皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「子宮頸ガンの予防のためのHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチン」について解説しています。
- 1.子宮頸ガンおよびその他のHPV(ヒトパピローマウィルス)に関連した疾患について教えてください。
- 2.HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンについて教えてください。
- 3.HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンがもっとも効果的と考えられる対象は誰でしょうか?
- 4.HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチン接種によってすでに感染しているHPV(ヒトパピローマウィルス)を排除したり、病変を治療することは可能ですか?
- 5.ワクチン接種後も子宮ガン検診を受診する必要はありますか?
- 6.妊娠している人に接種することは可能ですか?
- 7.ワクチンは3回接種ですが、2回目、あるいは3回目の接種を忘れてしまった場合の対処法を教えてください。
- 8.HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの3回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合の対処方法について教えてください。
- 9.HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは授乳中に接種できますか?
- 10.なぜHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは筋肉内接種するのですか?
- 11.HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチン接種後はよくもんだ方がよいですか?
- 12.他のワクチン接種後にHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種する場合、どのくらい間隔をあける必要がありますか?
- 13.2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種後に、4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種しても大丈夫ですか?
- 14.天然ゴム(ラッテクス)にアレルギーがありますが、接種を受けても大丈夫ですか?
- 15.2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの予防接種スケジュールについて教えてください。
- 16.4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの予防接種スケジュールについて教えてください。
- 17.HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの効果は何年持続しますか?
※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。
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Q1:子宮頸ガンおよびその他のHPV(ヒトパピローマウィルス)に関連した疾患について教えてください。
A1:子宮頸ガンは、日本では年間約8500人が発症し約2500人が死亡している疾患で、女性特有のガンの中では、乳ガンについで第2位の発症率となっています。
子宮頸ガンは、若い女性から年齢の高い女性まですべての年代の女性がかかる可能性がありますが、近年20代~30代で急増しているのが特徴です。
子宮頸ガンは、高リスク型(発ガン性)のヒトパピローマウィルス(HPV)が持続感染し、まれにウィルスゲノムがヒトの染色体に組み入れられ、高い増殖能を持って子宮頚部の上皮内で占める割合が増加し始めると、感染から数年~十数年ののちに前ガン病変の状態を経て子宮頸ガンを発症すると考えられています。
HPVの子宮頚部への感染はほとんどが性的接触によるもので、性的接触によって子宮頚部粘膜に微細な傷が生じ、そこからウィルスが侵入して感染が起こると考えられています。
HPV(ヒトパピローマウィルス)に感染すること自体は決して特別なことではなく、性交経験のある女性であれば誰でも感染する可能性があります。
HPV(ヒトパピローマウィルス)の感染はひじょうに一般的ですが、子宮頸ガンの発症に至るのはごくまれです。しかしHPV(ヒトパピローマウィルス)に感染した後にどのような人が子宮頸ガンを発症しやすいかということは分かっていないため、子宮頸ガンを発症する可能性は誰にでもあることになります。
HPV(ヒトパピローマウィルス)に関連した疾患としては、その他に尖圭(せんけい)コンジローマ、外陰上皮内腫瘍、膣上皮内腫瘍などがあります。尖圭(せんけい)コンジローマは、低リスク型(非発ガン性)HPVの感染によって起こる男性・女性の生殖器にできる良性のいぼの一種です。
Q2:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンについて教えてください。
A2:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは、HPV(ヒトパピローマウィルス)のL1タンパク質ウィルス様粒子(VLP)を有効成分とする非感染性のワクチンです。
現在日本で認可されているHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンには2種類あります。
2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは、子宮頸ガンからもっとも多く検出されるHPV16型、18型のVLPを含み、独自のアジュバント(ワクチンの効果を高めるために添加される物質)を使用していることが特徴です。
一方、4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは、HPV16型、18型に加えて、尖圭コンジローマの主要な原因となるHPV6型、11型のVLPを含み、アジュバントとしてアルミニウム塩が使用されています。
いすれのHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンも、ワクチンにより誘導された血清中抗IgG抗体が子宮頚部粘膜などに滲み出し、HPV(ヒトパピローマウィルス)の感染を予防していると考えられます。
ただし、両ワクチンともすでに感染したウィルスを排除したり、子宮頸ガンやその他の病気の進行を抑制したりする働きはありません。つまりウィルスに感染する前の予防感染が重要であることになります。
Q3:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンがもっとも効果的と考えられる対象は誰でしょうか?
A3:HPV(ヒトパピローマウィルス)のおもな感染ルートは性的接触であるため、初交前の年代(多くは10歳から14歳)がもっとも有効と考えられています。
Q4:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチン接種によってすでに感染しているHPV(ヒトパピローマウィルス)を排除したり、病変を治療することは可能ですか?
A4:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンはワクチンに含まれる型のHPV(ヒトパピローマウィルス)感染予防には優れた効果を発揮しますが、すでに感染しているウィルスを排除する働きはありません。
また、前ガン病変(異形成)などの進行を遅らせたり、治癒させる効果もありません。
Q5:ワクチン接種後も子宮ガン検診を受診する必要はありますか?
A5:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンによる予防効果が期待されていますが、すべての発ガン性HPV(ヒトパピローマウィルス)の感染を予防することはできないため、ワクチン接種後も20歳を過ぎたら定期的な子宮頸ガン検診の受診が必要です。
Q6:妊娠している人に接種することは可能ですか?
