皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「水痘(水ぼうそう)の予防接種」について解説しています。
- 1.水痘について教えて下さい。
- 2.水痘ワクチンについて教えてください。
- 3.予防接種スケジュールについて教えてください。
- 4.ハイリスク患者へのワクチン接種基準について教えてください。
- 5.水痘ワクチンの副反応について教えてください。
- 6.自然感染の水痘の潜伏期間中に水痘ワクチンを接種してしまいました。どうなるでしょうか?
- 7.水痘罹患の記憶がない人への接種は、どうすべきでしょうか?
- 8.水痘ワクチンの予防効果について、教えてください。
- 9.水痘は軽い疾病なのでワクチン接種の必要はないと聞きますが、実際はどうでしょうか?
- 10.水痘ワクチンは医療経済学的にも優れた効果があると聞きました。どのような効果があるのでしょうか?
- 11.家族の一人が水痘にかかってしまい、未罹患の家族からワクチン接種の希望がありました。接種してもよいでしょうか?
- 12.帯状疱疹の患者と接触して水痘になる心配はありますか?
- 13.水痘に自然感染したあと、帯状疱疹になることがありますが、ワクチンの接種で帯状疱疹が出ることがあるでしょうか?
- 14.ガンマグロブリンの投与とワクチン接種の関係はどうでしょうか?
- 15.水痘の皮内抗原について、具体的に教えてください。
- 16.水痘ワクチンで帯状疱疹は予防できるのでしょうか?
- 17.水痘ワクチンは海外でも接種されているのですか?
※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。
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Q1:水痘について教えて下さい。
A1:水痘は「みずぼうそう」ともいわれ、水痘-帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の初感染によってひき起こされる感染症です。
感染カの強い病気で、5歳までに約80%の子どもがかかるといわれています。感染症法に基づく感染症発生動向調査では、水痘は五類感染症定点把握疾患として全国約3,000ヶ所の小児科定点医療機関から毎週患者数が報告されていますが、毎年約25万人の報告数があり、全国ではこの数倍以上の患者が発生していることになります。
健康な小児の場合は、一般に軽症ですみますが、中には遷延化あるいは重症化し、入院が必要となったり死亡することもあります。また成人では小児に比較して、罹患した場合の致死率が高いことがすでに報告されています。
現在のわが国では、麻疹、風疹、水痘、ムンプスのうち、麻疹と風疹は定期接種として実施されているため接種率が高く患者数も少なく抑制されていますが、水痘とムンプスは定期接種ではないため、接種率が20~30%程度と低く、水痘は毎年100万人程度の患者発生があり、4,000人程度が重症化あるいは合併症により入院し、10数名が水痘によって死亡していることがほとんど知られていません。
発疹、発熱を主症状とします。発疹は丘疹、水痘、膿疱、か皮(黒いかさぶた)と移行しますが、すべての段階の発疹が混在していることが特徴です。
一般に水痘の数は症状が出てから数日内に250~500個以上に達します。発熱の程度は通常38℃前後の発熱が2~3日続きますが、40℃を超えることもあり、その際に熱性けいれんを合併することがあります。
合併症としては、まれに肺炎、気管支炎、肝炎、皮膚の細菌感染症、心膜炎、小脳炎、髄膜脳炎、血小板減少性紫斑病などがあります。急性白血病、悪性腫瘍、免疫抑制剤を使用中の患者、細胞性免疫不全患者などが罹患すると重篤になりやすく、異常経過となって死亡することもあります。
免疫不全の患者における水痘は、発疹出現前に激しい腰背部痛で発症し、水痘が出現した時にはすでに播種性血管内凝固症候群などを合併し、数日のうちに死亡するという極めて重症な経過をとる場合がありますので要注意です。
水痘を引っ掻くなどして細菌の二次感染を起こすと瘢痕が残ることがあります。また、妊娠20週までの妊婦が水痘に罹患した場合、そのリスクは低いものの先天性水痘症候群(低出生体重、四肢低形成、皮膚瘢痕、局所的な筋萎縮、脳炎、皮質の萎縮、脈絡網膜炎、小頭症など)の子どもを出産する可能性があります。
妊婦の水痘は重症化するといわれており、出産前3日から出産後2日までに妊婦が発症すると出生児も水痘を発症し、出生児の水痘は非常に重症になるといわれています。
