手および股・膝・足など大きな関節の痛み
    1. 伝染性紅斑(りんご病)
    2. リウマチ性多発筋痛症
    3. 偽痛風
    4. 成人発症スティル病
    5. IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)
    6. 関節リウマチ
    7. 化膿性関節炎
  3. おもに手首・手指の関節の痛みおよび足首・足指など小さな関節の痛み
    1. 関節リウマチ
    2. 痛風
    3. 反応性関節炎
    4. 乾癬性関節炎
    5. 膠原病
    6. 回帰性リウマチ
    7. ヘバーデン結節
  4. 不定部位に起こる関節痛や筋肉痛
    1. おとなのりんご病
    2. 線維筋痛症、慢性疲労症候群
    3. リウマチ性多発筋痛症、RS3PE症候群
    4. 低カリウム性ミオパチー
    5. 甲状腺ホルモンの異常
    6. パーキンソン病
    7. 副腎皮質機能低下症
    8. 骨軟化症
    9. 流行性筋痛症(ボルンホルム病)
    10. 各種の膠原病
    11. その他

血液検査からみた診断へのアプローチ

急な胸の痛み(胸痛発作)

いろいろある鎮痛薬

胸部レントゲン写真から考える肺疾患


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