- 1.かぜの予防はどのようにしたらよいでしょうか?
- 2.どうして医者はかぜをひきにくいのですか?
- 3.かぜのときに入浴してはいけませんか?
- 4.かぜでどんなときに病院や診療所に行けばよいのですか?
- 5.かぜでつらいのに、どうして病院や診療所では長く待たせるのですか?
- 6.かぜの原因となるウィルスは全部で何種類くらいありますか?
- 7.かぜの原因となるウィルス感染症と細菌感染症はどう違いますか?
- 8.風邪を引きやすい人と引きにくい人とがあるのはどうしてですか?
- 9.かぜの熱はふつうは何日くらいで下がりますか?
- 10.かぜがこじれているかどうか、どのように分かりますか?
- 11.かぜがこじれるのはどうしてですか?
- 12.かぜのときにたばこやアルコールはいけませんか?
- 13.かぜの予防にうがいは効果がありますか?
- 14.かぜの予防にマスクは効果がありますか?
- 15.一度かぜをひくと次々とかぜをひきやすくなるのはどうして?
- 16.扁桃肥大とアデノイドとはどう違いますか?
- 17.かぜのときに入浴はしてもよいですか?
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Q1:かぜの予防はどのようにしたらよいでしょうか?
A1:冬になるとインフルエンザが毎年のように流行してきます。冬だけではなく寒暖の変化の大きい季節の変わり目などもかぜが多くなってきます。
長年、診察室で過ごしているとカゼの流行期の特徴がよく分かってきます。カゼは空気が乾燥する冬や気温の変化が大きい季節に流行しやすい特徴があります。
最近では夏に室内で冷房が寒いくらいきいているため、外気と室内の温度差が極端に大きくなって起こる夏かぜも多いようです。
それではどうして空気の乾燥や気温の変化が鼻やのどに影響を与えるのでしょうか?
鼻やのどの表面の粘膜には線毛という細かい毛がたくさんはえています。この線毛は粘液という水分で潤いながら活発に動いています。かぜのウィルスや細かいごみ、花粉などが進入してくると、線毛と粘液の働きでこれら異物を外に運び出してくれます。
空気が乾燥してくると鼻やのどの表面が乾いてくるために、線毛の動きが悪くなりウィルスが侵入してきても排除しにくくなります。冬に寒くなると空気が乾燥して、かぜが多くなる一つの理由です。
線毛の働きは気温が下がっても悪くなります。のどを冷やすと線毛の動きが悪くなるだけでなく、粘膜の血管が縮んで血流が悪くなります。血流が悪くなると線毛の動きが悪くなるだけでなく、かぜに対する抵抗力が発揮しにくくなることが予想されます。たばこも血流も悪くすることが考えられます。
このような理由により冬や季節の変わり目にかぜが多くなってきますが、冬の極端な暖房は空気の乾燥と外との気温差を強くしてしまいます。また、夏の冷房も注意が必要です。 かぜの予防は簡単ではありませんが、少なくとも夏冬の極端な冷・暖房は控え、冬には室内が乾燥しすぎないように注意しましょう。
また、冬には外出直後に冷たい空気がのどを刺激するために、あらかじめマスクやマフラーを着用しておくのも効果があります。ウィルスはのどに付着するとすみやかに粘膜を通過するため、帰宅時にうがいをするのがどの程度かぜの予防に役立っているか、はなはだ疑問です。
しかしふだんからうがいをしておくのはのどの乾布摩擦と考えられ、のどを強くしてかぜの予防に役立っていると考えられます。
一度かぜをひくと体の抵抗力(白血球の働き)が回復するのに時間がかかります。これははじめのかぜの際に、抵抗力をある程度使い切ってしまうためと推測されます。このためかぜの回復期の数日間は無理をしないようにしましょう。
Q2:どうして医者はかぜをひきにくいのですか?
