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予防接種Q and A

〈海外旅行者のための予防接種の知識 4〉狂犬病

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Q1:狂犬病について教えてください。

Dr.みやけ

A1:狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染している動物に咬まれたりすることで感染し、発病した場合には、ほぼ100%死亡するという予後が極めて不良な疾患です。

感染から発症までの潜伏期間は咬まれた部位などによってさまざまで、まれに年余を経て発症することがありますが、多くは1~2カ月です。

発病すると感冒症状に加え、咬まれた場所の知覚異常、強い不安感、神経過敏症状(光や音・振動などに対する異常な反応や見当識障害、幻覚など)、恐水症状、恐風症状を示し、その後全身麻痺から昏睡状態となり、呼吸不全で死亡します。発病から死亡までは2~6日といわれています。

わが国では昭和25(1950)年の狂犬病予防法制定以降患者数は激減し、昭和31(1956)年のヒトとイヌ、昭和32(1957)年のネコを最後に狂犬病の発生はなくなりました。
その後は、昭和45(1970)年にネパールから帰国して国内で発症した輸入例が1名報告されているのみでした。
平成18(2006)年11月に、36年ぶりに2名の狂犬病患者が国内で発生し、相次いで死亡しました。2名ともフィリピン滞在中にイヌに咬まれた後、現地で曝露後予防を受けていませんでした。
それ以降、平成23(2011)年7月までに国内での報告はありません。

一方、世界的にみると、いまだ多くの国(特に東南アジア、中南米、アフリカなど)でヒトの狂犬病の発生が見られており、平成16(2004)年のWHOの報告によると、世界での年間死亡者数の推計は55,000人(うちアジア地域31,000人、アフリカ地域24,000人)、曝露後予防を受けている人口は年間1,000万人とされています。

狂犬病の発生がない国は、わが国を含めて少なく、厚生労働大臣が指定する狂犬病清浄地域は、ノルウェー、スウェーデン、アイスランド、英国、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、グアム、ハワイ諸島、フィジー諸島となっています。

平成23(2011)年の厚生労働省健康局結核感染症課によると、平成20(2008)年11月に、それまで狂犬病の発生がないとされていたインドネシアのバリ島で犬に狂犬病が発生し、発病した犬にかまれた住民が狂犬病で死亡しており、バリ島での狂犬病流行は継続していること、平成23(2011)年7月現在も死亡者が確認されていることから注意喚起がなされています。

狂犬病のウイルスはイヌ、ネコのほかコウモリ、アライグマなどにも多く、これらの動物に咬まれたり、引っ掻かれたりした場合に感染します。
平成22(2010)年2月のニューヨーク市保健精神衛生局の発表によると、米国ニューヨークのセントラルパークでアライグマの狂犬病が確認されており、狂犬病ワクチンをアライグマに接種することで、他の野生動物に広がって人が感染するリスクを減らそうとしているようです。このような国へ渡航する際には、その国での生活様式などを考慮し、予防接種の適応を決定します。

主な狂犬病危険動物

アジア イヌ、ネコ
アフリカ イヌ、ネコ、ジャッカル
ヨーロッパ キツネ、ネコ
米国、カナダ コウモリ、アライグマ、スカンク、キツネ、ネコ
中南米 イヌ、コウモリ、コヨーテ

Q2:狂犬病ワクチンについて教えてください。

Dr.みやけ

A2:ヒトの組織培養不活化狂犬病ワクチンは動物用の狂犬病ワクチンとは異なります。

このワクチンは、狂犬病常在地域への渡航前の予防的接種(曝露前免疫)の他に、狂犬病ウイルスを保有する動物に咬まれた後の発症予防(曝露後免疫)にも使用できます。

予防接種スケジュールは次の通りです

予防的接種
(曝露前免疫)
添付の溶剤(日本薬局方注射用水)の全量で溶解し、1回量を1mLとして、4週間間隔で2回皮下に接種し、さらに6~12カ月後に3回目を皮下に接種します。
海外旅行などで時間的余裕のないときは、2回だけでも接種しておいてください。(WHO方式は、0、7、28日の3回、1回量を1mLとして接種する方法です。)
受傷後の発症防止
(曝露後免疫)
狂犬病発症動物(イヌが多い)や、その疑いのある危険動物に咬まれたり、唾液に接触した場合に行います。
1回量を1mLとして、その初回接種日を0日として、以降、3、7、14、30および90日の計6回皮下に接種します。

狂犬病ワクチンの副反応は次の通りです

全身症状:一過性ですが、まれに発熱を認めることがあります。
局所症状:一過性ですが、発赤、腫脹、疼痛などを認めることがあります。
その他にゼラチンアレルギーの報告があります。

Q3:狂犬病に感染疑いのある動物に曝露後のワクチン接種の適応と処置について教えてください。

Dr.みやけ

A3:傷を受けたらただちに、傷口を石けんと流水で十分洗い、エタノールなどで消毒してください。

次に迅速に(24時間以内に)、狂犬病ワクチンを接種し、咬傷部位に抗狂犬病ウイルス免疫グロプリン(RIG)の接種を行います(*)
さらに咬まれた時の動物の状態、傷の場所、傷の程度によって、処置が異なりますので、可能な限り動物を捕獲して観察し、WHOが定めた基準(参照Q2)を参考にワクチン接種を行ってください。

*わが国では、狂犬病ガンマグロプリン(RIG)の製造も輸入も行っていないので、入手困難です。

Q4:イヌに咬まれました。狂犬病ウイルスに感染しますか?