また、皮膚で水痘を形成した水痘-帯状疱疹ウイルスは、水痘が治癒した後、三叉神経節や脊髄後根神経節に長く潜伏感染し、加齢、免疫低下その他の原因により水痘-帯状疱疹ウイルスに対する免疫、特に細胞性免疫が低下した場合、ウイルスが再活性化し帯状疱疹を発症することがあります。
Q2:水痘ワクチンについて教えてください。
A2:水痘ワクチンは高橋理明博士らによって日本にて世界に先駆けて開発されたワクチンで、国内では昭和62(1987)年以降、任意接種のワクチンとして現在までに健康小児を中心として接種されています。
抗体陽転率は90%以上とよく、問題となる副反応は認められていません。もちろんワクチン開発当初の目的であったハイリスク群(急性白血病、悪性固形腫瘍、ネフローゼ症候群、膠原病、気管支喘息など)の水痘予防にも使用でき、疾患ごとに接種基準が定められています。
水痘ワクチンは、弱毒化が確かめられている水痘-帯状疱疹ウイルス(岡株)をヒト二倍体細胞で培養増殖させ、得られたウイルス浮遊液を精製し、安定剤を加え凍結乾燥したものです。
弱毒水痘-帯状疱疹ウイルス岡株は昭和60(1985)年にはWHOにより水痘ワクチン株としてもっとも望ましいワクチン株であると認められており、世界の国々で導入されています。
わが国の水痘ワクチンとは、その組成や、内容が異なっているため、一概に比較はできませんが、米国でも岡(Oka)株ワクチンが小児の定期接種に用いられています。
さらに、米国では、MMRV混合ワクチン(Ⅴ:水痘ワクチン)が開発され、MMRV混合ワクチンまたはMMR+Ⅴの同時接種が小児の定期接種として行われてきましたが、1回目の接種に関してはMMR+Ⅴワクチングループに比べ、MMRV混合ワクチングループにおいて、接種後5~12日日までの発熱および熱性痙攣を発症するリスクが高いことがわかりました。
そこで、平成21(2009)年6月24~26日に開催された米国予防接種諮問委員会(ACIP)でのMMRVワクチンの使用に関する勧告が、平成22(2010)年5月7日に発表されています。
それによると、12ヶ月から15ヶ月児の1回目の麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘ワクチン接種に関してMMRVワクチンまたはMMR+Ⅴワクチンのいずれのワクチンを使用しても良いが、それぞれのリスクと利点について接種者と両親が考慮したうえで行うこと、4~6歳にかけての麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘ワクチン接種に関しては2回目のワクチン接種であることからMMRVワクチンで接種することを推奨することになりました。
Q3:予防接種スケジュールについて教えてください。
A3:接種量は0.5mLを1回皮下に接種します。
接種対象と年齢は生後12ヶ月以上の水痘既往歴のない者が対象です。ハイリスク患者の接種に当たっては十分な注意が必要です。
また、水痘-帯状疱疹ウイルスに対する免疫能が低下した高齢者、ハイリスク患者と密に接触する感受性者(同居者、各患者の医療に関係する者)、水痘に感受性のある成人(特に医療関係者、医学生)、妊娠時の水痘罹患防止として成人女性(非妊娠時に接種)なども接種対象となります。閉鎖集団(病棟や寮など)における感受性者の予防または蔓延の終結ないしは防止にも使用できます。
Q4:ハイリスク患者へのワクチン接種基準について教えてください。
A4:接種時には、下記に記載してある基準に該当していても、接種後2週間以内に治療などにより末梢血リンパ球数の減少あるいは免疫機能の低下が予想される場合は、水痘の発症および播種性の症状を呈するなどワクチンウイルスによる感染症状を増強させる可能性が高いことから、ワクチンの接種を避ける必要があります。
1)急性リンパ性白血病
急性リンパ性白血病患者は高度の免疫不全状態にあることが多く、ワクチンの接種は接種要注意者とされていますが、細胞性免疫能のある一定以上のレベルの存在をあらかじめ確認しておくなど注意して接種すれば、安全に実施できます。この場合の接種基準は次のとおりですので、参考にしてください。
- 完全寛解後少なくとも3カ月以上経過していること。
- リンパ球数が500/mm3以上であること。
- 原則として、遅延型皮膚過敏反応テストである精製ツベルクリン(PPD)、ジニトロクロロベンゼン(DNCB)またはフィトヘモアグルチニン(PHA、5μlg/0.1mL)による皮内反応が陽性に出ること。
