皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「インフルエンザ菌b型(Hib、ヒブ)ワクチン」について解説しています。
- 1.インフルエンザ菌b型による感染症について教えてください。
- 2.Hib(ヒブ)ワクチンについて、予防接種スケジュールを含めて教えてください。
- 3.Hib(ヒブ)ワクチンの副反応について教えてください。
- 4.Hib(ヒブ)ワクチンの発症予防効果について教えてください。
- 5.Hib(ヒブ)感染症の患者数は年間600人と少ないように思われますが、予防接種は必要なのでしょうか?
- 6.なぜHib(ヒブ)ワクチンは生後2ヶ月からの接種が可能で、できるだけ早い時期の接種が病気を予防するために必要といわれているのですか?
- 7.初回免疫で十分な発症予防レベルに達した場合、追加接種は必要ありませんか?
- 8.他の小児用ワクチンとの同時接種(同じ日にワクチンを受ける)ことは可能ですか?
※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。
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Q1:インフルエンザ菌b型による感染症について教えてください。
A1:Hib(ヒブ)は、せきやくしゃみなど飛沫を介して鼻咽頭でコロニーを形成し体内に侵入しますが、そのほとんどは無症状保菌者となり症状は起こしません。
しかし、一部では鼻咽頭で増殖したHib(ヒブ)が血液中に入り込み、髄膜炎、敗血症、喉頭蓋炎、肺炎、関節炎、蜂巣炎、骨髄炎など感染症(侵襲性感染症)を起こすことがあります。どのようにして血流中に入るのか詳しいことは分かっていません。
起因菌が判明した細菌性髄膜炎のうち、約25~35%の起因菌がインフルエンザ菌で、年齢分布では0歳後半に多く、そのピークは生後8ヶ月で、6歳以上ではたいへんまれです。Hibによる髄膜炎の発症者数は年間約600人、つまり罹患リスクの高い2ヶ月~5歳までの間に2000人に1人の割合で罹患していると推測されています。
Hib(ヒブ)髄膜炎は予後不良になることが多く、致死率は約5%、てんかん、難聴、発育障害などの後遺症が約25%に残ります。初期症状は発熱、おう吐、けいれんなどで、急性呼吸器感染症や他の病気と症状がよく似ているため早期診断が難しく、また近年、抗菌薬への耐性化が急速に進んでいることなどから、治療が困難となってきています。
Q2:Hib(ヒブ)ワクチンについて、予防接種スケジュールを含めて教えてください。
A2:Hib(ヒブ)ワクチンはインフルエンザ菌b型による感染症、とくに侵襲性の感染症(髄膜炎、敗血症、蜂巣炎、関節炎、喉頭蓋炎、肺炎および骨髄炎など)を予防するワクチンです。
本剤はインフルエンザ菌b型から生成したきょう膜多糖体と破傷風トキソイドを結合した小児用の結合型ワクチンです。
Hib(ヒブ)ワクチンは2ヶ月齢から5歳未満までの乳幼児に接種しますが、ふつうはHib(ヒブ)感染症の発症年齢のピークを考え、2ヶ月齢以上7ヶ月齢未満で接種を開始します。
以下の(1)が標準的な接種スケジュールですが、接種もれ者に対しては、(2)、(3)のように接種回数を減らすことができます。
Q3:Hib(ヒブ)ワクチンの副反応について教えてください。
A3:平成12年から平成14年にかけてわが国で行われた1220の健康乳児を対象とした臨床試験では、局所反応として発赤(44.2%)、腫脹(18.7%)、硬結(17.8%)、疼痛(5.6%)、全身反応として、発熱(2.5%)、不きげん(14.7%)、異常号泣(0.8%)、食欲不振(8.7%)、おう吐(5.6%)、げり(7.9%)、不眠(9.8%)、傾眠(4.1%)などが認められました。
副反応のほとんどは接種後2日後までに発現して、その後3日以内には処置を必要としませんでした。また、複数回の接種においても、副反応の発現率が上昇することはありませんでした。
Q4:Hib(ヒブ)ワクチンの発症予防効果について教えてください。
A4:フィンランドおよび米国で実施された臨床試験では、本剤が2回以上接種された被験者(それぞれ約97000例、5211例)ではHib(ヒブ)全身感染症の発症はみられず、本剤の明確な感染予防効果が示されました。
ワクチン導入眼の米国ではHib(ヒブ)髄膜炎の発症率は5歳未満人口10万人当たり40~60人/年、欧州では8~27人/年でしたが、ワクチン導入後はそれぞれ数%程度にまで低下したことからも、予防効果が確認されました。
わが国の調査でも、わが国と外国において本剤の免疫原性(抗体を誘導する能力)が類似していることが明らかになりました。このことから、わが国においても外国と動揺の感染予防効果が期待できると考えられています。
Q5:Hib(ヒブ)感染症の患者数は年間600人と少ないように思われますが、予防接種は必要なのでしょうか?