A2:医師の不養生といわれるくらいですから、特別な予防方法はとっていません。
しかし皆様に比べて、医師はかぜをひきにくいのも事実でしょう。その理由としては、医師は常にいろいろな患者さんに接しているわけですから、少しずつかぜのウィルスをもらいながら抵抗力をつけているのではないかと思われます。
つまり一番最初にかぜをもらって抵抗力をつけているわけです。ある年、春先に急にインフルエンザ(B型)が流行したときがありました。真っ先にインフルエンザにかかり、寝込んでしまいました。
保育所に新任した若い保育士さんは、最初の一年間は驚くほどいろいろなかぜにかかることがあります。小さい子どもはかぜの宝庫ですが、これに対する抵抗力が弱いために次々かぜをもらいやすいためと考えられます。
ベテランの保育士さんになると不思議なくらいかかりにくくなるのは、子どもに長い間接することである程度ウィルスに対して免疫力がつくためでしょう。
Q3:かぜのときに入浴してはいけませんか?
A3:昔から日本では熱のあるときには入浴はしないようにと言い伝えられてきました。しかし欧米では発熱時にはぬるめの湯に入るのが一般的です。
発熱時に入浴を禁じる絶対的な理由は見あたりません。しかしお風呂の水温は40~42度くらいのため、発熱時は入浴後に一時的に体温が上がりやすいこと、湯冷めをするとかぜをこじらせやすいこと、体力を消耗しがちであること、などから敬遠されるものと推測されます。
発熱時には汗をかきやすいもの、入浴をするとさっぱりして気持ちが良くなることもあります。またアトピー性皮膚炎の子どもが長い間入浴をしないでいると、皮膚炎が悪化してきます。熱があっても比較的元気なときには入浴しても差し支えないものと思われます。
ただし、冬に寒い時期は湯冷めをしやすいので注意が必要です。また、入浴後はすぐに床について安静を保ちましょう。
Q4:かぜでどんなときに病院や診療所に行けばよいのですか?
A4:子どもと大人では同じかぜでもずいぶん意味が異なってきます。
小学生くらいになると軽いかぜやちょっとした発熱では自宅で様子をみたり、市販のかぜ薬を飲んで様子をみることが多いと思われます。しかし幼児では鼻水やくしゃみが原因で中耳炎、副鼻腔炎、結膜炎などを起こしやすくなります。
また乳児では鼻がつまると機嫌が悪くなったり、哺乳が悪くなったりします。
またせきもやっかいで、何日も咳き込むうちに喘息のようにゼーゼーと胸が鳴ってくることがあります。マイコプラズマ感染症といって、肺炎を起こしやすいかぜも幼児期には多発します。このように乳幼児ではかぜを引いたときには、医師の診察を受けた方がよいでしょう。
かぜによる発熱の場合、ふつうは2,3日に解熱するのがふつうです。発熱が4,5日たっても下がらないときには、こじれて肺炎などを起こしていないか、またかぜ以外の病気ではないかと疑ってみる必要があります。このような配慮は小児や大人を問わず重要なことです。
本院では、大人の肺炎は驚くほど若い年代に多く見られます。これはかぜだからといって無理をして仕事を続けるうちに、肺炎を起こしてしまったせいと考えられます。また、かぜから感染性心内膜炎を起こし、心臓の手術が必要になった人もまれではありません。かぜは万病のもと 受診のタイミングが遅れると思わぬ恐ろしい目に会います。
*本HPもご覧ください。
家庭での医学-子ども-鼻水、鼻づまり
家庭での医学-子ども-マイコプラズマ肺炎
家庭での医学-子ども-子どもの熱
Q5:かぜでつらいのに、どうして病院や診療所では長く待たせるのですか?
A5:かぜでつらい思いをして診療所に来られて、長い時間待って頂くのは医師にとってもたいへん心苦しく感じられます。
どんなかぜにも流行の時期があり、そのような時期には一度にかぜの患者さんが多数来られることになります。診察時間を短くすると誤診や説明が不十分となってしまいます。ある程度詳しく説明をすると診察に時間がかかり、後の人に長く待って頂く結果になります。
診察をていねいにすること、診察までの待ち時間を短縮すること、これらを両立させることはたいへん困難を伴います。
診察までの待ち時間を短くするには、電話で診察の予約と診察の待ち時間を確認できるようにすること、診察が終わってからできるだけ早く薬をお渡しすること、などの努力が診療所にも必要なことと思われます。
一方、内科ではかぜの患者さんだけではなく、他の病気が原因で来院される方も多くおられます。それらの中には重病な方もおられケースバイケースの慎重な診察が要求され、診察時間も長くかかることになります。
予約診療をしてもなかなか時間通りに進みません。医師の人数を増やせば良いのでしょうが、簡単ではありません。こういった事情をご理解頂ければと思います。
Q6:かぜの原因となるウィルスは全部で何種類くらいありますか?