Dr.みやけ

A4:わが国では、ヒトは昭和31(1956)年を最後に発生がありません。また、動物では昭和32(1957)年を最後に発生がありません。

現在、わが国は狂犬病の発生がない国です。なお、輸入感染事例としては、狂犬病流行国でイヌに咬まれ帰国後発症した事例が、昭和45(1970)年に1例、平成18(2006)年に2例あります。国内の場合、狂犬病は発生していないので国内での感染の心配はありません。

海外、特に東南アジアなどの流行国で狂犬病が疑われるイヌ、ネコおよび野生動物に咬まれたりした場合、まず傷口を石けんと水でよく洗い流し、70%エタノールまたは、ポピドンヨード液で消毒をし、医療機関を受診してください。
また、破傷風の危険もありますので、予防接種歴に応じた破傷風トキソイドの接種も考慮します。狂犬病はいったん発症すれば効果的な治療法はありません。このためできるだけ早期に、狂犬病のワクチン接種を開始する必要があります。

なお、わが国では、狂犬病予防法に基づき、91日齢以上の犬の所有者は、その犬を所有してから30日以内に居住している市区町村への飼い犬の登録と毎年の狂犬病ワクチンの接種(4~6月)、犬の鑑札と注射済票の飼い犬への装着が義務付けられています。
引っ越しした場合などには市区町村窓口ヘの届出が必要です。ペットとして飼っているイヌへの狂犬病の予防注射は必ず行ってください。イヌのためにも、ヒトのためにも重要です。

狂犬病またはその疑いのある飼育動物や野生動物との接触、または観察不可能な動物との接触の状況と処置方法(WHOが定めた基準)

  • 触れたり餌を与えた、または傷のない皮膚をなめられた:
    処置必要なし
  • 直接皮膚をかじられた、出血を伴わない引っ掻き傷やすり傷ができた、または傷のある皮膚をなめられた:
    ただちにワクチン接種を開始するが、10日間動物が健康であるか、剖検して狂犬病が否定された場合は中止する
  • 1カ所以上の咬傷や引っ掻き傷、または粘膜(口や目など)をなめられた:
    ただちに狂犬病ガンマグロブリン(*)とワクチンを開始するが、10日間動物が健康であるか、剖検して狂犬病が否定された場合は中止する

*わが国では、狂犬病ガンマグロプリン(RIG)の製造も輸入も行っていないので、入手困難

Q5:狂犬病ワクチンの予防効果について教えてください。

Dr.みやけ

A5:3回の基礎免疫(4週間間隔で2回、さらに6~12カ月後に3回目)により、高率に免疫を獲得できます。

通常、1年から1年6カ月の予防効果が期待できますが、その後の長期にわたる予防のためには、1年ないし2年に1回の追加接種が望まれます。
また、狂犬病の流行地域に渡航しイヌや野生動物に接触する可能性の高い人で、時間的余裕がない場合は2回だけでも接種しておくことが望まれます。

Q6:狂犬病ワクチンの予防接種を受けています。その後狂犬病危険動物に咬まれても大丈夫ですか?

Dr.みやけ

A6:狂犬病ワクチンの添付文書には、曝露後免疫(Q2参照)を受けた人が6カ月以内に再咬傷を受けた場合は処置の必要はない、6カ月以降再咬傷を受けた場合には初めて咬まれた場合と同様に曝露後免疫を行うとされています。

また、厚生労働省の狂犬病に関するQ&Aでは、次のように示されています。

「曝露前のワクチン接種を行っている場合であっても、イヌなどに咬まれて感染した可能性がある場合には、接種初日(0日)と3日後の2回接種をすることになります」

(参考)
WHOでは、ワクチンを受けた人が再び咬まれた場合の基準を以下のように設けています。
曝露前免疫後:
1年以内:咬まれた日(0日)に1回
2年以内:0日と3日の2回
3年:0日、3日、7日の3回

Q7:狂犬病ワクチンを接種すると、麻痺などの強い副反応があると聞きましたが、大丈夫でしょうか?

Dr.みやけ

A7:従来のワクチンは動物の脳を原料としてウイルスを培養し、ワクチンを製造していたため脳由来の神経組織成分の混入で麻痺や死亡などの強い副反応が発症する場合がありました。

しかし、昭和55(1980)年以降は脳を原料としない組織培養ワクチンが開発されましたので、これらの副反応を回避できるようになりました。現在は一過性の発熱と局所の反応が知られています。そのため咬傷後の発症予防だけでなく予防的にも使用されています。

《参考文献》
2011
(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)

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予防接種Q & A

  1. 予防接種一般
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