皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「ワイル病・秋やみ」について解説しています。
※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。
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Q1:ワイル病について教えてください。
A1:ワイル病の名は、ドイツの医学者アドルフ・ヴァイルにより報告されたことから始まります。
ワイル病(黄だん出血性レプトスピラ症)をはじめ、昔から風土病といわれている秋疫(あきやみ)、用水病、七日熱(なぬかやみ)、作州熱などはレプトスピラ属の細菌の感染によって起こるとされています。
レプトスピラ症は、わが国を始めとして、中南米、東南アジアなどの熱帯、亜熱帯地域でも流行があり、東南アジアでの流行は7-10月に集中し、患者数も多く深刻な被害もでています。
レプトスビラ症は平成15(2003)年11月の感染症法一部改正に伴い、四類感染症に入り、全数報告の疾患となっています。
国内では1970年代前半までは年間50名以上の死亡が報告されていましたが、平成16(2004)年の報告数は18名、平成17(2005)年17名、平成18(2006)年24名、平成19(2007)年35名、平成20(2008)年43名と増加傾向が見受けられましたが、平成21(2009)年16名、平成22(2010)年22名(暫定値)、平成23(2011)年第26週現在5名(暫定値)となっています。近年では環境の整備がよくなり患者数、死亡者数とも激減しています。
また、家畜伝染病予防法の届出伝染病にも指定されており、牛、水牛、しか、豚、いのしし、犬のレプトスピラ症を診断した獣医師は家畜保健衛生所への届け出が必要です。
レプトスピラは世界各地で分離され、29血清群、250以上の血清型に分けられます。本症は、人獣共通の細菌(スピロヘータ)感染症であることから流行の兆しがある場合には、緊急の対策をとる必要がありますが、ヒトからヒトヘの感染はほとんどありません。
ドブネズミ、イヌ、ブタ、ウシ、ヤギなどの保菌動物の腎臓尿細管などでレプトスビラが増殖し、排泄物(尿)に汚染された水や土壌から経皮的に感染また食物による経口感染もあります。病原体は、特に創傷部から容易に侵入し感染します。
レプトスピラ症の流行地域では、不用意に河川や沼地などで水に入らないことが予防に重要であるとされています。台風、地震、津波などの災害を受けた地域ではレプトスピラ症がまん延した例も報告されています。
Q2:ワイル病秋やみ混合ワクチンについて教えてください。
A2:ワイル病、秋やみA、B、Cのレプトスピラ株をそれぞれコルトフ培地で培養し、ホルマリンで不活化し、十分洗浄(遠心・再浮遊)した液をリン酸塩緩衝塩化ナトリウム液で希釈混合した白濁製剤です。
ワクチンは世界各地で流行する病原体を検討して製造されます。わが国のワクチンは4血清型の全菌体ワクチンです。
Q3:予防接種スケジュールについて教えてください。
A3:初回接種は1mLを1週間間隔で2回皮下に接種します。
追加接種は少なくとも5年に1回1mLを皮下に接種します。
Q4:ワイル病秋やみ混合ワクチンの副反応について教えてください。
A4:倦怠感、頭痛、熱感、発熱、筋肉痛、注射部位の発赤、腫脹、硬結、疼痛、かゆみなど、局所反応や発熱を伴う全身症状が5~10%見られますが、通常、2~3日中に消失します。
注射部位の局所症状は2回目接種の方が初回接種より多く認められます。
Q5:ワイル病秋やみ混合ワクチンはあまり聞いたことがありません。どんな人に接種するのでしょうか?
A5:ワイル病・秋やみはネズミ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタの尿といっしょに排出された病原性レプトスピラ属細菌によって引き起こされる感染症です。
皮膚、口から感染します。水田作業や牧畜、ネズミがはい回する調理場などで多く発生します。ヒトからヒトへの感染は極めてまれです。
感染の危険性の高い環境での作業に従事している人は、長靴、ゴム手袋の着用などでは限界がありますので、ワクチン接種が勧められます。
Q6:ワクチンの効果について教えてください。
A6:発症したときの治療には有効な抗菌薬の早期投与がありますが、予防にはワクチン接種がもっともよい方法です。
ただし、ワクチンに含まれているのは4つの血清型のみのため、その他の血清型に対する予防効果は十分にわかっていません。
《参考文献》
2011(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)
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