A6:全部で約200種類あると考えられています。
冬に流行するインフルエンザは代表的なウィルス感染症ですが、A型、B型に分けられますが同じA型でも少しずつ変わってきます(変異株)。多くの冬のかぜや夏かぜと言われるのもは特有のウィルスによって引き起こされます。また、おう吐や下痢を生じる胃腸炎の多くも特有のウィルスにより起こってきます。
小児の間で季節によって流行するウィルス感染症は特徴があります。たとえば夏には、口内炎を伴うかぜが流行し、ヘルパンギーナ、手足口病などと呼ばれます。また高熱と扁桃炎、結膜炎を伴う夏かぜはプール熱(咽頭結膜熱)と呼ばれます。ウィルス性髄膜炎も多くなります。
このように夏かぜは個性的な名前が付けられるほどいろいろなウィルス感染症が流行します。かぜとは異なりますが、小児のウィルス感染症はいろいろな発疹を伴いやすいのも特徴でしょう(はしか、水ぼうそう、風疹など)。
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家庭での医学-子ども
家庭での医学-子ども-子どもの発疹
Q7:かぜの原因となるウィルス感染症と細菌感染症はどう違いますか?
A7:ウィルスと細菌の違いを簡単に述べてみましょう。
ウィルスは非常に小さい生物で、電子顕微鏡を使ってのみ観察することができます。これに対して細菌は何十倍、何百倍も大きく、ふつうの顕微鏡で見ることができます。細菌は自分の力で増えることができますが、ウィルスは他の生物の中に入り込んで宿主の力を借りながら増えていきます。
人間への病気の起こし方を比べてみると、ウィルスは細胞の中に入り込んで中から作用して発熱などを起こすのに対して、細菌は毒素を作ったり、細胞を溶かすなど細胞の外から作用していろいろな症状を起こしてきます。
小児の例にあげると、急性感染症の約90%はウィルス感染症により引き起こされます。代表的なウィルス感染症は、各種かぜの他、はしか、風疹、水ぼうそう、おたふくかぜ など多数存在します。一方、細菌感染症としては、溶連菌感染症、とびひ、細菌性肺炎、急性副鼻腔炎、いろいろな皮膚の化膿症、細菌性腸炎、結核 などがあげられます。
Q8:風邪を引きやすい人と引きにくい人とがあるのはどうしてですか?
A8:保育所にはじめて勤務を始めた若い先生がはじめの1,2年目はよくかぜをひくのに対して、ベテランの先生はあまりかぜをひかないと よく耳にします。
私自身の経験でも、アメリカの留学生活を終えて帰国してからの半年間はよくかぜをひきました。おそらくかぜに接する機会が少ないと、いろいろなかぜに対する抵抗力(かぜに対する抗体)が減少しているためと推測されます。
さてかぜに対する個人差はどうして起こるのでしょうか?
私たちの体にはかぜのウィルスの侵入の際に、体を守るさまざまのメカニズムが働きます。鼻やのどの表面の粘膜には線毛という細い毛がぎっしりとはえており、ふだん活発に動いていてウィルスなどの異物が侵入してくるとその流れに乗せて運び出す働きをしています。
さらにかぜのウィルスが鼻やのどの前線を突破すると、私たちの体は次の作戦で防衛します。これが免疫部隊で白血球の中のリンパ球が中心をなします。リンパ球がしっかりとした攻撃力(免疫力)を発揮してくれれば、ウィルスを排除できます。
空気の乾燥や気温が下がってくると鼻やのどの血流が悪くなり、その結果線毛の動きがにぶってきます。そうするとかぜのウィルスなど異物の排除が困難になります。血流が悪くなるのは直接冷気を吸い込むだけでなく、手足の先が冷えやすいと自律神経反射を介してはなやのどの血管を収縮させてしまいます。ほかにもタバコや急激な運動、イライラなども血流を悪くする原因となります。
さらにリンパ球の数が少ない人やリンパ球の元気さがひくい人はかぜをひきやすくなります。緊張状態やストレスが強いとリンパ球が減少し、リラックスするとリンパ球は増えやすくなります。
つまりイライラやストレスはリンパ球の比率を下げてしまいます。他にも睡眠不足や偏食、激しい運動をするとリンパ球の比率が少なくなってしまいます。激しい運動ではなく散歩などは逆にリンパ球の比率を高めてくれます。
のんびりとした人ほどかぜをひきにくいといわれるゆえんでしょう。
Q9:かぜの熱はふつうは何日くらいで下がりますか?