A6:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの妊婦に対する影響を前向きに評価した臨床試験は実施されていません。
2種類のHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンでそれぞれ、承認前の臨床開発試験中に妊娠が発覚した例が報告されており、これらの症例を追跡調査した結果、正常児、異常児(先天異常、早産、自然流産を含む)に至った妊娠例の割合は、プラセボ群と実薬群で差は認められませんでした。
しかしながら、妊娠中にワクチン接種を奨励するには十分なデータがそろっていないため、妊娠終了までワクチン接種は延期すべきとされています。
Q7:ワクチンは3回接種ですが、2回目、あるいは3回目の接種を忘れてしまった場合の対処法を教えてください。
A7:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは3回接種することにより確実に予防効果が得られるため、ワクチン接種を忘れていることに気がついた時点で接種を再開し、必ず3回接種することが必要です。
なお海外での2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの臨床試験において、2回目の接種を1回目の接種から1~25ヶ月の間に、3回目の接種を1回目の接種から5~25ヶ月の間で接種した場合でも、0、1、6ヶ月の間隔で接種した場合と同等の免疫原性・安全性の効果が得られています。
Q8:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの3回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合の対処方法について教えてください。
A8:妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立していないため、3回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には、いったん接種を中断し、出産後に残りの接種を行うようにしてください。
接種が中断しても、最初から接種しなおす必要はありません。
具体的には、1回目接種後に妊娠が発覚した場合には、出産後に2回目を、さらにその5ヶ月後に3回目を接種します。また2回目接種後に妊娠が発覚した場合には、出産後に3回目を接種します。
Q9:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは授乳中に接種できますか?
A9:授乳中の接種については、日本の添付文書では有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種することとなっており、また安全性のデータがないため推奨できません。
しかし、欧米では授乳中の接種が児に不利益をもたらすことが証明されていないため、授乳中でも接種可能となっています。最終的には、被接種者の個々の感染リスクや希望などを考慮した上で、授乳が終わるまで接種を延期するか、あるいは授乳中に接種するかを医師が判断することになります。
Q10:なぜHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンは筋肉内接種するのですか?
A10:海外におけるワクチン接種は筋肉内接種が主流で、米国CDCにおいてもとくにアジュバント(ワクチンの効果を高めるために添加される物質)を含むワクチンは、皮下または皮内投与では局所刺激、硬結、皮膚変色、肉芽腫形成を引き起こすリスクがあるため、筋肉内接種を推奨しています。
またHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンのようにウィルス様粒子ワクチンを接種する場合、ワクチンの効果を確実にするために直接筋肉に投与します。
Q11:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチン接種後はよくもんだ方がよいですか?
A11:接種後にもむ必要はありません。
以前は皮下注射、筋肉注射の後、もむことが推奨されていましたが、効果に差がないことや局所反応の増加の可能性から、現在では軽く圧迫する程度にとどめてよいとされています。
Q12:他のワクチン接種後にHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種する場合、どのくらい間隔をあける必要がありますか?
A12:生ワクチンの接種を受けた場合は、ふつう27日以上、他の不活化ワクチンの接種を受けた場合は、ふつう6日以上間隔を置いてから、HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種します。
Q13:2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種後に、4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種しても大丈夫ですか?
A13:1回目に2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種した場合には、2回目、3回目も2価ワクチンを接種します。
また1回目、2回目に4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種した場合は、同様に3回目も4価ワクチンを接種します。
接種スケジュールの途中で他のHPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンを接種した場合の予防効果や安全性は確認されていません。
Q14:天然ゴム(ラッテクス)にアレルギーがありますが、接種を受けても大丈夫ですか?
A14:ワクチンを充填してある注射器のキャップおよびプランジャー(押し子)には天然ゴム(ラテックス)が含まれていますので、ラテックス過敏症のある人ではアレルギー反応が現れる可能性があるため充分注意することが必要です。
Q15:2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの予防接種スケジュールについて教えてください。
A15:2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの接種対象は10歳以上で、上限は設定されていませんが、日本産婦人科学会などは11歳~14歳の女児での接種を推奨しています。
また、15歳~45歳の女性が次の接種対象として推奨されています。
接種スケジュールは初回接種後、初回から1ヶ月後、初回接種から6ヶ月後の計3回です。ワクチン接種後に血管迷走神経反射による立ちくらみや失神が現れることがあるので、接種後30分程度は座らせるなど落ち着いた状態にして様子をみます。
Q16:4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの予防接種スケジュールについて教えてください。
A16:4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの接種対象は9歳以上の女性です。
初回接種、初回接種から2ヶ月後、初回接種から6ヶ月後の計3回接種します。
1年以内に3回の接種を完了することが勧められますが、2回目接種や3回目接種が初回接種の2ヶ月後や6ヶ月後にできない場合、2回目接種は初回接種から少なくとも1ヶ月以上、3回目接種は2回目接種から少なくとも3ヶ月以上間隔をおいて実施します。
ワクチン接種後に血管迷走神経反射による立ちくらみや失神が現れることがあるので、接種後30分程度は座らせるなど落ち着いた状態にして様子をみます。
Q17:HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの効果は何年持続しますか?
A17:2価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンでは、現在のところワクチン接種後8.4年まで自然感染の10倍以上の高い抗体価が持続することが確認されています。
この追跡調査は現在も進行中で、今後新たな結果が明らかになってくることでしょう。
4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの効果の持続期間については、現時点では十分なデータが得られていません。北欧地域で実施された追跡データでは、4価HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチン接種群に7年間HPV6、11、16、18型に関連する疾患は見られなかったことが報告されています。
《参考文献》
2011(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)
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