皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「成人用肺炎球菌ワクチン」について解説しています。
※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。
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Q1:肺炎球菌感染症のワクチンによる予防について教えてください。
A1:肺炎球菌による感染症には肺炎、気管支炎、髄膜炎、中耳炎などがありますが、有効な抗生物質が使用できる現在においてもなお重要な疾患です。
とくに高齢者や慢性呼吸器疾患を有する患者では重篤な肺炎になりやすく、とくに菌血症を伴う場合には急速に重篤な転帰をとることが知られています。また小児の脾臓摘出患者などでは全身感染症を起こす危険性が高く、肺炎球菌に対する予防が必要とされています。
このように肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌感染症にかかる危険性が高く、また重篤になりやすいハイリスク群患者の感染予防を目的として接種されるワクチンです。
Q2:肺炎球菌ワクチンによる副反応はどんなものがありますか?
A2:頭痛が約40%に認められ、注射部の熱感、硬結、腫脹、発赤の発現頻度は4.3~12.3%に認められました。
全身反応では筋肉痛、関節痛、倦怠感が0.6~14.7%に認められました。それらのほとんどが軽度であり、ピークは接種当夜から翌日にかけてで、3~5日後にはほとんど消失します。
Q3:ワクチンを接種すると絶対に肺炎球菌感染症にかからないでしょうか?
A3:肺炎球菌は84種類の血清型に分類されています。
このうち肺炎球菌ワクチンには23種類の血清型が含まれていますが、わが国の調査によれば肺炎球菌感染症患者から分離した株の約80%の血清型がワクチンでカバーされています。
血清型が含まれていない場合、また接種後の抗体価が有効なレベルまで上がっていない場合には感染することが考えられます。
Q4:肺炎球菌ワクチンを接種し、5年以降の再接種は国内でも認められていますが、10年以降の再々接種、さらに15年以降の接種の可否、副反応について教えてください。
A4:当初、本ワクチンを再接種・追加接種してはならないと添付文書に記載されていましたが、2009年10月には初回接種から十分な間隔(5年以上)を確保することで再接種が承認されています。
しかし、10年以降の再々接種、さらに15年以降の接種の可否については、異論のあるところです。
一方、副反応については、複数回数接種において関節痛、易疲労感、頭痛、局所の腫脹、中等度の腕の運動制限が、初回接種より多く認められました。しかし、初回接種および複数回接種後30日間における死亡や重篤な副作用は報告されていません。
現在の知見によれば、6年ごとの(23価)肺炎球菌ワクチン(PPV23)の反復接種によって、これまで懸念されている複数回接種による低応答は認められず、さらにその安全性も容認できると考えられています。
米国や英国では、PPV23の複数回接種の免疫原性、安全性からはその複数回接種は容認できるものの、複数回接種の臨床効果が明確になっていないことから、3回以上の複数回接種を推奨するに至っていないのが現状です。しかし、わが国における平均寿命と肺炎球菌ワクチンの抗体維持期間を考慮すれば、PPV23の複数回接種は必要と考えられます。
一方、現在わが国においても成人用13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV13)の承認申請が準備中ですが、現時点では成人におけるPCV13の役割はいまだ明確ではありません。
《参考文献》
2011(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)
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