- 維持化学療法の6-メルカプトプリン以外の薬剤は、接種前少なくとも1週間は投与を中止し、接種後1週間を経て再開すること。
- 白血病の強化療法あるいは広範な放射線治療などの免疫抑制作用の強い治療を受けている場合には、接種を避けること。
2)悪性固形腫瘍
摘出手術又は化学療法によって、腫瘍の増殖が抑制されている状態の症例には接種できます。この場合は、1)の急性リンパ性白血病に準じます。
3)急性骨髄性白血病
原疾病および治療薬によって一般的に高度の続発性免疫不全状態にあるため、臨床反応が出やすく抗体価の上昇も悪いことから、ワクチンの接種は勧められません。
4)T細胞白血病・悪性リンパ腫
3)の急性骨髄性白血病に準じます。
5)ネフローゼ症候群・重症気管支喘息
ACTH、コルチコステロイドなどが使用されている場合は、原則として症状が安定している症例が接種対象となります。プレドニン投与量が2mg/kg/日以下が原則ですが、薬剤などによる続発性免疫不全が疑われる場合には、細胞性免疫能を遅延型皮膚過敏反応テスト等で確かめた後に接種を行います。
Q5:水痘ワクチンの副反応について教えてください。
A5:昭和61(1986)年から平成4(1992)年までの6年間にわたって、乾燥弱毒性水痘ワクチンを接種した健康小児8,429例についてワクチンの安全性を検討したところ、軽微な発熱・発疹および局所の発赤・腫脹が約7%(580/8.429)に認められました。
その他、まれに接種直後から翌日にかけて、過敏反応(発疹、じんましん、紅斑、そう痒、発熱など)が現れることがあります。重大な副反応としては、まれにアナフィラキシー様症状、急性血小板減少性紫斑病(100万人接種当り1人程度)があります。
ハイリスクの患者に接種した場合、接種後14~30日に発熱を伴った丘疹、水痘性発疹が発現することがありますが、このような臨床反応は通常の接種では急性リンパ性白血病患者の場合、約20%とされています。
接種後のハイリスク患者には帯状疱疹が生じることがありますが、その発生率は自然水痘を発症した非接種患者に比べて同等ないしは低率とされています。
Q6:自然感染の水痘の潜伏期間中に水痘ワクチンを接種してしまいました。どうなるでしょうか?
A6:この場合、ことに重症化することはありませんが、ワクチンの接種が間に合わずに発症してしまった自然感染による水痘の症状と、ワクチンによる一時的に現れる副反応とを取り違えないように注意することが大切です。
また、水痘の潜伏期間は13~17日程度ですから、潜伏期の後半に接種した場合には、ワクチンウイルスによる抗体産生が間に合わず自然水痘の症状を現すことがあります。
反対に、自然水痘の患者と接触後3日(72時間)以内の潜伏期中のワクチン接種である場合には、自然水痘の発病がワクチンで阻止されることが報告されています。
Q7:水痘罹患の記憶がない人への接種は、どうすべきでしょうか?
A7:免疫があるかどうかを知るためには、検査で確かめることができます。
検査の方法は、免疫付着赤血球凝集法(IAHA法)、細胞膜抗原蛍光抗体法(FAMA法)、中和法(NT法)、酵素免疫法(EIA法)などによる抗体価の測定、水痘抗原による皮内テストなどです。
補体結合法(CF法)は感度が低く、このような目的(免疫の有無の確認)に用いてはいけません。ただし、どれも時間と費用がかかりますので、一般的には免疫を確かめることなく、ワクチンを接種しても差し支えありません。それによって副反応が強まるようなことはありません。
Q8:水痘ワクチンの予防効果について、教えてください。
A8:水痘ワクチンの予防効果については、通常90%以上の抗体陽転率が認められていますが、最近80%台という研究結果も報告されています。
また、厚生労働科学研究の平成17(2005)年3月に発表された全国アンケート集計結果では、ワクチン接種者の水痘発症率は19.2%です。ただし、ワクチン接種者に発症した水痘の約90%は発疹50個以内のいわゆる軽症者であったことがこれまでに報告されています。
これらのことから、1回接種のみでは、周りで流行があったり、家族が発症すると、約2割で軽く発症する場合があることを、説明しておく必要があります。
ただし、軽症に終わることがほとんどであることも同時に説明する必要があります。軽症であってもかからないようにしたい場合には、2回接種を行います。米国やドイツでは、2回接種が通常の接種スケジュールになっています。
Q9:水痘は軽い疾病なのでワクチン接種の必要はないと聞きますが、実際はどうでしょうか?
