上下肢の特定の関節に限らず、広い範囲の関節や筋肉に痛みを生じることがあります。内科診療所の外来では、これらの疾患が原因で起こる関節痛や筋肉痛の中で、とくに1から4の疾患はしばしば遭遇します。
2線維筋痛症、慢性疲労症候群
これらは比較的新しい病気ですが、当初考えられていたよりも頻度が多く、より一般的な病気として考えられるようになりました。
これらの病気が疑われても、専門病院が少ないことや患者さんは倦怠感が強いため病院を受診するのも大変な苦労を伴うなど、依然として多くの問題を抱えています。
線維筋痛症
線維筋痛症は一般人口の1~2%にみられる比較的頻度の高い病気です。筋肉や骨格の慢性的な痛みを訴える人は一般人口の約35%にみられるとされ、この中で広範囲な慢性的な痛みは約10%に及ぶと言われています。このような慢性疼痛を訴える人の中に線維筋痛症が含まれることになります。
線維筋痛症とは全身の広範囲な部位の筋肉に長期間の痛みとこわばりを自覚し、特徴的な部位に圧痛を認める以外には、診察上も臨床検査所見でも異常がみられません。治療で良くなることは少ないため、疲労感や睡眠障害、うつ症状などの精神症状を伴いやすくなります。中年以降の女性によくみられますが、小児期にもあり不登校の原因になることが指摘されています。
線維筋痛症は全身の至る所に痛みが生じる原因不明の病気です。痛みはこわばりをしばしば伴い、朝に強くなるなど関節リウマチの症状に似ています。日によりまた一日の時間により痛みに差が出てきます。また激しい運動や睡眠不足、精神的ストレス、天候などにより悪化することが多くみられます。痛みを感じやすい13ヶ所のうち11ヶ所以上に圧痛があると線維筋痛症と診断されます。
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慢性疲労症候群
慢性疲労症候群とは、
(1)原因不明の強い全身倦怠感、
(2)微熱、リンパ節腫脹、頭痛、脱力感や、
(3)思考力の障害,抑うつ等の精神神経症状などが起こり、
(4)この状態が長期にわたって続くため、満足な社会生活が送れなくなる という病態です。
厚生省(現厚生労働省)の疲労研究班が行った調査によると、1000人に3人がこの病気に罹患(りかん)していることが分かりました。さらに最近では、不登校の子供の中に、慢性疲労症候群とみられる症状の子供がいることも分かっています。
慢性疲労症候群の診断は、通常の診察や検査では明らかな原因の見出せない著しい疲労感(少なくとも月に数日は疲労のため仕事を休まざるを得ない程度以上の疲労感)が、6か月以上持続し、次のような症状の多くがみられます。
- 徴熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒
- 咽頭痛
- 頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張
- 原因不明の筋力低下
- 筋肉痛ないし不快感
- 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感
- 頭痛
- 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛
- 精神神経症状(いずれか1つ以上)
光過敏、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、混乱、思考力低下、集中力低下 - 睡眠障害(過眠、不眠)
- 発症時、主たる症状が数時間から数日の間に出現
慢性疲労症候群では一般的な臨床検査では異常がみられませんが、免疫異常や種々のホルモンバランス異常、脳における神経伝達物質の代謝異常などがみつかっています。
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