A9:かぜの種類にもよりますが、3,4日くらいで熱が下がるのがふつうです。
5日以上熱が続くときには、かぜがこじれていないか、かぜ以外の原因で熱が出ていないか考える必要があります。大人と子どもとでは熱の続く原因が異なってきます。せきが多いときには大人でも子どもでも肺炎を疑いながら、胸部レントゲンを撮影する必要があるでしょう。
大人ではかぜがこじれると肺炎だけでなく、感染性心内膜炎や心筋炎なども考慮しなければなりません。EBウィルス感染症では扁桃炎と頚部のリンパ節のはれがみられ、高熱が持続します。またさまざまの感染症や血液疾患、その他の病気(悪性疾患、膠原病など) が考慮され、入院して検査と治療を受ける必要も考えなければなりません。
子どもでは夏かぜやプール熱(咽頭結膜熱)ではこじれていなくても熱が一週間近く続くことがあります。また川崎病や髄膜炎、EVウィルス感染症 なども考えなければいけません。
*くわしくは本HPをご覧ください。
血液検査で分かること-発熱時の検査-発熱時の主な鑑別診断
家庭での医学-子ども-子どもの熱
パズルでわかる子どもの病気-子どもの熱
Q10:かぜがこじれているかどうか、どのように分かりますか?
A10:昔から寒い時期に「かぜ」の頻度が高いので、寒さと「かぜ」の関係が強く考えられてきました。
しかしいくら寒冷地であっても、かぜにはかからないことが示されています。
かぜの90%以上はウィルス感染が原因で起こってきます。かぜの症状を引き起こすウィルスは230種類以上が知られています。かぜには年間を通して感染しますが、冬季に多いのはインフルエンザウィルスを代表として冬に流行するウィルスが、その感染と広がりに寒冷と乾燥という気候条件が適しているからである。一方、夏かぜウィルスは高温、多湿を好み、夏季に流行しやすくなります。
かぜの本態は急性気道感染(鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、気管・気管支炎)で、その90%以上はウィルス感染が原因ですが、いわゆる「こじれる」とはウィルス感染によって気道の防御機能が破綻して起こる二次感染の状態を指しています。インフルエンザ菌と肺炎球菌は二次感染を引き起こしやすい代表的な細菌です。
一般にかぜを引いても3,4日以内に自然に軽快していくことが多いと思われます。しかし、それ以上かぜの症状(鼻水・鼻づまり、せき、咽頭痛、発熱、頭痛など)が持続するときには、細菌による二次感染を起こしてこじれかかっているかもしれません。
このように「こじれている」かどうかは症状から推測する場合と、血液検査や胸部レントゲンなどの検査で異常値を認めて判断される場合があります。血液検査では炎症反応の増加-白血球数の増加やCRP、血沈などの炎症反応の亢進-が手がかりになります。胸部レントゲンではこじれて肺炎を起こしているかどうかが分かります。
*以下の本HPもご覧ください。
血液検査で分かること-発熱時の検査
健康いろいろQ&A-かぜの検査-Q8
Q11:かぜがこじれるのはどうしてですか?
A11:本項のQ10をご覧ください。
健康いろいろQ&A-かぜの検査-Q10
Q12:かぜのときにたばこやアルコールはいけませんか?