A5:患者数は少ないように見えるかもしれませんが、Hib(ヒブ)髄膜炎は適切な抗菌化学療法を行っても予後不良となることが多く、致死率は約5%、てんかん、難聴、発育障害などの後遺症が約25%に残ります。
また、本剤の接種により、小児の場合重症化しやすい肺炎などのHib(ヒブ)感染症も予防できると考えられることや、最近では、抗菌化学療法への耐性化も急速に進んでいることからも、予防接種は意義があると考えられます。
Q6:なぜHib(ヒブ)ワクチンは生後2ヶ月からの接種が可能で、できるだけ早い時期の接種が病気を予防するために必要といわれているのですか?
A6:調査によると、インフルエンザ菌が原因として報告された細菌性髄膜炎患者の年齢分布は0歳が半数と最も多く、0~1歳で70%を占めました。
報告は0歳後半に多く、ピークは生後8ヶ月で、6歳以上ではきわめてまれでした。このことから、できれば、生後6ヶ月までに免疫を獲得しておくことが望ましいと考えられます。
Q7:初回免疫で十分な発症予防レベルに達した場合、追加接種は必要ありませんか?
A7:わが国の臨床試験では、Hib(ヒブ)感染症を長期予防するのに必要な抗体価は、初回免疫後約92.4%がそのレベルに達しました。
さらに、追加接種により100%に達しました。より完全なHib(ヒブ)感染症の発症予防のために、追加接種は必要と考えられます。
Q8:他の小児用ワクチンとの同時接種(同じ日にワクチンを受ける)ことは可能ですか?
A8:普通は生ワクチンの接種を受けた場合は27日以上、また他の不活化ワクチンを受けた場合は6日以上の間隔をおいて本剤を接種しますが、医師が必要と認めた場合には、他のワクチン(生ワクチン、不活化ワクチンの両方)と同時に受けることができます。
その場合には、Hib(ヒブ)ワクチンを接種した腕とは別の腕に他のワクチンを接種します。同時接種は予防接種のための通院回数を減らし、子ども本人や保護者の負担を軽減します。
他のワクチンとの同時接種はDPT(三種混合ワクチン)がもっとも多く、ついてMRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)でした。その他、麻疹、水痘、おたふくかぜ、日本脳炎との同時接種も行われていました。
日本小児科学会では、予防接種の同時接種に対する考え方を、学会HPに掲載しています。
http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_1101182.pdf
その中で、とくに乳幼児期においては、三種混合ワクチン、インフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチン、結合型肺炎球菌ワクチンなどの重要なワクチン接種が複数回必要で、日本の子ども達をこれらのワクチンで予防できる病気から確実に守るためには、必要なワクチンを適切な時期に適切な回数接種することが重要であり、そのためには、日本国内において、同時接種をより一般的な医療行為として行っていく必要がある と述べています。
《参考文献》
2011(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)
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