A9:基本的には1週間程度の経過で治癒することがほとんどですが、合併症を併発し、入院加療を必要とする場合があります。
死亡例は水痘ワクチン未接種の場合、罹患者100万人に20人とされており、年齢によって重症化する頻度が異なりますが、米国の報告によると、水痘による入院は水痘患者1,000人当り2~3人、水痘による死亡は患者6万人当り1人とされています。
合併症を起こす頻度は健康小児では少ないものの、0歳および15歳以上では合併症の頻度ならびに致死率が高いとされています。1~14歳で水痘を発症した場合の致死率は水痘患者約10万人に1人ですが、15~19歳では10万人当り2.7人、30~49歳では10万人当り25.2人と報告されています。
発疹が極めて多いものや、まれに肺炎、細菌の二次感染、肝炎、脳炎を起こすこともあります。
ワクチンの接種は水痘の発病や重症化のリスクを下げるだけでなく、水痘にかかることによって、本人が保育所や幼稚園や学校を休む、あるいはそれに伴って母親など保護者が仕事を休むことを防ぐといった意味あいがあります。
また現在ではワクチン接種することで水痘の発病リスクを下げることにより、水痘罹患後の再活性化像である将来の帯状疱疹発症のリスクを下げることにつながるとも考えられています。これらを考えて最終的に接種の必要性を決めることになります。
近年、保育所入所児数が増加しています。自然感染すると登園可能になるまで1週間程度必要であり、保護者も一緒に仕事を休まなければならず、ワクチンにより予防しておくことは本人にとっても保護者にとってもメリットがあると言えます。1歳以上であれば、集団生活に入る前に水痘ワクチンを受けておくことが勧められます。
水痘を子どもの軽い病気とあなどってはいけません。免疫がなければ大人もかかります。優れた抗ウイルス薬が開発された現代の日本の先進医療をもってしても、重症化あるいは死亡の可能性があることを正しく知って、ワクチン接種を受けるかどうかを判断して頂きたいと思います。
現在、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会では、「一刻も早く、わが国も、水痘ワクチンの定期的な接種を推進し、キャッチアップ接種を含めて、生後1歳以降の子ども達から接種する必要があると考える。」というワクチン評価に関する小委員会作業チーム報告書を受けて、定期接種化の検討を行っています。
Q10:水痘ワクチンは医療経済学的にも優れた効果があると聞きました。どのような効果があるのでしょうか?
A10:水痘ワクチンは、定期接種化による医療経済性に優れたワクチンとされています。
予防接種費用や出生数が今後も不変であると仮定した場合、予防接種費用の増分は年間約149.2億円、予防接種費用以外の保健医療費は年間約110.7億円減少し、さらに家族等の生産性損失が年間約400.7億円減少することから、社会の視点では1年あたり約362.3億円の費用低減が期待できると推計されています。
予防接種費1回1万円で2回接種した場合にも、看護による生産性損失を減少させる効果などにより、社会の視点の分析で罹患に係る費用減少額が予防接種に係る費用増加額を大きく上回るとの結果が出されています。
Q11:家族の一人が水痘にかかってしまい、未罹患の家族からワクチン接種の希望がありました。接種してもよいでしょうか?
A11:水痘は麻疹と同様、非常に感染力が強く、家族の一人が罹患すると、水痘に対する抗体を保有していない家族は次々と感染してしまいます。
家族の場合は発症する数日前からすでに感染している可能性があるため、ワクチン接種は間に合わないことの方が多く見られますが、自然水痘の患者と接触後3日(72時間)以内にワクチン接種を行うと、発症を阻止できるとの報告がありますので、接種の希望があればこれらを理解した上で、接種をするのも方法の1つです。
Q12:帯状疱疹の患者と接触して水痘になる心配はありますか?