A12:かぜの90%以上はウィルスが原因で起こります。
鼻やのど(のど)の粘膜の表面には線毛と呼ばれる細い毛が無数についていて、侵入してきたウィルスを排除使用とする防御機能がついています。寒さや乾燥などは粘膜の血流を悪くする結果、線毛の動きが悪くなってウィルスの侵入を許すことになります。
たばこもニコチンやタールなどの影響により、線毛運動を悪くすることになります。またニコチンは血管を収縮させる作用があり、粘膜の血流を悪くします。かぜを引いたときにはたばこは控えるべきでしょう。
アルコールは逆に血管を拡張させる働きがあります。かぜは鼻やのど(咽頭)の粘膜に炎症を起こします。炎症が起こると鼻水や鼻づまり、のどの痛みなどかぜの症状が起こってきます。アルコールは血管を拡張させる結果、炎症を強くする働きがあります。
健康なときでもアルコールを飲むと、顔が赤くなったり、鼻がつまったり、頭痛を起こしやすいこと人がいます。これらはアルコールやその分解産物による血管拡張作用によるものです。ちょうどかぜを引いたのと同じような症状が起こりやすくなります。
かぜを引いたとき、適量のアルコールはからだを温かくし、気分を楽して睡眠を誘ってくれます。
しかし度を過ぎた飲酒は控えるべきでしょう。
Q13:かぜの予防にうがいは効果がありますか?
A13:かぜを引いてからうがいをしても、かぜの症状の改善にそれほど効果があるとは思えません。
のど(咽頭)の炎症が強いときには、強くうがいをするとかえってのどの炎症を強くする可能性も考えられます。むしろのどを湿らす目的や水分の補給のため、水を飲んだり、あめ玉をなめたりする方が効果的と思われます。
うがいはかぜの予防目的で、ふだんからするべきでしょう。うがいはのどの乾布摩擦と考えられます。のどの抵抗力が弱くなりやすい冬には、ふだんからうがいをしてのどをきたえておくとかぜの予防に効果的です。
ウィルスがのどの粘膜に付着すると早いと十数秒でのどの粘膜を通過して細胞の中に侵入してしまいます。うがいをしてもとても間に合いません。しかし外から帰宅してきたときにはいろいろな細かいほこりや異物がのどに付着していると思われるため、うがいをすることによってこうしたゴミを洗い流す効果が期待できます。
うがいをするときに、冷たい水、温湯、塩水、お茶、消毒液を薄めた水などさまざまな方法があります。それほど大きな差があるとは思えません。しかし寒い冬に冷たい水でうがいをすると、粘膜の細い血管が収縮しやすくなるため、温湯や薄い塩水を使う方がのどにはやさしくなるでしょう。
Q14:かぜの予防にマスクは効果がありますか?
A14:かぜの原因となるウィルスはたいへん小さいので簡単にマスクを通過してしまいます。
しかしかぜの症状を引き起こすウィルス量は閾値のようなものがあるのではないかと推測されます。体調にもよりますが、ある程度以上のウィルスの量が鼻やのど(咽頭)に侵入しないと、かぜの症状は起こりにくいと思われます。
最近のマスクの中にはウィルスや花粉などの異物をキャッチする工夫がなされているものがあり、このようなマスクではウィルスをある程度除去することができ、その結果かぜの予防に役立っていると思われます。マスクは汚れやすいので、使い捨ての安いマスクで抗ウィルス用のマスクをはさんで使うと便利です。
かぜのウィルスの感染の方法には飛沫感染と空気感染があります。飛沫感染はくしゃみやせきとともにウィルスが飛沫して感染を起こします。空気感染とはかぜのウィルスが空気中に浮遊していてそれを吸い込むことでかぜにかかります。
その他にもドアーやつり革などから手を介して、かぜのウィルスが口に入ってくることもあります。飛沫感染や空気感染の予防にはマスクがある程度効果があると思われます。手から口に入ることもありますので、戸外から帰宅したときには手洗いを行いましょう。
マスクの効果にも他にもあります。冬にかぜが多くなるのは、冷気と空気の乾燥のせいで、感染防御機能が低下してしまうためです。冷気や乾燥は鼻やのど(咽頭)の線毛の動きを低下させたり、血流を悪くします。マスクをつけることにより、鼻やのどの保温効果や保湿効果が期待でき、鼻やのどを守る働きがあると思われます。
これらの理由から、マスクは冬場にはかぜのウィルスからからだを守る働きが期待できるでしょう。
Q15:一度かぜをひくと次々とかぜをひきやすくなるのはどうして?
A15:私たちのからだにはかぜの原因となるウィルスに対して、いくつかの防御機能が働きます。
はなやのど(咽頭)の表面には線毛という細かい毛が無数にはえています。この線毛はウィルスなどの異物が粘膜に付着すると、ベルトコンベヤーのように異物を排除するように働きます。寒さや空気の乾燥はこのベルトコンベヤーの働きを低下させ、ウィルスの侵入を許してしまいます。
鼻やのどの前線を突破したウィルスに対し、私たちのからだは次の作戦-免疫機能-で防衛します。その中心になるのは血液の中で防衛戦に備えている白血球、とくにリンパ球といわれるものです。これに対して細菌の侵入には白血球の中でも顆粒球が動員され、細菌の退治に活躍します。
一度かぜをひくと、炎症のために鼻やのどの表面の線毛の働きが悪くなってしまい、回復に時間がかかります。この間はかぜのウィルスが鼻やのどに入ってきても排除することが困難になります。さらにウィルスの侵入に対してリンパ球がたくさん動員され、ウィルスとの戦いに活躍します。
しかし戦いの結果、かぜの治りかけには一時的にリンパ球が減少してしまいます。こじれかかると細菌との戦いのために、顆粒球が一時的に増えてきて、リンパ球の割合が減ってきます。
こうして白血球の中のリンパ球の割合が減ってくると、次から次にかぜのウィルスの侵入を許してしまうことになります。一度かぜをひくとかぜが治っても、ウィルスの排除のための線毛の働きや免疫機能の回復には時間がかかります。この間はかぜをひきやすくなり、結果的に次から次にかぜをひくことになります。
Q16:扁桃肥大とアデノイドとはどう違いますか?
A16:扁桃肥大という場合、一般には口を開けて左右に見える口蓋扁桃の肥大を指します。
扁桃には咽頭扁桃も存在します。咽頭扁桃はのどと鼻との境部分にあるため、口を開けても見ることはできません。アデノイドとは肥大した咽頭扁桃と、そのために引き起こされるさまざまの症状を指します。
アデノイドが原因となる症状は、肥大によって起こる鼻やのどの奥の閉塞によって起こる症状と感染や炎症による症状があります。症状としては、睡眠中の激しいいびきと無呼吸発作が起こりやすく、このため睡眠が浅く、目覚めたり、突然起き出したり、叫び声を出したり、夜尿症の原因にもなります。鼻づまりを起こしやすくなり、口で呼吸をするようになり注意力の散漫や頭痛、記憶力の減退を起こしやすくなります。また、アデノイド顔ぼうといわれる精気のない無気力な表情になることもあります。
咽頭扁桃は生後まもなくから肥大し、4~5歳ころに最大に達し、思春期以後は小さくなります。アデノイドによる症状が著しいときにはアデノイド切除を行います。
本HPもご覧ください。
家庭での医学-子ども-鼻水、鼻づまり
Q17:かぜのときに入浴はしてもよいですか?
A17:昔から日本ではかぜをひいたときには入浴を控えるように言われてきました。
しかし欧米では必ずしもそうではありません。発熱時にはむしろぬるめのお湯につかって熱を下げるようにすることもあります。このようにかぜのときに入浴するかどうかはかなり習慣によることが多いと思われます。
日本で発熱時に入浴を控えるように言い伝えられてきたのは、入浴すると一時的に熱が上がりやすくなること、入浴後に疲労感があること、その昔お風呂が外にあり湯冷めをしやすかったこと などからでしょう。
夏季に子どもが軽いかぜで入浴を控えていると、汗などのため湿疹が出やすくなってきます。また大人でも発熱時には発汗が多くなります。入浴により体を清潔にすると、心地よく感じられます。
高熱で体力を消耗しているときには、入浴はさらに体力を消耗することになり好ましくはありません。しかし発熱があっても比較的元気なときには、入浴は差し支えないと思われます。このときは入浴後にうたた寝をしたり、湯冷めをしないように気をつけましょう。
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