A12:水痘に対する免疫がない人が帯状疱疹患者と接触すると、水痘を発症する場合があります。
Q13:水痘に自然感染したあと、帯状疱疹になることがありますが、ワクチンの接種で帯状疱疹が出ることがあるでしょうか?
A13:水痘ワクチン接種と帯状疱疹の関連性についてはまれであると考えられます。
米国などではワクチンに含まれるウイルス量が多いことから、ワクチン接種後帯状疱疹が起こったとの報告があります。
急性白血病児の場合、自然感染後の帯状疱疹発生率は約16%で、これに比べてワクチン接種後の場合には約4%です。
Q14:ガンマグロブリンの投与とワクチン接種の関係はどうでしょうか?
A14:ガンマグロブリンには、製品によって水痘-帯状疱疹ウイルスに対する抗体が高単位に含まれています。
ガンマグロブリンの投与を受けた人は、少なくとも3カ月以上は水痘ワクチンの接種を延期しないと十分な効果が得られないことがあります。
また、ガンマグロブリン製剤の大量療法、すなわち川崎病、特発性血小板減少性紫斑病などの治療において200mg/kg以上投与を受けた者は、6カ月以上過ぎるまで接種を避けることが望ましいです。
Q15:水痘の皮内抗原について、具体的に教えてください。
A15:水痘を予防するためには、液性免疫と細胞性免疫の両方が必要とされています。
免疫の測定方法には免疫付着赤血球凝集法(IAHA法)や酵素免疫法(EIA法)などの血清学的検査と水痘-帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫機能を調べるための皮内テストなどがあります。
皮内抗原は水痘抗原による皮内テストに用いる診断用抗原で、弱毒生水痘ウイルス(岡株)をヒト二倍体細胞(MRC-5)で培養増殖させ、その培養液を加熱処理し超遠心などの操作を加え、TCM-199液で希釈した液剤です。水痘の細胞性免疫機能を測定する目的で開発され、市販されています。
皮内テストによる24~48時間後の判定結果は抗体価とよく相関しています。接種方法は、水痘抗原液0.1mLを皮内に注射し、24時間後に判定します。
発赤の直径4mm以下:陰性:(-)、発赤の直径5mmから9mmまで:陽性:(+)、発赤の直径10mm以上:中等度陽性:(++)、発赤の直径10mm以上で硬結に二重発赤を伴うもの:強陽性:(+++)と判定しますが、24時間後に陰性であった場合は、さらに48時間後に判定します。
Q16:水痘ワクチンで帯状疱疹は予防できるのでしょうか?
A16:わが国の水痘ワクチンは、現在のところ帯状疱疹予防の通用はなされていませんが、高齢者に水痘ワクチンを接種すると免疫、特に細胞性免疫が増強されるという研究成果が出ています。
海外でも高齢者に水痘ワクチンを接種すると免疫、特に細胞性免疫が増強されるという研究結果が報告され、米国では、平成10(1998)年から平成16(2004)年にかけて、帯状疱疹の予防や重症化の防止効果に関する大規模臨床試験が行われました。
その結果、高齢者に水痘ワクチンを接種し、帯状疱疹の発症と症状が半分程度になることが明らかにされており、米国ACIPでは、帯状疱疹予防として60歳以上に帯状疱疹ワクチン接種を勧めています。
Q17:水痘ワクチンは海外でも接種されているのですか?
A17:欧米や中南米、アジア、オーストラリアなど海外で広く導入されています。
米国では予防接種諮問委員会(ACIP)より、小児を中心に積極的な接種を呼びかける勧告が出されており、平成18(2006)年には2回接種が勧奨されるようになりました。接種者数は年間約200万人以上といわれています。
また、欧州でも生後12~18カ月の健康小児および13歳未満の水痘感受性者に対する水痘ワクチンの定期接種導入への準備が始まっており、英国では新たな接種対象として、医療従事者などで免疫をもたない者への接種も勧められています。
日本でも、日本環境感染学会から「院内感染対策としてのワクチンガイドライン第1版」が公表されており、医療関係者が発症すると、重症化の可能性のみならず、周りの患者や医療関係者への感染源となることから、免疫を獲得した上で実習・勤務を開始することを原則とすることが推奨されています。
また、未罹患の者にワクチンにより免疫を獲得する場合の接種回数は2回を原則とすることが推奨されています。
《参考文献》
2011(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)
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